これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ
Story Ⅵ
それから数日。あんな事件があったにも関わらず俺達の日常はそれまでと何ら変わらない感じで過ぎて行った。俺と翔さんは智の『辛口焼きそばパン』を争いながら買っていたし、智も相葉と共に毎日風嵐高校の昼時にパンを売りに来た。
唯一変化があったとすれば今までは週に2、3回しかパンを買いに来なかったニノが毎日パンを買いに来る様になった事くらいだろうか?相変わらずコーンマヨネーズパン一択だったが、あの面倒臭がりなニノが重い腰を上げて移動販売車の前に並び、何だかんだと毒を吐いて相葉をからかっているのは結構大きな変化…と言うか、あまのじゃくなニノらしい愛情表現なんじゃねぇかと思う。
そうそう、智の作る『辛口焼きそばパン』にも最近ちょっとした遊び心が加わる様になったんだぜ。数個に1個くらいの割りで『当たりパン』が入る様になってな、この当たりパンは従来の『辛口焼きそばパン』の中に唐揚げが入っているんだけど、この唐揚げが超美味い♪
買うパンの数はやや翔さんに押され気味で何気にヤバいんだけど♭この当たりパンに関しては今の所俺の全勝♪例えば5個VS2個で翔さんの買ったパンが多くても当たりパンは俺の買った分に入ってたりするから、例え数に負けていても何か勝てんじゃね?って気になって来んだよな♪
さあ、明日はいよいよ智に告(こく)る権利を争ってのラストバトルだ。俺も翔さんも不正が無ぇ様に、今まで食った『辛口焼きそばパン』の個別パックを証拠として写真に撮り、ちゃんと手元に残してある。
明日には玉入れ方式で1個づつ数え合い、勝者の個別パックの差が、敗者の『溶岩拉麺レベル5』の辛味ハンデとして足される予定だ。正直、食った数は勝てるかどうかビミョーな所だが、例えハンデが足されたとしても、そん時ゃ翔さんより早く完食すりゃいいだけの話だしな。とにかく勝つ!絶対ぇ勝つ!今日も大汗かいて『辛口焼きそばパン』を頬張りつつ、俺は心に熱く誓っていた。
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翌日。風嵐高校最後の授業が終わった。明日は卒業式なんで授業は昼までだったが、俺にしちゃ珍しく全科目に真面目に出席したし、通知表の成績もなかなかだった。
いつもは説教しか言わねぇ担任がちょっと涙ぐんでいたのも何気に染みたし、普段はさほど注目する事も無かったクラスメイトの女子達が、俺との別れを惜しんで泣きじゃくっていたのにもちょっとした可愛げを感じたりして、俺もそれなりに楽しい高校生活だったと実感した。
「この分じゃ明日の卒業式はボタン争奪戦でジェイが女子達に揉みくちゃにされそうだな~。モテる男は辛いねぇ~♪」翔さんとの最終バトルの為に『鬼麺組朱雀』へと赴く俺を、隣を歩くニノがからかって来る。
本人は見届け人だとうそぶいていたが、きっと『溶岩拉麺レベル5』の激辛さ加減に悶絶する俺達の様子を観察したいだけに違いねぇ♭今日は半ドンなんで、『森のどんぐり』の移動販売車も来ねぇし、相葉と遊べないから面白くねぇんだろう。
「腹減ったな~。大野さん奪還に協力してくれたお礼にランチメニュー半額にしてくれるって長瀬さん言ってたけど、本当かね?俺ラーメンと天津飯ハーフのセット食いたいんだけどさ~。長瀬さんの言葉を信用して400円しか持ってねぇのよ。足りない時はジェイ頼む♪」
「はぁ?♭俺はランチメニューどころか激辛ラーメンで今まさに地獄に立ち向かおうってんだぜ♭そんな俺から搾り取ろうってか?♭」「い~じゃねぇか♪お前は超セレブなワルなんだからさ♪1000円や2000円くらいティッシュレベルだろ?」「お前ふざけんなよ♭」
