これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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【戦慄】

#2

デイサービス『南山楼(なんざんろう)』南山と言うのが中国のことわざで長寿を意味する所から名付けられた高齢者の憩いの場である。アポ電強盗により殺害された加賀谷のぶ江さんは水曜日と金曜日の週に2度、このデイサービスに通っていた。

殺人犯 “ヨシ” の痕跡を掴む為、ここに日参していた潤は、ある日ベテランヘルパーの永沢(ながさわ)と言う女性から声を掛けられ、庭先で休むとある高齢者の元へ連れて行かれたのである。

その人は火曜日と金曜日に『南山楼』に通う車椅子のお爺さんで、高濱(たかはま)と名乗り、生前の加賀谷のぶ江さんと親しくしていた事を潤に聞かせてくれた。長雨の合間にある、うららかな晴れの日である。

数人の高齢者がのんびりと散歩している施設の庭には爽やかな風が吹き、青紫色の美しい紫陽花を揺らしていた。どうやらこの高濱さんもビートルズが好きで、同じくビートルズ好きの加賀谷さんとは話が弾んだと言う。

「のぶ江さんは明るくて元気な人でしたよ。ここでは未だ小娘だなんて冗談を言ったりしてね。1966年にビートルズが来日した時は武道館まで観に行ったそうです。1980年にジョン・レノンが暴漢により射殺された時はショックで3日も寝込んだんだと、そんな話をしていました。

私もビートルズが好きでしたからのぶ江さんとは良く気が合いました。あの曲がいい、この曲がいいなんてビートルズ談議に花を咲かせてね。金曜日にのぶ江さんとビートルズの話しをするのが私の楽しみだったんです。そんなのぶ江さんがまさか強盗に殺されるなんて……」

高濱さんは時折涙ぐみながら、加賀谷のぶ江さんとの思い出話を訥々と語った。記憶力のいいお爺さんで、年代や日付けなどをかなりはっきりと覚えており、潤も大層興味深く高濱さんの話を聞いた。

「のぶ江さんは10年前まで小料理屋の女将さんをやっていたんですよ。評判のいいお店でね。良く繁盛していたみたいです。その頃に会いたかったねぇ~。なんて私が言うと、 “あの頃はモテてたから競走が大変よ~”   ってケラケラ笑ってました。

そんなにモテてたなら変な男に追いかけ回されたりしたんじゃないの?って聞いたらのぶ江さん、 “それが大丈夫なのよ” って...。何でもお店の常連客に警察関係者の人が多かったから悪い男は寄り付かないんだって、そんな事言ってましたよ。

西麻布にある『のぶ膳』って言うお店です。だからねぇ、余計に私は悔しいんですよ。一番肝心な時に警察の人は何故のぶ江さんを助けてあげられなかったんだろうとね...。今更言った所で詮無いとは思うんですがね…」

高濱さんは記憶を辿る様に少し遠い目をすると、愈々(いよいよ)確信に迫る話を始めた。潤の探偵としての勘が、高濱さんの話は一言一句聴き逃してはならないと本能的に訴えて来る。潤は持参したお茶菓子を高濱さんに差し出して、耳をそば立たせた。

「...あれは先月の13日だったと思います。『のぶ膳』の常連客だった人が今度参院選に出馬するんだとのぶ江さんが話していましてね。 “ちょっと威張った感じのいけ好かない人だっだけど、お世話になったから1票入れた方がいいのかしら?” って、何だか困った様子でしたよ。

ほら、良くあるじゃないですか?選挙活動で地元の有権者に根回しする広報電話みたいな物が…。相手は選挙事務所の小諸だと名乗ったらしいですが、感じのいい声をした若い男だったみたいですよ。

その相手は『のぶ膳』の事も良く知っていて、 “当時はウチの先生がお世話になりました” と、候補者の名前を出して、それは丁寧な口調でお礼を言ってくれたんだとか...。

何でも “お世話になった地元の有権者の皆さんを招いて今度立食パーティーを開催したいので、お手伝いしてくれませんか?” とそんな話を持ち掛けて来たんだそうです。 “ウチの先生がのぶ江さんの作る里芋の煮付けのファンなんで是非ともお願い致します” と...。

“もしお手伝いしてくれるなら選挙スタッフと同じ扱いにして、お礼もちゃんと用意します” とも言っていた様です。その時にのぶ江さんの暮らしぶりだとか、色々と聞かれたみたいですよ。

