これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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ここは六本木の会員制キャバレー『PARADOX』。キャバレーと言ってもこの店は所謂女が男の客と寄り添って酒を飲んだり、お喋りしたりする類いのキャバレーではなく、どちらかと言うと海外由来のキャバレーに近い営業形態である。

恐らくフランス映画に登場するムーランルージュみたいな店のイメージを浮かべて頂ければ分りやすいであろう。大型のステージで行われる歌やダンスの本格的なショーを見せて酒を飲むキャバレーがこの『PARADOX』と言う訳だ。

ショーの種類は様々で、ダンスパフォーマンスやミュージカル。シャンソンやスタンダードジャズ等の歌謡ショー。そして美しい半裸の女達が繰り広げるポールダンスショー等々。そんな多種多様なショーが、この店では連日連夜華やかに行われている。

ここで働く女達はダンサーもホールスタッフも粒よりの美女ばかりであり、政界や財界、スポーツ選手等の著名人も会員リストに名を連ねて、明らかに他の競合店とは一線を画す様な高級店となっていた。

そのせいか、中にはかなり露出の激しい際どいショーもあると言うのに、風営法等で警察の手が入ったりする事も無く、常に大勢の常連客で賑わっているのだ。

「どうだね?松本君。こんなお店は初めてじゃないか?」この店の会員である日本平和党の代議士、長谷川恭一郎(はせがわきょういちろう)は、白髪混じりの髪を手櫛で撫で付けながら、傍らの若者に言った。

「ええ、確かに…。なにぶん不調法なものでしてね。先生だから応じましたが、1つ間違えば利益供給にもなりかねませんので…」「ハハハ君は固いねぇ~。お父上はもっと融通の利くお人だったぞ」松本と呼ばれた若者を嗜める様に一笑に付した長谷川は「だが、そんな君だからこそ信頼出来るという物だ」と、若者の肩をポンポンと叩いた。

仕立てのいいダークグレーのスーツを小粋に着こなした、目が覚める程にハンサムな若者である。緩いオールバックにとかしつけた黒髪に色白の肌。日本人離れしたハッキリとした目鼻立ちが、まるで役者かモデルみたいに美しい若者だが、スーツに隠れた細身の体躯は、しっかりとした肩幅が伺え、良く鍛えられている事を暗に示していた。

「これは長谷川先生、ようこそおいで下さいました」そこに流れる様なスマートな歩き方で歩み寄って来たのはこの店のオーナー兼支配人だ。東大の政治経済学部を主席で卒業したと言う超エリートで、ちょっとした所作の一つ一つに育ちの良さが現れている様な、極めて上品な男である。

未だ30そこそこの若さだが、話す言葉の端々に知的水準の高さが漂い、この男が親の地盤を引き継ぎ、若くして大物になったと言う事実を如実に物語っていた。

「おお、櫻井君。オーナー自ら出迎えてくれるとは嬉しいね。松本君。彼がこの店のオーナーの櫻井翔君だよ。こんな上品そうな2枚目だが、彼はなかなかに頭の切れる怖い男だよ。櫻井君。彼は松本潤君と言って年は未だ29歳だが、将来は警察庁を背負って立つと噂される程の逸材でね。今の内に機嫌を取って置こうと連れて来たんだよ」

長谷川は冗談めかしてお互いの自己紹介をすっかり済ませ、「彼は初めてだが、入れるかね?」と尋ねた。「勿論ですとも。長谷川先生のご紹介とあれば私に異存などございませんよ。そうですか、警察庁の…。先生とのご縁があるとすればもしや松本刑事局長のお身内の方でしょうか?」

櫻井は探るような眼で松本を見つめ、柔和な微笑みを浮かべた。だが、その瞳の奥には何やら底知れぬ鋭さがあり、この櫻井なるオーナーの持つただならないムードをそこはかと無く匂わせている。怖い男か…。確かにな…。松本は薄っすらとそう感じたが、あえて顔には出さずに差し出された櫻井の手を強く握った。

「そうです。不肖の息子です。父はもう定年になりましたが、長谷川先生とは今でも懇意にさせて頂いております。先生はああ仰いますが、私などは完全に事務方でね。未だ未だ青二才のぺーぺーですよ」

まるで腹を探り合う様な初顔合わせを終え、松本は上機嫌の長谷川と共に、櫻井の案内する席についた。そこは革張りのソファーと大理石のテーブルが置かれた、ステージの良く見えるVIP席である。