ったく♭確かにウチはセレブだけどさ、だからっつってどっかの浮かれたお坊っちゃまみたくたくさん小遣いが貰える訳じゃねぇっつ~の♭1000円2000円は俺にもそこそこ大金だわ♭だが、ニノが400円しか持ってねぇ時は本当に400円だからそう言う意味では徹底してる♭
何にせよ、俺と翔さんが戦う『溶岩拉麺レベル5』は元ネタが長瀬さんなんでタダで食える訳だし、俺は「その代わり俺を応援しろよ」と念押ししてからニノにランチを奢ってやる事にした。
風嵐高校から徒歩で20分。やっと『鬼麺組朱雀』に到着した俺とニノは、入り口に『準備中』の札が掛かっているのを確かめてから店内に入って行った。
視線の端で捕らえた駐車場の派手なデコ軽トラに、翔さんが既に来ている事を知る。店内ではとっくに上着を脱いだ翔さんが、カウンターを使った腕立て伏せをせっせとやっていて、盛り上がる上腕二頭筋をこれ見よがしに見せつけていた。
「よぉ来たか潤。二宮も一緒か?」長瀬さんはいつものラーメン屋スタイルで俺達を迎えてくれ、先ずはニノが食いたがってたランチメニューに取りかかった。その間俺と翔さんは各自で写した写真と照らし合わせつつ、『辛口焼きそばパン』の個別パックを数えていく。
結果、3ヶ月間で俺が204個、翔さんは207個となった。ガッツポーズで勝利の雄叫びをあげる翔さんを横目で睨みつつ、3個も負けた自分自身の不甲斐なさを嘆いていると、長瀬さんが「潤はハンデで3辛プラスだなぁ~♪」と嬉しそうに言った。
クッソ~~~♭♭♭ヤベ~とは思っていたが、まさか3個も負けてたとはな~~♭♭♭っつ~事は俺が食う『溶岩拉麺』はレベル5どころかレベル8になっちまうじゃねぇ~か♭♭
「大丈夫か?松潤。何なら俺が持って来た胃薬飲んどくか?」敵に塩を送っているつもりなのか、翔さんが何気に失礼な事を言う。長瀬さんが「腹壊す様なもん作るかよ♭」と苦笑いしてカウンターの中から翔さんを軽く小突いた。
俺らの座るカウンター席から1番近いテーブル席を陣取り、超美味そうにランチメニューを食ってるニノが「行けぇ~!♪ジェイ!♪」と、応援しているのか、面白がっているのか、全然分からねぇ様な明るい声を上げる。
『溶岩拉麺』は炒めた肉と野菜に『鬼麺組朱雀』特製スープを加え、様々な香辛料で辛味をつけた人気の旨辛ラーメンだが、レベル5にもなるとスープの色が半端ねぇ♭しかも小型の鉄鍋で出されるので、真っ赤なスープがグツグツと煮える様はまさしくマグマそのものだ♭
そんなレベル5の『溶岩拉麺』もすこぶるパンチがあったが、俺の前に出された3辛プラスの『溶岩拉麺』は真っ赤なスープの上に唐辛子らしき真っ赤な粉が結構な分量で乗っかっていて、湯気だけで喉がやられそうな、完全に地獄の食いもんだった♭
「じゃあ始めるぜ♪」長瀬さんが長エプロンのポケットからストップウォッチを取り出し、10秒前からカウントし始める。「ビビってんじゃねぇぞ松潤」「ビビってねぇ~し!♭」クソ~!♭翔さんにナメられてるぜ♭俺は胸を張って睨みを効かせると、レンゲと箸を構え直して煮えたぎる地獄飯に立ち向かう覚悟を決めた。
「スリー!ツー!ワン!GO !!」長瀬さんの声と同時に先ずはレンゲでスープをすすってみる。なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!!♭♭一瞬脳天から火が出たかと思った♭たった一口だけなのに、全身の毛穴と言う毛穴が一気に開き、汗が噴き出して来る♭
隣をチラ見すると、翔さんもあまりの辛さにのけ反り、今日もバッチリ固まったリーゼントの生え際から滝の様な汗を滴らせつつ、「辛ぇぇぇぇ~~!!♭♭熱ぃぃぃぃ!!♭♭辛ぇぇぇぇ~~!!♭♭」と繰り返し叫んでいた。
