これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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それぞれの新しい日常が始まった。淋鷹虎は被疑者死亡として送検され、彼が父親と共にしでかした数々の凶悪事件は、後追い記事が時々メディアで取り上げられるくらいで、そこに関わった者は誰一人として表沙汰にされる事無くスルーされて行った。

ただ潤だけは淋鷹虎逮捕の功績が警察庁で評価され、表彰状と金一封が新国防大臣の長谷川恭一郎から進呈された。本当は最年少の公安委員長としてのポストもあったのだが、これ以上忙しくなってはたまらないと、そっちの方は丁寧に辞退した。

『真相報道Weekly』は今年の報道関連の賞を軒並み受賞し、名目共にメディア界日本一となった。勿論ジャーナリストの二宮もそれに伴い、敏腕事件記者として一気に名を上げ、現在も精力的な取材活動を行っている。

「それにしてもつくづく波乱万丈な1年だったな。『PARADOX』もこれから年末に掛けて書き入れ時になるだろうから、忙しくなるぜ」

黒地に金茶のピンストライプが入ったブランドスーツと濃紫のシャツ。淡い藤色に青紫のパネル柄のネクタイ。オールバックの髪のてっぺんにはティアドロップのサングラスが乗っかっている。いつもより少し派手目な潤のスタイルは傍らの智に合わせた物だ。

そんな智は茶色に染めた長めの前髪をふわりと下ろし、後頭部をアヒルの尻尾の様に跳ねさせて、短く切った彼の襟足を愛らしく演出している。胸元の開いた柔らかなモール素材の白いシャツに、黒革のベスト。黒のスリムパンツにショートブーツと言う出で立ちは、智の年齢はおろか、その性別すらも不詳に見せていた。

ここはサンフランシスコ。智の愛したタトゥーアーティスト。松岡が眠っている墓地である。季節の白い花束を手向け、静かに手を合わす潤と智の背後では、様々な扮装をした大勢の人々が、通りを行き交いながら大声で騒いでいた。

カボチャをくり抜いたジャックランタンに、オレンジ色の電飾。この墓地でもハロウィン仕様の飾り付けが至る所に成され、まるでパーティーの様なお祭り騒ぎである。西海岸のサンフランシスコには雪も、冬の極寒も体感する事は殆ど無い。

1年の内最も気温が下がるのは2月の時期で、それでも日本の秋程度の気温なので、潤が着込んだ秋物のお洒落なスーツも10月末だと未だ汗ばむ程だった。「やっぱこっちは暖かいな。あのバットマンのコスプレしてる奴なんか暑くてしょうがねぇだろ?」

潤がバットマンとバットガール。そしてロビンの扮装をした、恐らくはファミリーだと思える一団が、別のインクレディブルファミリーの扮装をした一団と楽しげに談笑している様子を見て「アメリカだねぇ〜♪」とウケている。

「彼らからしてみたら僕達も何らかのコスプレをしているみたいに見えるんじゃないか?日本のアニメとかね♪」智は遠くに見えるゴールデンゲートブリッジを眺め、「漸く松兄ぃにお別れが出来たよ…」と、感慨深そうに呟いた。

今までどうにもならなかったものが一つ一つクリアになって、綺麗に片付いていく。潤との出会いはきっと必然だったのだろう。初めて彼と『PARADOX』で出会った時、何故か懐かしい感覚を覚えたのはもしかしたら…。

『悪いこた言わねぇからこいつにしとけ!ちょいとぶっきらぼうだが、情の深いいい奴だ!俺が保証してやる!』ドヤ顔で胸を叩く松岡の、そんな声が聞こえて来る様で、智は少し可笑しくなった。1人でクスクス微笑う智に潤が顔を覗き込みながらつられて微笑う。

「何何?♪どうした?♪」「いや、バットマンのチームとインクレディブルファミリーがタッグを組めば最強だなと思ってね。まさしくコミックだ」だが潤には異論がある様で、いやいやと智に持論を展開した。

