これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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【戦慄】

#1

~♪ボートが川に浮かんでる。
オレンジの木に、マーマレードの空
君を呼んだらゆっくり答える
万華鏡の少女~♪

~♪黄色や緑のセロファンの花
君の頭上に立つ
太陽の瞳の女の子
彼女はもういない~♪

~♪お空のルーシーはダイヤモンド
お空のルーシーはダイヤモンド
お空のルーシーはダイヤモンド Ah Ah~♪

~♪彼女を追いかけ、噴水の橋
木馬の人々と、マシュマロ・パイ
びっくりする程背高の花
通り抜け、みんなが微笑う~♪

~♪新聞紙のタクシーが現れる
君を乗せていこう
ぼんやりと後部座席に乗ると
君はいなくなった~♪

~♪お空のルーシーはダイヤモンド
お空のルーシーはダイヤモンド
お空のルーシーはダイヤモンド Ah Ah~♪

~♪駅で列車に乗っている僕
鏡のネクタイをした粘土のポーター
回転する改札にいきなり誰か
万華鏡の少女~♪

~♪お空のルーシーはダイヤモンド
お空のルーシーはダイヤモンド
お空のルーシーはダイヤモンド Ah Ah~♪

【★THE BEATLES『Lucy in the sky with diamond』超意訳★】
 

彼が繰り返し口ずさむこの曲に、黒塚磐男(くろずかいわお)は忌々しげに眉を顰めた。がっちりとした固太りの体躯がいかにも昔柔道をやっていた人物のそれだったが、如何せん今ではただの厳つい親父となって、その傲慢さを演出するだけの様相と化してしまっている。

「その歌止めろ。イライラする」片頬を引き攣らせ、口元を歪める苛立ち方は、会見で矢継ぎ早に質問された時の顔と同じだと、彼はさも愉快そうに嘲笑う。それでもこの男には何も出来やしないのだと彼には分かっているからだ。

参院選の為に用意した選挙事務所である。壁中に黒塚の選挙ポスターが貼り付けられてはいるが、未だ準備中なのでスタッフの姿は無かった。

「おや?ビートルズ嫌いですか?あなたの時代の大スターですよ?この歌は俺に取って記念すべき殺人デビュー曲ですからね。婆さん殺した時に流れてたんで最近気に入っているんですよ。お義父さん……」

「何がデビュー曲だ!♭お前など息子だと思った事など1度もないわこの殺人鬼め…!♭」「心外だなぁ~。あなたの部下の失態を俺のせいにしないで下さいよ。やっぱりこの間カラオケスナックのマスター諸共あの居酒屋の店長を殺しといた方が良かったじゃないですか?それなのにあなたが下手な小細工を部下にやらせるから…」

悪びれる様子も無くぬけぬけと言い退ける彼に、黒塚はまるで欠陥品でも見るみたいな眼で憮然と応対した。「当たり前だろう?!♭2人殺すよりも1人の方が傷は浅く済むんだ!♭私は今度出馬する身だぞ。警視総監賞を5つも取得し、数々の手柄を立てて西麻布署の署長を10年も務めあげた。

晴れて勇退し、これからと言う時にアポ電強盗とは何事だ?!♭全く実余子の奴、一体どんな育て方をしたらお前みたいなろくでなしが出来上がるんだか、1度聞いてみたいものだ!♭」

黒塚はかつて愛人だった女の顔を思い浮かべながら眼前の彼を睨みつけた。こんな事になるまで存在すらも知らなかった息子である。堕ろせと言ったのにまさか産んでいるとは思わなかったのだ。

「聞けるものならあの世に行って聞いてみればいいじゃないですか。まぁ、どうせあの世に行った所であの女は別の男を咥えこんでいるでしょうけどね。ですがお義父さん。こちらには鑑定書がありますから、あなたと俺が父子なのは疑いようもないんですよ。

幾ら認知されていないとは言え、あなたと血の繋がった不肖の息子がアポ電強盗で婆さん殺したなんて明るみになったら、ねぇ?勇退も参院選の出馬も水の泡ですから、さっさとケリつけるしかないじゃありませんか。