深いスリット入りのチャイナドレスを着た美人のホールスタッフが、ウェルカムシャンパンとキャビアの乗ったオードブルを2人の前に置き、軽くウインクをして歩き去って行く。

ここのホールスタッフは、それぞれ色やデザインが微妙に異なるチャイナドレスを身に纏い、酒や肴を各テーブルに運んでいるが、席についたりお喋りしたり等のサービスは一切しないのが通例である。だが、稀にステージを終えたダンサー等がチップを貰って相手をする場合もあり、そこはその場の雰囲気で臨機応変に立ち回るのが、この店の暗黙のルールだ。

「いい店ですね、先生。過剰なサービスが無いのがかえって本格的な感じがします。純粋にショーを楽しむ、まるでブロードウェイのシアターの様な雰囲気ですね。日本じゃないみたいだ」松本が褒めると長谷川は大層得意気に頷いた。

「そうだろう?ここのショーがまた素晴らしいんだよ。先程の櫻井君の父でもある先代の櫻井宗十郎(さくらいそうじゅうろう)氏がシカゴの伝統的なキャバレーを参考にしたらしくてね。歌手もダンサーも一流どころを雇い入れているんだ。安いクラブで女をはべらすよりもこんな本格的な場所で遊んだ方が目も肥えると言うものだよ」

長谷川の言わんとする事は松本にも良く理解が出来た。要するにこう言う店なら政界や警察官僚に蔓延(はびこ)りがちな接待と言う名の悪しき慣習には倣わないであろうと弁明がしたいのだ。

長谷川はかつて警察庁刑事局長だった松本の父の威光を傘に着たくて、息子である松本をどうにか味方に取り込もうと躍起だが、松本の目的はそれとは別の所にあった。

松本は警察庁の広報部に所属し、マスコミ対策やら外部機関との繋ぎを担う、所謂事務仕事を行っている部署で働いているが、それはあくまでも表向きの役職であって実際は公安部の人間である。だが、松本が公安に所属しているのを知るのは警察庁でもほんの一握りだけ。

元々警察庁公安部と言うのは身内にも正体を知らせず、密かに活動する機関で、国の存亡を脅かす様な事柄に速やかに対応し、極秘で片付けるのが主な任務である。潜入捜査、テロ対策、あるいは政治絡みの隠蔽工作等、その役割は多岐に及び、内容によっては違法ギリギリの事もあった。

実はこの長谷川恭一郎と言う代議士にはかねてから黒い噂がある。どうも外部の反社会的組織と繋がりを持ち、裏金のやり取りだったり、若しくは自分に取って都合の悪い様々な人や物等を消し去ったりと、とても表沙汰には出来ない様な、きな臭い話も耳に入って来ており、公安が最重要人物としてマークしている男だった。

そんな長谷川恭一郎が、後々役に立ちそうな広報部の松本に接触してくるのは想定内だったので、もし長谷川から何かしらのアプローチがあれば彼の懐に入り、身辺の調査をして報告するのが松本に課せられた公安としての任務である。

長谷川に関する黒い噂が真実なら、国に取ってはガンになる男だ。早急に切り捨てないといずれ社会的な影響が大きくなり、国益に支障をきたす場合もあろう。だから事が大きくなる前に動きを封じなくてはならない。詰まりは粛清だ。

松本はこの粛清と言う言葉があまり好きではなかった。この言葉には様々なニュアンスがあり、社会的な制裁の場合もあれば、生命そのものを失う場合もある。いずれにせよ全てを無くす事には何ら変わりなく、公安と言う機関に所属する者ならではの葛藤を感じずにはいられない。

ステージではセリーヌ・ディオンに似た雰囲気のシャンソン歌手が、情熱的にエディット・ピアフの名曲を歌い上げており、本格的の名に相応しい見事なショーが展開されているが、松本の神経はいつになく張り詰めていた。

先程の櫻井と言う男…。長谷川と親の代から親しい様だが、本当にただの酒場のオーナーなのか…?あの上品な物腰の裏にある油断のならないムードは一体…。これまでの調べでは長谷川の交遊関係に不審な点はあまり見受けられなかった。

だが、長谷川の周囲には霧に隠れている部分も多く、全てが判明するまでには未だ時間が掛かるであろう。松本は周囲に忙しく視線を巡らせ、こう言った店には珍しく、やたらと女性客が多い事に気がついた。

「先生。このお店にはやけに女性の常連客が多いんですね。近頃の女性は実に発展的だ」松本の素朴な疑問に長谷川は訳知り顔で「松本君。その発言は今じゃ女性蔑視だと言われかねないよ」などと釘を刺してからこう答えた。