「俺にしてみりゃお前の方こそコミックだぜ♭こう言っちゃ何だかバットマンは単なるマッチョの大富豪だからな。湯水の様に金を使って最強のスーツと兵器を揃えているだけだ。智は生身でバットマン並に強ぇじゃねぇか♭バットマンが相手なら確実に智の圧勝だろ?♭」

「子供達の夢を壊す様な事言うなよ♭」こんなくだらない話題で盛り上がれるのも今の智が幸せだからだ。ムキになって『バットマン<智』説を主張する潤に、「分かった分かった」と苦笑しながら、智は松岡の墓石に心の中で『ありがとう』と伝えていた。

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月日が経つのは何と早い事か、日本の政界に激震が走った『黒神会』の大事件が、すっかり過去の出来事の様になりつつある12月。あと1ヶ月で今年もお終いである。

六本木の会員制キャバレー『PARADOX』では20日から1週間の期間限定で始まるクリスマスショーのリハーサルに追われ、演者達は汗を流していた。

櫻井からこの店を引き継ぎ、経営の分からない所は潤の紹介してくれた確かな筋の公認会計士に全て任せてある。『PARADOX』のホームページに新たに撮影した智のダンス動画を加え、新しいオーナーに就任した旨とクリスマスショーのPRをした所、パーティーチケットは飛ぶように売れた。

それと同時に新しい価格設定で、これまでよりも3割程安くなった会員権も応募者が増え、経営が傾きかけた『PARADOX』はここに来て回復の兆しを見せ始めている。未だ手探りばかりの頼りないオーナーではあるが、幸い智の周囲には潤を初め、各方面に顔が利く助っ人達がいてくれるので、経営は今の所順調だ。

「みんなお疲れ様。30分の休憩の後、一通りやってみてから今日は終わりにしよう」「はい智さん!♪」最初はみんな智に気を遣い『オーナー』と呼んでいたのだが、そんな器じゃないからと智が嫌がり、『PARADOX』の従業員はみんな『智さん』と呼ぶようになった。

元々ここでの芸名はSato-Cだったのだが、これは『Dead line』でのコードネームでもあった事から、今では使用するのを止める事にしている。休憩時間に入り、以前櫻井が支配人室として使用していた部屋に戻ると、智のノートパソコンに『真相報道Weekly』の二宮からメールが来ていた。

編集長の東山からの繋がりもあり、二宮は事後情報を入手すると誰よりも真っ先に智に連絡をくれる。今は淋鷹虎を殺害した犯人についての情報を色々と調べてくれていた筈だ。

智は『玄武会』から送り込まれた暗殺者の仕業じゃないかと踏んでいたのだが、メールを呼んで、それがとんだ見当違いだったと知った。

[淋鷹虎殺害の犯人が今朝逮捕された。元看護師だった寝屋川則枝(ねやがわのりえ)。何とあの寝屋川登見雄(ねやがわとみお)元公安委員長の妻だ。淋鷹虎の身分詐称のせいで夫が警察庁を追われたと彼を恨んでいたらしい。

ロッカールームに忍び込んで看護師の制服を盗み、看護師の振りをして薬物保管庫から筋弛緩剤のアンプルを持ち出したそうだ。それを看護師の巡回に見せ掛けて病室の鷹虎の点滴パックに注入、淋鷹虎を殺害した。

以上が淋鷹虎殺害の真相だよ。また何か分かったら連絡する。  二宮]「そうだったのか…♭寝屋川委員長の奥さんが…♭」思いがけない真実であった。寝屋川登見雄の辞職がまさかこんな所で新たな犯罪を生み出していたとは何とも皮肉なものである。

今回の事件では様々な家族の姿を見た。夫の犯した恐ろしい犯罪を恐れ、家族を捨てて別の家族と共に幸せを培った女。果てしなき野望に目をぎらつかせ、息子を犯罪の道具にして40年もの歳月を費やした男。