俺は止めどなく流れる汗を、持参して来たスポーツタオルで拭いながら、懸命にレンゲと箸を動かしてこの地獄飯に挑んでいく。すると不思議な事に途中からスープがまろやかに感じる様になって来た。
多分強烈過ぎる辛さに舌が麻痺しちまったんだろう。足された3辛分の唐辛子の粉がスープに溶け込めば溶け込む程、とろみと旨味が増して行く様な気がして、辛ぇは辛ぇがどんどんイケる。しっかし辛ぇ~~!♭でも美味ぇ~~!♭
これぞ旨辛の醍醐味っつ~事なんだろうか。朝食を抜いて腹がペコペコに減っていた事も幸いしてか、この激辛ラーメンをそこそこの速さで平らげた俺は、長瀬さんに白米を注文して残ったスープにブッ込むと、それも食っちまって完全無欠に完食してやった。
「ご馳走さまでした~~!!」俺が両手を合わせて声を上げたのと、翔さんが「終わったぁぁぁ~~!」と叫んで箸を置いたのはほぼ同時だった。当然の事ながら翔さんも完食。
だが、まさか俺が白米入れてスープまで全部完食していたとは知らなかったんだろう。俺の鉄鍋を覗き込んだ翔さんはビックリ仰天して「お前マジか?!♭」と二度見した。
長瀬さんによると秒数も僅かながら俺の方が速かったらしく、白米を余計に食った分も加味されて、最終バトルはめでたくこのジュン・マツモト様の完全勝利となった。これにはさすがの翔さんも認めない訳にはいかなかったようで、滅茶苦茶悔しがりながらも「クッソ~!やるじゃねぇか!♭」と最後にはハイタッチで俺の勝利を祝ってくれた。
「良くやったな潤。だが、あくまでも1番大切なのは智の気持ちだぞ。分かったな?」親代わりの長瀬さんらしい言葉だ。勿論智に断られたら始めから出直す覚悟だが、俺の中には智を諦めるって選択肢は存在しねぇ。
長瀬さんにゃ悪ぃけど、俺は智が受け入れてくれるまで男を磨いて何度だってチャレンジする。だってそうだろ?俺に取って智より可愛くて智より愛しく思えるやつは何処にもいねぇんだから、年上だとか同性がどうとか、そんなありきたりな正論は大気圏の彼方に吹っ飛ばしてやるぜ。
実はもう俺の脳内では告る時のプランもちゃんと考えてある。明日の卒業式が終わったら即決行だ。待ってろよ智!♪そう俺が心密かな決意を固めた時だった。磨りガラスが貼られた入り口のドアに、やけにもたついている人影が映った。
酒にでも酔っているのか、その人影は入り口を開けようとしては失敗し、物凄く斜めになってマジマジと入り口の取っ手を眺めると、漸くガラガラとスライドさせ、ややおぼつかない足取りで店内に入って来た。
「な、長瀬さん、今帰りました。これ、これ、お土産…です」一瞬智が入って来たのかと思った♭だが、ピッチリと七三に分けた黒髪といい、全然サイズの合っていねぇダブダブのスーツといい、唇を尖らせた困り顔といい、顔は智だが、その人物はどうにもこうにも抗いがたい程に強力な負のオーラを放ちまくっている♭
そいつは「お土産、お土産」と喋り始めの幼児みたいに連発しながら、紙袋から四角い包みを取り出すと、カウンター越しに長瀬さんに渡そうとした。ところが何に躓いたのか危うく転びかけ、近くに居た翔さんに「おっとっと♭」と後ろ襟を掴まれて、そのまま引っ張り上げられた。
「えっ?智君?…♭じゃねぇか♭すげ~似てっけど何か幸薄そうな面してんなお前♭」ガン見する翔さんの、迫力のある汗だくの顔面に恐れをなしたのか、そいつは後ろ襟を掴まれたまんまの姿勢で固まり、「や、やんきぃ~…♭」とまるで平仮名みてぇな発音で呟いた。
「あれ?翔も潤も初めてだったか?こいつはハルっつんだ。大野春彦(おおのはるひこ)智の双子の兄貴だよ。『丸星百貨店(まるぼしひゃっかてん)』の食品開発部で働いてんだけどな、『デパ地下ご当地グルメ』って企画で出張に行ってて今帰って来た所だ。