もし選挙スタッフとして応援に携わる事になった時に、スタッフが私生活に何らかのトラブルみたいな物を抱えていれば、それが足を引っ張る材料にもなりかねないからと言うのが質問の理由だったらしいですが、

のぶ江さんは小料理屋時代の稼ぎを銀行口座とタンス預金に分けて持っているんだと言っていましたから、何だか心配でねぇ。その電話怪しくないのか?大丈夫なのか?と私も案じていたんですが、のぶ江さんは、

“ 詐欺にしては相手の話す内容が具体的で偽物だとはとても思えなかった” と...。確か黒塚磐男さんの選挙事務所ですよ。元々西麻布署の署長をされていた方で、『のぶ膳』の常連客だったそうでしてね、今度参院選に出馬されるんだとか...。

でものぶ江さんが強盗殺人の被害者になって、やっぱりその選挙スタッフからの電話と言うのが怪しかったんじゃないかと私は思っています。どうやって『のぶ膳』の事や黒塚磐男氏の事を調べたのかは分からないですけどね……」

黒塚磐男だと?♭潤は息を飲んで、その思いがけない名前を聞いた。マジで大物が掛かりやがった...♭その小諸と名乗った選挙スタッフは間違い無く “ヨシ” だ...♭

強引に仲間に引き込んだ小諸若希の名前を使って加賀谷さんにアポ電を掛け、彼女の資産状況を聞き込んだのだろう。話が具体的だとすると “ヨシ” は当事者しか知らなかったような話も知っていた事になる。警察の関与が匂った。

「私は西麻布署に行って担当の確か...吉..そう、吉塩牛と言う刑事さんにも同じ話をしましたが、滅多な事を言うもんじゃないと、かえって怒られてしまい、取り合っては貰えませんでした。ですから警察はあてに出来ません。どうか、のぶ江さんの無念を晴らして、犯人を見つけてやって下さい」

高濱さんは潤の手を取り、深々と頭を下げて懇願した。多分この高濱さんは加賀谷のぶ江さんの事が好きだったのだろう。加賀谷さんは身寄りがない独居老人だと聞いていたが、少なくとも彼女を案じ、彼女の死をこれ程までに悲しんでいる人がここに居る。

もし加賀谷のぶ江さんが存命であればこの高濱さんとこれからもビートルズ談議に花を咲かせ、愛のある穏やかな老後を過ごせていたに違いない。そう思うと本当にやるせなかった。「分かりました。必ず犯人を探し出してみせます」そんな潤の力強い声に、高濱さんは瞳を潤ませて何度も「ありがとう」と、繰り返すのだった。

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『南山楼』を後にした潤は、先程高濱さんから聞いた話を早速メールに纏めて二宮のスマホへと送信した。アポ電強盗に始まり、『タイムカプセル』のマスター殺し、どちらも西麻布署管内で起こった事件である。

しかも高濱さんは加賀谷のぶ江さんに掛かって来た選挙事務所のスタッフからの電話の話を、西麻布署の担当刑事に通報していたと言うのだ。もし西麻布署がアポ電強盗の捜査をしていたのならこの高濱さんからの通報は重要な手掛かりとなる筈だった。

にも関わらず取り合って貰えなかったとなると、その担当刑事が故意に高濱さんからの通報を握り潰したと言う事になりはしないか?西麻布署の吉塩牛と言えば二宮がヨシギュウと呼んでいた刑事で、例の中丸さんを犯人だと決めつけ、2度も逮捕した男だと記憶している。

この話を中丸さんの店で聞いた時はまたえらくポンコツな刑事がいたもんだと思った潤だったが、元西麻布署署長である黒塚磐男の名前が出て来たとなると話は別だ。

黒塚磐男と “ヨシ” の間にどんな関係があるのかは未だ分からないが、少なくとも吉塩牛刑事は今回の連続殺人事件に1枚噛んでいる可能性があった。捜査の目を “ヨシ” ではなく中丸に向ける為に...。

恐らくは黒塚磐男からの命令でやった事であろうが、だとすると益々気になるのは黒塚磐男と “ヨシ” の繋がりである。「取り敢えず黒塚磐男の周辺を探ってみるか...♭」潤は愛車の4WDに乗り込むと、『南山楼』の駐車場から滑る様に走り出して行った。

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その頃、智はパラリーガルの小瀧を連れて都内にあるネットカフェに来ていた。実は今朝方智が出勤したのとほぼ同時に櫻井教授が菊池を連れて事務所を訪ねて来たのである。何でも昨夜菊池のスマホに亡くなった小諸若希からメールが届いたと言うのだ。

