これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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【連鎖】

#3

「……あれは先月の今頃だったと思います。『タイムカプセル』からの帰りに歌を聞いたんですよ。何だか不思議な歌でしてねぇ、だけどあのメロディー、どっかで聞いた事あるんですよねぇ~」

中丸は目を閉じて指先でリズムを取り始めた。こうすると思い出し易いらしい。中丸の特技はボイスパーカッションなのだ。よっぽど印象的だったのか、中丸は少しづつ記憶を辿りながら、ボソボソと奇妙な歌を歌い始める。

「え~確か…♪~ボートが川に浮かんでる~オレンジの木にマーマレードの空~♪~君を呼んだらゆっくり答える~♪万華鏡の少女~♪…みたいな…。それから…そうそう、♪~黄色や緑のセロファンの花~♪とか、後は同じ言葉の繰り返しで、♪~お空のルーシーはダイヤモンド~♪と何度も…」

この歌に真っ先に反応したのは櫻井教授だ。櫻井教授はハッとして「それは…多分ビートルズです。かなりアレンジしてますが、『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド』と言う曲の歌詞を和訳した物ではないでしょうか?

本来なら “万華鏡の瞳の少女” “ルーシーはダイヤモンドを纏って空に居る” などと訳したい所ですが、恐らくその人はあの曲のリズムに合わせて大胆に短縮したオリジナルの和訳で歌っていたのだと思います」と解説した。

「そうかビートルズか!♭道理で聞いた事あると思いました!♭『タイムカプセル』の常連さんでビートルズ好きの上品なお婆ちゃんがいましてね、ビートルズメドレーなんかを良く歌ってらしたんですよ。

その時聞いたのは若い男の声でしたけどね。最終電車に間に合いそうだったのでタクシーは使わずに駅まで徒歩で行こうと思ったのが間違いでした。急に雨が降って来ましてね。

あの日は月が出ていなかったのでもしかしてと思っていつもの傘を持って行ったんですけど、結構な土砂降りになっちゃいましてねぇ~。そんな中で若い男が歌を歌っていたもんですから何だか薄気味が悪くって、つい早足になりました♭

『タイムカプセル』から右に折れた先の豪邸ですよ。そこから歌が聴こえたんです♭何だか怖いじゃないですか♭その時「良し!行くぞ!!」って別の男の声がして豪邸の裏門がギギ~!!って…♭♭」

相葉が茶碗を持ったままで固まり、「怖っわぁぁぁぁ!!♭♭」と叫ぶ。その大声にビビった二宮と櫻井と菊池が同時にビクッと座布団の上で跳ねた。「それは確かに不気味でしたね。それで?裏門から誰か出て来たんですか?」

その中で1人だけ落ち着いていた大野弁護士が中丸に聞く。弁護士と言う仕事柄、余程の現実主義者なのか、心霊現象めいた話にはあまり動じないらしい。「はい、俺は傘を差してて顔は良く見えなかったんですが、足元だけ…。多分2人組みだったと思います。

俺、もうビックリして思わず「うわっ!♭」って叫んじゃったんです♭後は駅まで猛ダッシュで逃げました♭怖いですから振り向いたりしません♭無事に駅に着いた時には心底ホッとしたもんです♭
 
今になって冷静に思うと、あの時に聞いた「良し!行くぞ!」って声は呑気に歌っていた奴をもう1人が急がせようとした言葉だった様な気がしましてね、「良し行くぞ」じゃなくて歌ってた奴の名前だったのかもって……♭

例えば名前でヨシオ、ヨシキ…もしくは吉田、吉岡、吉村…みたいな苗字の略で “ヨシ” だったんじゃないかって……♭ほら、今日俺を取り調べしていた刑事さんが、相棒にヨシさんと呼ばれてたじゃないですか?