いやね、本当ならもっと早く帰る筈だったんだが、福岡のデパートで階段から転落して暫く入院してたんだと♭智と違ってどうもハルは昔っからツいてねぇのよ♭テストの日に高熱出したり、大事な催し物があると必ずトラブルに巻き込まれたり、街に出りゃキャッチセールスに即捕まるしなぁ~♭
しょうがねぇんでハルの預金通帳やカードは全部俺が管理してやってんだ。そうじゃねぇといつ悪い奴に騙されて身ぐるみ剥がされっか分かりゃしねぇからさ~♭」智に双子の兄弟が居たとは初耳だぜ♭っつ~か、初めましての俺ですらソッコーで感知出来る負け感なんだし、そりゃ長瀬さんも心配になるってもんだろう♭
しっかし同じ顔でこうも雰囲気違うかね?♭さっきまでスマホゲームに夢中になっていたニノが興味津々にハルを眺め回し、クックックッと肩を揺らしている。どうやらツボに入ったらしい♭ところが翔さんは予想外の反応を見せた。
「そーかそーか!♪お前ハルっつ~のか!♪面白ぇなぁ~!♪」翔さんは特攻服の上着を肩に引っかけてハルの肩をガッシリ抱くと、「おいこらハル!♪今から俺について来やがれ!♪この俺様が強ぇ男ってもんを今からしっかりレクチャーしてやる!♪」と、ほぼ無理矢理に連れ出そうとする。
ハルは今にも泣きそうな顔で救いを求める様に長瀬さんを見つめ、「いえ、あの…♭やんき…♭は困り…あの…♭」と、モゴモゴ拒絶しつつも、そのまま店外へと引き摺られて行った。「長瀬さん、あれいいの?♭まさか翔さんって大野さんのビジュアルなら兄貴でも弟でもどっちでもいいって感じ?♭」
ニノが珍しくハルの身の上を案じている。それほどハルの不幸オーラが強烈だったって事だろう。だが、長瀬さんは余裕の笑みを浮かべ、何故か満足そうに頷いた。
「大丈夫大丈夫。翔はあれでなかなか面倒見のいい奴だからな。翔くらいのパワーがありゃハルの貧乏神もそそくさと退散するだろうぜ。何せ『TOKIO―BOMBER』を解体させた張本人だしな。
ほら、翔が1年の時に原チャリで暴走族グループに競り勝った話知ってるだろう?あれ実はライバル校じゃなくてウチのリーダーの城島さんなんだ。『TOKIO―BOMBER』が解散して堅気になったのは、翔に原チャリで敗北した城島さんが引き際を決めたのがきっかけだった。
翔の顔にある傷はそん時に翔の乗る原チャリのエンジンがオーバーヒートで爆発しちまって、その破片が飛んで来た結果でな。いつの間にか『TOKIO―BOMBER』はヤンキー界でスーパースターみたく崇められる様になっちまってたんで、まさか1年のガキに原チャリで負けたとは誰も口に出せなかったんだ。
そしたらいつの間にかライバル校の暴走族グループに原チャリで競り勝ったって話にすりかわってた。だからなぁ潤。櫻井翔ってのは実際の所、エンペラーって通り名にガチでふさわしい奴なんだよ」「マジかよ?!♭♭」
どうやら翔さんにまつわる武勇伝は話が盛られるどころか多少過小評価されて広まっていたらしい。長瀬さんの言い分を聞いていると、翔さんに一目置いているのは容易に察しがついた。
「もしかして長瀬さんは俺よか翔さんに勝って貰いたかったんじゃね?」軽くへこむ俺に長瀬さんは至極意外な話を聞かせてくれたのだった。
まさかのハル君登場翔君キャラのお土産は智君キャラの双子のお兄ちゃん、ハル君の事でした~今回の翔君キャラは『ピカ☆ンチ』のチュウ君みたいなので、むしろハル君の方がお似合いかも知れませんのぅ~
さて、このお話も残す所後2話くらいでございます潤智の恋の顛末はどーなるのでしょう?勿論ハッピーエンドに違いありません