そうしないとこれからも人が死にますよ。あの安っぽいビニール傘は他にも8人が持っているんです。婆さん以外の常連で分かっているのはあの居酒屋の店長だけ。あなたの間抜けな部下があの店長を犯人にし損ねたせいで、俺は他の目撃者候補も殺さなくちゃならないんですからね」

黒塚の腹立たしさなど何処吹く風か、彼は再び~♪お空のルーシーはダイヤモンド~♪と歌い始める。この若者の存在を知ってから、黒塚は何度殺してやりたいと思ったか分からない。だが、彼を殺せば彼が自分の隠し子だと世間に知られてしまう恐れがあるのだ。

何故彼がアポ電強盗などを思いついたのか黒塚には知る由もないが、いずれまともな理由などある訳がない。どうせ面白半分でやった事がエスカレートしたのであろう。強盗に入った先で犯した殺人を自分のデビューなどと平気で言ってのけるのだからとても正常な精神だとは思えない。

「未だ殺すつもりなのか義哉(よしや)…」「仕方ないじゃありませんか。目撃者は始末しないとあなたが困るんでしょう?これはあなたの為でもあるんですよ?ですから今度こそちゃんと後始末して下さいよお義父さん……」

彼の眼鏡の奥の眼が細められ、黒塚を一層イライラさせる。こんな悪魔みたいな若造の尻拭いを何故してやらなくてはならないのか、まるで死んだ愛人の実余子に復讐でもされている様だと、黒塚は今更ながらに僅かな手切れ金だけであの女をあっさりと捨てた事を後悔するのだった。

**

北品川の『グッドラック探偵社』。すっかり意気消沈するにのあいコンビを、憐れむような眼で見つめながら、潤は大きな溜め息をついた。「で?いきなり捜査打ち切りって明らかに怪しいんだけど?完璧圧力掛かってんじゃねぇか。お前んトコの上司は何も言わねぇのかよ?」

今朝になり西麻布署との合同捜査が解散になったと上司の風間に報告された2人は、そのまま強引に普段の生活安全課の仕事に戻された。勿論納得など出来る訳がない。

最重要容疑者である “ヨシ” の捜査はどうするんだと風間に詰め寄ったにのあいコンビだったが、そもそもの容疑者である中丸の目撃証言などあてにはならないと却下され、西麻布署の『タイムカプセル』マスター、懐深壮亮も、渋谷区内の公園で惨殺された小諸若希も、通り魔の犯行だと言う事で、無理やり結論付けられたのだった。

「結局さ、ゆっちーを犯人に出来なかったんで代わりにビニール傘の共通点を無視して無理くり決着させたっつ~訳よ。風間課長なんて日和見だからね~。上から言われりゃ “ハイそーですか” ってペコペコ赤べこ状態だからお話になんないよ。

こーなっちゃうと生安課なんて無力だよねぇ~。何処からどんな圧力があったのかなんてのは、俺みたいな下っ端のヒラ刑事にゃさっぱりだけどさ、多分相当上の方から命令が下りて来たんじゃね?てことでジェイんトコに来た訳よ」

二宮のそんな口調から潤には大体の事が想像出来た。要するに自分達はあんまり大っぴらに動けないが、民間の探偵なら自由に動けるだろうと、暗に頼んでいるのだ。中丸の釈放に勝手に智を使った事と言い、相葉じゃないが、全くもって姑息な奴である。

そんな潤の気持ちを野生の勘で見抜いたのか、相葉が「ね?ニノちゃんって煮ても焼いても喰えないでしょっ?♪」と自慢げにディスる。二宮が「相葉君はいつもいつも俺を全身全霊で褒めてくれるねぇ~♭」と顔をひきつらせた。本当にいいコンビである。

「だからさ、ジェイには “ヨシ” の探索をして貰いたいんだよ。大野先生も人探しならジェイが1番だって言ってたし、俺らは俺らでちょっと調べたい奴がいるからそっち探ってみようと思ってね。風間課長は上には日和るけど下には厳しいから、あいつの身辺調べる分にゃ文句言わないだろうし」

相葉と顔を見合わせて邪悪な笑顔を浮かべる二宮に嫌な予感しかしない♭潤は一応「探るのは勝手だけどさ、俺とか智を巻き込まねぇでくれよ♭」と、二宮を牽制してから2人に忠告した。