あの時に何だか音の響きに聞き覚えがあった様な気がしたんですよ。そしたらさっき弁護士の先生が「これで良し」と、仰ったので、あの雨の夜の恐怖体験を思い出しまして…♭

そう言えばあのビートルズ好きのお婆ちゃん、最近見なくなったなぁ~。入院でもしているんだろうか?『タイムカプセル』の懐深さんがあんな事になってしまって、お婆ちゃんも悲しむだろうなぁ……」

最後はまるで独り言の様な呟きで話を終えた中丸だったが、大野弁護士の胸中は激しくザワついていた。「二宮刑事、相葉刑事、先月起きたアポ電強盗の被害者の名前、分かりますか?」「まさか…♭そう言う事か……♭♭」

二宮が思い至ったのと殆ど同時に彼のスマホが着信を告げる。それは潤からの連絡だった。〖あぁニノ?松本だけど、今日そっちに菊池って若い奴行った?〗「来たよ。ストーカー被害者の櫻井教授と一緒にね」いきなり名指しされた櫻井教授がおもむろにアワアワし始める。相葉が「アヒャヒャヒャ♪教授キョドってんじゃん!♪」と笑った。

〖ちょい待て♭さっきのお前の相棒だよな?♭教授も一緒かよ?♭てかお前ら今何処にいんの?♭〗「今?休業中の店でメシ食ってんの。それよかジェイ。先月のアポ電強盗の一件で小諸若希の身辺調べてたんでしょ?何か分かった?」

〖お前さぁ~♭探偵にだって守秘義務っつ~のがあんだっての♭相手が例えデカでもそう簡単にペラペラ調査内容をだなぁ~♭〗気軽に言う二宮に、通話口からルール厳守と言わんばかりの潤の声が聞こえる。だがそんな潤の探偵らしい頑固さも二宮の次の言葉でたちまち瓦解した。

「あ、そう?別にいいけどね~。大野先生がアポ電強盗の被害者が誰だったか聞きたいって言うからさ、ほら?俺ら管轄違いだし?アポ電強盗は未だ未解決の案件だから西麻布署も簡単に教えてくんないと思うんだよね~。

ジェイが調べたんならそっちのが早いと思ったんだけど、まぁあなたもお仕事だし、そう言う事ならこっちでもうちょい話詰めてみるわ。あ”因みに大野先生は今回犯人にされそうな中丸さんの弁護士だから。櫻井教授とも仲良さそうだし、話し合いは順調だよ」

はァ?!♭♭〗未だかつて無い盛大な “はァ?” である。たまらず吹き出す二宮に、相葉も揃って肩を揺らした。〖マジお前ら今何処なんだよ?!♭〗「だから休業中の店だって。言っとくけど刑事にだって守秘義務があんのよ?探偵なんかにペラペラ喋れる訳ないっしょ?」

〖分かった!♭話してやるから場所言え場所!♭♭すぐそっち行く!♭〗「あ、そう?いいの?こちら渋谷区西三丁目の『クッキング野郎』って居酒屋だから、早く来ないと『特性絶品唐揚げ』相葉君が全部食べちゃうよ~」

とぼけた顔で通話を切る二宮に、相葉が「ニノちゃんって相変わらずコソクだねぇ~っ!♪」と、陽気にディスる。困惑したのは大野弁護士だ。「あの…♭さっきの言い方は…♭」「大丈夫だよ智君♪松本さんは男気のある人だから刑事さんの言い方くらいで怒ったりしないよ♪」

潤の怒りの元が自分にあるなどとは夢にも思っていない櫻井教授は、呑気にそんな事を言って潤の人柄を褒めている。「あの…♭櫻井教授…♭多分そう言う事ではないと…♭」

二宮の言い草や潤の盛大な “はァ?” を聞いて何となく察したのだろう。菊池がさり気なく大野弁護士と櫻井教授の間に入り、櫻井教授のグラスにビールを注いだ。

「さすがは稜英光華大生…。中々出来るコだわ…」「あの教授、だいぶ天然だねぇ…」「この世で1番他人にそれ言っちゃいけないの相葉君だからね」顔を寄せ合い、コソコソ言うにのあいコンビに、大野弁護士がこの日最も大きな溜め息をついた。

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二宮が通話を切ってからマッハのスピードで『クッキング野郎』にやって来た潤は、智と櫻井教授の間に菊池が座っていたのを見て幾分ホッとした様に額の汗を手の甲で拭いた。「潤君早っ!♭」