「今日は水曜日だからね。彼の出演日なんだよ。オーナーの櫻井君が見出した『PARADOX』のスターでね、今では大変な人気らしい。確か『Sato―C』と言ったかな?何でも欧米のプロも認めた程の実力があるショーダンサーだそうだ」「へぇ?彼と言う事は男性ですか?意外ですね」

この店のナンバーワンはてっきり女性だと思っていた松本には、そのSato―Cなるダンサーの存在が随分と奇異な感じがする。だが、これだけ女性客が多いと言う事は確かに人気があるのだろう。

しかし欧米のプロも認めた程才能あるダンサーが有名にもならず何故こんな街のキャバレーでショーをやっているのか。櫻井と言いそのダンサーと言い、どうにもこの『PARADOX』には謎めいた事柄が多すぎる。

松本がそんな事を考えているとシャンソンのショーが終わり、舞台が暗転した。会場の女性客がにわかに色めき立ち始める。すると闇の中、緊迫したベースギターの音がいきなり聞き覚えのあるメロディーを奏で始めた。隣の長谷川が「ほう?」と呟いて興味を示す。

「これはシューベルトの『魔王』だね。ロックテイストにアレンジされているが、なかなか面白いな」長谷川の説明で松本の頭にもあの少しダークな雰囲気のクラシック音楽が浮かんだ。ベースには次第にギターとドラムの音も混じり始め、舞台上が徐々に明るくなって行く。

「♪~暗闇の中。激しくすさぶ風の音~♪疾走する一頭の馬~♪手綱を握る男の胸に抱かれ怯える少年の姿~♪」クラシックとは思えないロックなリズムで、『魔王』の有名なオペラ詞を大胆にアレンジした歌を歌いながら登場したのは、未だ未成年の様なあどけない面差しの日本人だった。

ヘッドマイクを装着した栗色の髪をふわふわと躍らせ、華奢な体躯は柳の様にしなやかで女と見違える程である。軽やかにステップを踏む足元はまるで風を踏んでいるかの様に柔らかく、重力をまるで感じさせない。

青年の背後では下着の様な黒革のボンデージファッションに身を包んだ、派手なメイクの外国人女性ダンサーが2人、艶かしく腰をくねらせながら踊り、盛んにお色気を振り撒いているが、青年はそんな女達には目もくれず、ともすれば冷酷とも取れる様子で華麗に歌い舞っている。

「なかなかの麗人だね。美しい声をしている。だが、魔王にしてはいささか線が細いのではないかな?」長谷川の言葉に「そうですね…」と相づちを打ちつつ、松本は真逆の事を思っていた。

外国の文献などでは禍々しく、恐ろしい姿で描かれがちの悪魔だが、悪魔は人を誘惑し、堕落させるのが本分である。醜い姿をしている筈がない。そう…もしかしたら本当の魔王と言うのは彼の様に繊細で優美な…性別すらも超越したような存在なのかも知れない…。

水を打った様にSato―Cのショーに魅入る観客達を眺めながら、松本はそそけ立つ様な緊張と、抑え切れない胸のざわめきを覚えていた。

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ほのぼの物語の後は雰囲気をがらりと変えて、かなりハードボイルドな長編を皆様にお届けしたいと思いますパーウインク前回のあとがきにもありましたが、今回のお話は私が今年の冒頭に見た初夢の内容を参考に、物語構成を組み立てた作品でございますニコニコ

長さとしては昨年の梅雨時に始めた『TRAP』程度の物を考えておりますが、いつもながらの見切り発車なのでアセアセどうなっていくのか私にも分かりませんびっくりタラーただ今回の大ちゃんキャラはダークでセクシーなオトナ感満載でお送りしたいと思っておりますちゅー

いきなり政治家とか公安とか、いかにも社会派サスペンス的な雰囲気を醸し出しておりますが、私が書くのでそんな大層な物では決してごさいません滝汗どうぞお気楽にお楽しみ頂けましたら幸いでございます🙇

因みにこの物語の翔君キャラはとってもダークサイドな人間でございますタラーイメージは例のカテキョさんグラサン恐らく時期もそれほど離れてはいないと思いますが、嵐君達のヴィジュアルイメージも大体2013年の『アラフェス』並びに『LOVE』コン期辺りを想定しておりますので、その頃を想像して頂ければ妄想しやすいかも知れませんウインク