内容が内容だけに単なるイタメールだとは思えず、相談を受けた櫻井教授がそれなら情報開示請求をした方がいいと、『大野法律事務所』を訪ねたらしい。情報開示請求と言うのはネットの誹謗中傷等に対応する為に、個人情報を特定するシステムで、個人でも請求は可能なのだが、手続きが色々と面倒なのだ。

弁護士が介入すればその面倒な手続きを代行してくれるので、何かと便利なのである。まぁ櫻井教授に関しては単に智に会いたかっただけなのかも知れないが、菊池に送信されたメールを読むと、確かにイタズラメールだとスルーするにはいささか深刻な内容だったので、智は早速情報開示請求の手続きを踏み、このネットカフェを訪れたのだった。

【菊池へ。もしこのメールがお前のスマホに送信されたとすれば、多分俺はもう死んでいるんだと思う。このネットカフェには先に1週間分の料金を払っているから、メールが届いたときはまだ部屋もそのままになっている筈だ。

もし俺の身に何かあった時は渋谷区二丁目の『OnlyTime』と言うネットカフェを訪ねて、俺の部屋を探してくれ。このメールがイタズラでも何でもない、送信時間をあらかじめ設定した俺のガチメールだって分かるだろう。

俺は本当にバカだった。いくら入院していたお袋の為だとは言え、ヨシなんかの口車に乗せられて、あんなアルバイトに手を出した事が間違いの元だった。

今もアクセス出来るかどうかは分からないけど、ここにアドレスを張っておくからこのアドレスの事を警察に通報してくれ。調べれば送信元が分かると思う。
 
それから俺の部屋に『世界遺産』のDVDがあると思うからそれを探して中を見てくれ。俺がこっそりとスマホで撮影したヨシの写真と音声データをCD-ROMにコピーして隠しているからそれも警察に渡して欲しい。

お前の事巻き込んでしまってごめん。ヨシに知られていない俺の友達はお前だけだから、後の事を頼みたいんだ。もし俺が死んだら殺したのはヨシだ。それだけは伝えておきたい。

あのお婆さんにはどんなに謝っても謝り切れないけど、もしヨシが俺の説得に応じてくれて2人で自首できた時は、お婆さんの為に一生かけて償いたいと思ってる。それからラーメン屋の店長とお袋に、ごめんなさい、ありがとうと伝えて欲しい     小諸若希】

ネットカフェ店員の案内によって、小諸若希が身を隠していたと思われる32号室に行った智は、そこが未だ手付かずで残されていた事を確認すると、ホッと安堵の溜め息をついた。捜査に当たったにのあいコンビの話だと、小諸若希は殺害された時スマホを所持していなかったらしい。

恐らく犯人の “ヨシ” が証拠隠滅に持ち去ったのであろうと思われたが、小諸若希はもし “ヨシ” を説得出来なかった時に、スマホを奪われるかも知れない事を想定し、自分のスマホにあった証拠をこのネットカフェのパソコンを使ってCD-ROMにコピーしたのだ。

そして最後に菊池に連絡して “ヨシ” に会う事を伝え、自分のスマホから菊池の電話番号を削除したのである。菊池と言う友人の存在を “ヨシ” から隠す為に...。 名門『陵英光華大学』の学生である菊池なら、きっと自分の思惑に気づいてくれる筈だと信じて……。

智は積み重なったスポーツ新聞の隙間に隠された、『世界遺産』のDVDを発見すると、その中身がCD-ROMだったのを確認して、それを32号室のパソコンへとセットした。そこには音声ファイルが2つと画像ファイルが5枚入っている。

「間違いないね、小瀧君。これは殺害された小諸若希君が残した命懸けの証拠だよ」智の声にパラリーガルの小瀧は「またえらいもん発見してしまいましたね若先生...♭」と、目を丸くするのだった。

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凶悪殺人犯 “ヨシ” に繋がる重要な証言と証拠が出て来ました~Σ(゚д゚lll)探偵潤君、弁護士智君、大活躍でございますグッ✨何かにつけて智君に会いに来る櫻井教授も学生ふぅちゃんと共に何気に良い仕事をしておりますね~ウシシ

そしてポンコツ刑事のヨシギュウはやはり中々の食わせ物でございましたよ~ガーンさぁ小諸若希君が残した証拠には何があるのか、潤君ハピバまであと6日💜次回頑張って間に合わせたいと思いますパーウインク