驚いた相葉が食べ物を喉につめ、慌ててビールで飲み下す。「何やってんのよ?」隣の二宮が相葉の背中をパンパンと叩き、潤に向かって手を挙げた。

「いらっしゃい。ここ、中丸さんの店ね。可哀想に西麻布署の暴走ヨシギュウに最有力容疑者にされたせいで今休業中なのよ。それで常連の俺達が売上に貢献してるっつ~訳。もし車なら酒は飲ませらんないよ」

「ニノ、マジお前ふざけんなよ♭」眉毛を吊り上げて座敷席に突き進んで来るロックな潤の迫力に、初めましての中丸がビビる。座敷席に上がった潤はさも当然のごとく智の逆隣にドッカリと座り込むと、「炭酸水ある?」と中丸に注文した。どうやら車で来たらしい。

潤は智越しに菊池に視線を向け、ティアドロップのサングラスを前髪ごと頭に上げてから「小諸若希の事、色々分かったぜ。お前が言ったように、真面目で優しい奴だったと俺も思う」と伝えた。菊池が思わず涙ぐむ。

「…小諸若希の母親が入院したのは先月の初めの頃だ。朝も夜もパート勤務で疲労が蓄積してたのか、胃がんだったらしい。まぁ早期発見だったんで命に別状はなかったんだが、医療費がかさんでな。国民健康保険だけじゃ厳しかったんだ。

小諸若希はバイトのシフトを増やしてどうにか母親の入院費を賄おうとしていたんだが、それでも全然足りねぇ。そんな小諸に高額バイトの話を持ち掛けた野郎がいた。小諸若希がバイトしていたラーメン屋の常連だ。本名は分からないが “ヨシ” と呼ばれていたらしい。

若いのにやたらと羽振りのいい奴で、ラーメン屋の店主の話じゃヨシって野郎もその高額バイトで平均月に100万は儲かってるんだとか、そんなデカい事をほざいてやがったそうだ。小諸若希は見かけこそ茶髪でチャラいけど、真面目に良く働く気のいい奴で、店主も気に入っていたらしい。

金に困ってるならどうにかしてやるからと、店主も小諸に話してやったそうだが、給料の前借りもしていたらしくてな。「これ以上店長に迷惑は掛けられない」って小諸が遠慮したんだと。

小諸若希があんな殺され方をして店主も泣いてたぜ。もっと強く止めてれば良かったってな。智からその中丸さん?が描いた似顔絵がメールで送信されたのはその頃だよ。店主に見せたらヨシって野郎に似ているってさ。

ヨシが何処で何をしているのか、店主も全然知らないみてぇだったけど、反社に属してそうな感じにゃ見えなかったんだってさ。ただ金回りだけは良かったんで今流行りのITとか?投資系じゃねぇかって。

店主はゆくゆく小諸若希に暖簾分けして店やらせてやりたかったみてぇでさ、一言相談してくれればって悔やんでたよ。今まで一度だってバイトを休んだ事が無かった小諸が店に出勤しなくなったのは先月の20日頃くらいからだったらしい。

菊池君からアポ電強盗の話を聞いてたんで、先に色々検索掛けて調べてたんだけど、20日以降でSNS上に上がってたのは西麻布で起こった一件だけだ。被害者は加賀谷のぶ江(かがやのぶえ)さん75歳。自宅の居間で手足を縛られた状態で殺害されていたらしい。顔にソファーを押し付けられた窒息死だそうだ。

資産家の婆ちゃんで、タンス預金で1000万くらいあったんだと。家中めちゃくちゃ荒らされてたんでその1000万を狙った強盗殺人じゃねえかって西麻布署では考えてるみてぇだな。
 
俺もさ、ラーメン屋に行く前に西麻布の方に出張ってあちこち聞き込んでみたんだけど、加賀谷の婆ちゃんには身寄りが無くて、その代わり親しくしていたご近所さんが居たらしい。ほら、この前何か出てたろ?カラオケスナックのマスターが殺されたって事件。

そのマスターってのがお婆ちゃんと親しかったご近所さんだったんだってさ。マスターのカラオケスナックが婆ちゃん家の近くにあって、歌好きの婆ちゃんが良く通っていたって話だぜ」