父親の野望に便乗し、生まれ故郷を捨てて別人として生き、この日本で頂点を極める為にそれを阻害する者を抹殺して来た息子。そしてその息子に便乗して親の代からの犯罪を隠蔽し、金と権力にまみれた二代目悪徳政治家達。

血の絆から逃れ切れず、人知れず犯罪に手を染めて来たが、自力で築き上げた大切な家族を守る為に血の絆をかなぐり捨て、遂に夢への切符を掴み取った女。そして夫の失職を全て他者のせいにして怒りをぶつけ、より重い犯罪に手を染めた女…。

「仕事をクビになった挙句に奥さんが殺人犯じゃ寝屋川委員長もたまらないな…」智は小さく溜め息をついて二宮からのメールを見つめ、アンジーとダイアナの母娘が幸せになれた事がせめてもの救いだとしみじみ思った。

同じファミリーなら潤と共にサンフランシスコで見た、バットマンとインクレディブルファミリーの彼らの方がよっぽど平和である。次の墓参りの時はもっとゆっくりとサンフランシスコで過ごしたい。勿論潤と共に…。

メールは二宮の物の他にももう一件あった。現在アメリカで仕事をしている櫻井からのメールだ。以前に使っていたメールアドレスは変更した筈なのにしっかりバレている。「多分You-Rだな♭全く油断も隙もない♭」

恐らく『PARADOX』が順調なのかどうか気になっているのだろうと、メールを開いた智だったが、その内容を見た途端、開いた口が塞がらなくなった。

[智。どうやら『PARADOX』の経営は上手くやっているらしいな。所で『DOGGIE STYLE』の検品バイトだが、お前の名義に変えてやったから一稼ぎするがいい。3ヶ月に1度お前の所に新作が届く筈だ。

ちゃんと審査して『DOGGIE STYLE』の『SEXY TOY』部門まで検品結果を送信するんだぞ。年間5万ドルの美味しいバイトだ。売り上げに応じてキャッシュバックされるから売れれば売れる程儲けが増える。松本と一緒にせいぜい頑張って稼げ。 櫻井]

絶対に嫌がらせだ…♭届いた荷物が潤に見つからない内に返品してやろうかと智が考えていた時、その潤本人から電話が掛かって来た。

「もしもし智?何かさぁ、さっき櫻井からメールが来たんだけど、お前俺のメルアドあいつに教えた?」「教えない♭多分ユーリだ♭」それを聞いて納得したのか、潤は「だろうと思った♭」と答えると、嬉しそうな声で言った。

「何でも年間5万ドルも稼げるバイトがあるんだってよ♪5万ドルっつったらだいたい500万だろ?俺は公務員だから副業は無理だけど、暇な時間に出来るバイトらしいから智やってみねぇ?♪櫻井の持ってきた話なら確実だろ?♪」

あ〜もう♭♭智は脱力しながら届いた荷物を潤が見た時の言い訳を懸命に考えていた。

ダーツダーツダーツダーツダーツダーツダーツダーツダーツダーツダーツダーツダーツダーツ

まさかまさかの淋鷹虎殺害犯でしたガーンタラー最初は『玄武会』からの刺客と言う事にしようかと思っていたんですが、全く違う角度の身近な所に犯人が居た方が意外性があるかと思い、今回の仕上がりになりましたニコニコ

松兄ぃのお墓参りのくだりとか、やっと回収出来た感じで、今回は本当に自分の仕事の遅さを思い知らされたストーリーになりました笑い泣きアセアセ

翔君の大人のオモチャ送り付け事件は初めの方にチョロっと書いた翔君の雑務についてのくだりで、既に考えていたエピソードだったのですが、その先をどう持って行くかは現在考え中でございます🤔

今回は終始こんなユルい感じで続く予定ですので、どうぞお気軽に読み流して頂ければと思っておりますウインク