「目端の利くお前らの事だから下手打つ様な真似はしねぇと思うけど、身内探るんなら気をつけた方がいいぜ。そいつからとんだ大物が引っ掛かるかも知れねぇ」

捜査を強引に打ち切らせるだけの権力がある人物だ。アポ電強盗の一件にまで遡れば “ヨシ” はもう3人も殺している。にも関わらず揉み消して貰えるとなると、 “ヨシ” はかなりの大物と繋がっている可能性があった。

もしそうなら到底許せる話ではない。ストーカーに兄の淳平が殺された時、誤認逮捕しておきながら誰も謝罪に訪れなかった警察組織の連中の対応を思い出す。二宮とは幼馴染だが、潤には未だに警察組織に対する不信感が根強く残っているのだ。

だからこそこんな事案に出くわすとつい反骨精神に火がついてしまう。だが昔と違い今の潤には命を掛けてでも守りたい恋人がいる。 “ヨシ” を探すのに異論は無いが、その為にもし智に危険が迫ったりしたらと思うと、流石に慎重にならざるを得ないのだ。

とは言え、どうにかして “ヨシ” を探し当てないと、他にも犠牲者が出る恐れは充分に考えられた。何よりあのアポ電強盗が起こった夜に小諸と “ヨシ” を目撃したのが中丸だと “ヨシ” に知られれば中丸が次の被害者になるかも知れないのである。

「…言っとくけど、探偵料はきっちり回収するからなニノ」人差し指を突きつける潤に、二宮は「それ、友達割引のボーナス払いね」と、済ました顔で言った。

**

その日から潤は “ヨシ” と呼ばれる人物の探索を始めた。手掛かりは中丸が描いた似顔絵と、 “ヨシ” と言う通り名、そしてビートルズの『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド』だ。

先ず潤が目をつけたのはアポ電強盗の被害者、加賀谷のぶ江なる女性だった。身寄りのない資産家の高齢者は他にも大勢存在している筈なのにどうして “ヨシ” に狙われたのが加賀谷のぶ江さんだったのか、恐らく加賀谷さんと “ヨシ” との間には何らかの接点があるに違いないと考えたのである。

そこで潤は、殺害された加賀谷のぶ江さんの日常生活での足取りを追いかける事にした。特に決まった外出先についてはつぶさに聞き込みをし、自分の足で歩いて加賀谷のぶ江さんのライフスタイルを細かく確認して回ったのである。

週に2度通うデイサービス。昔ながらの純喫茶。いつも買い物をするスーパー。そしてカラオケスナック『タイムカプセル』。加賀谷のぶ江さんの私生活は大体この4種類の場所で成り立っていた。

もし加賀谷さんと “ヨシ” が顔見知りになるとしたら恐らくはデイサービスかスーパーだと当たりを付けた潤は、それから毎日の様にスーパーでお菓子や果物を購入し、お土産にデイサービスへと持って行っては根気よく聞き込みをやったのだ。

潤のロックな雰囲気に、誰でも始めは少し胡散臭そうな態度を見せるのだが、親切で人当たりもよく、加えてすこぶる美形の探偵が、亡くなった加賀谷さんの為に豆豆しく話を聞く姿は、スーパーやデイサービスで働く職員達(特に女性)のハートをがっちりと掴み、いつの間にやらあらゆる事を話してくれる様になってしまうのだった。

そして聞き込みを始めてから5日後の事。遂に潤はデイサービスで “ヨシ” の痕跡を突き止める事に成功したのである。

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お山の日記念に続き、今度は潤君お誕生日企画として、『時計じかけのアンブレラ』第3弾が始まりました~グッウインク今回は探偵潤君の活躍をメインに殺人鬼 “ヨシ” の正体に迫ります🧐🔎

黒塚磐男なる大物も登場し、またぞろ大風呂敷を広げ始めるMARKIE💦(大丈夫か?タラー)次の智君お誕生日企画まではかなり間が開きますので、今回の潤君お誕生日企画でそれなりのネタは出しちゃおうと思っておりますグラサン

今回も三部作でお届けしたいと思っておりますが、果たして8月30日までに仕上がるかどうかアセアセ頑張ります💪プンプン―3