どうだとばかりに勢い良く喋り終えた潤は、氷の入ったジョッキに炭酸水をドボドボと注ぐと、それを一気に飲み干した。潤はフゥーっと一息つくと、話の続きを始める。

「…だからさ、小諸若希君が加担したアポ電強盗は多分加賀谷の婆ちゃんの事件だ。で、婆ちゃん殺したヤバい野郎ってのがこいつ、ヨシ。婆ちゃんと親しかったマスターも殺されたってなら婆ちゃんのアポ電強盗と無関係だとは思えねぇ」

潤はテーブルにある中丸の似顔絵を指先で弾いてフンと鼻を鳴らした。「相葉君……♭」「うん、ニノちゃん……♭」互いに頷くにのあいコンビに智が呟く。「これで全部繋がったね…♭」こうなると潤にも情報の共有をする必要がある。にのあいコンビは今回の事件の概要を再び初めから潤に話して聞かせた。

「マジかよ…?♭じゃあ中丸さんが聞いた歌声ってもしかして…♭」「そのヨシって野郎でほぼ決まりだろうね…♭婆ちゃん殺してビートルズ歌ってたとか完璧イカれてるだろ♭♭」さすがの二宮も “ヨシ” の異常さに唖然としている。

「…だとすると嫌な予感がするね…♭中丸さんはアポ電強盗殺人事件の目撃者って事になる。ヨシの顔を目撃した訳じゃないが、ヨシの方は見られたと思ったかも…。

少なくともヨシは中丸さんの差していた傘を見た筈だ。お婆さんは『タイムカプセル』の常連だった。お婆さんの自宅にも同じ傘があったんじゃないのか?」智の予測に潤が「ならマスター殺しの時に犯人が持ってたのは婆ちゃん家から盗んだ傘なんじゃね?」と続いた。

「成る程。もしかしてヨシも中丸さんと同じで、相手の顔を見ていなかったとしたら、あの傘が目撃者のヒントになりますね。だからヨシはお婆さんの家から傘を持ち出したんじゃないでしょうか?」

櫻井教授が中々に的を射た事を言う。それに対抗したのか、潤が食い気味に「マスター殺しの動機はそれじゃね?傘を配った常連を知る為だったとか?」と、ドヤった。そんな2人の攻防に、にのあいコンビが俯いて肩を揺する。

このプチ捜査会議は深夜にまで及び、入り口に “休業中” の札が掛けてあるにも関わらず、『クッキング野郎』の明かりは長い間消える事が無かった。外ではまた雨がシトシトと降り始め、まるで恐ろしい殺人鬼の影を覆い隠すかの様に辺りを闇で包み込み、澱んだ風を運んでいた。


To Be Continued

『時計じかけのアンブレラ』【連鎖】(終)

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お山の日から1日遅れての更新でございますアセアセ正体不明の殺人鬼 “ヨシ” が中々に不気味な雰囲気でございますねぇ~ガーン

作中に登場したビートルズの名曲『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド』は発売当初、その不思議な歌詞から当時は未だ合法ドラッグだったLSDをメンバーが摂取して書いた物だと噂されていた曰く付きの曲でございました😅
 
後にジョン・レノンが否定しましたが、この曲の頭文字がLSDになると言う事でそんな噂がファンの間で持ち上がったみたいですねぇ~タラー

まぁ、確かにメロディーラインも、歌詞の和訳もかなり幻想的な感じではありますので、そんな都市伝説が産まれたんでしょうが、それをこの犯人に歌わせる事で、真犯人 “ヨシ” の冷酷非情な薄気味悪さが上手く醸し出せているなら幸いですにっこり

こうしてお話毎に事件の謎が解明されて行きます🗝今回の【お山の日特別企画】はこれで終了ですが(お山要素薄口でごめんね~😭)智君を巡ってのお人好し翔君教授と盛大な「はァ?!♭」の探偵潤君の攻防戦でお許し頂ければと思いますお願いアセアセ

続きは潤君のお誕生日企画『戦慄』でまたお会い致しましょう\爆笑