これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ
Story Ⅲ
あれは忘れもしない去年の今頃。放課後に小腹が減ったんで、連れと近所のファミレスに行こうとしていた時だった。地元の運送屋に就職が決まった翔さんが、就職祝いに仲間と飲みに来ていた所と偶然鉢合わせたんだ。
翔さんは早生まれなんで、成人式の時に酒が飲めなかったからとか、何かそんな事を言っていて、やけにご機嫌な感じだった。
何だかんだ俺らの仲間内で翔さんはレジェンド的な扱いの人だし、結構盛り上がってたんだけどさ、通りの向こうから歩いて来た、明らかに半グレっぽい連中にたちまちピリついた。
半グレは俺や翔さんみてぇなワルと完全にタイプが違ぇ。奴等はほぼ反社だから、関わり合いにならない方が身の為だと、道を開けて傍観していたんだ。すると、物凄いスピードで突っ込んで来たチャリがいて、先頭を歩いていた半グレのリーダーらしい奴の足を轢き、植え込みに激突して止まった。
幸いチャリを運転していた奴に怪我は無かったらしいが、怒ったのは半グレだ。たちまちオラつき出して、やれ「顔貸せ」だの、「慰謝料払え」だのと因縁をつけ始めた。「あいつヤベ~な♭カード使われたりして根こそぎ持ってかれるぞ♭」
翔さんの連れが気の毒そうに呟くのを聞いて、俺もチャリの運転手を心配していたんだが、チャリの運転手がブルブルと震えながら、小さなウエストポーチの中から自分の財布を取り出し、「ご、ごめんなさい♭ブレーキが故障して…♭」と怒り心頭の半グレのリーダーを見上げた途端、まるで荒れ狂う波が一瞬で凪る様に半グレ連中は静かになったのさ。
それどころか足を轢かれた半グレのリーダーは差し出された財布を押し返し、自分のポケットから3万円を出してチャリの運転手に手渡すと、「この金で新しいチャリ買え!」と捨て台詞を残し、少しだけ足を引きずりつつ仲間を連れて俺達の眼前を通り過ぎて行った。
その時半グレ連中の話し声が耳に入って来たんだが、連中は「見逃していいのかよ?♭」「しょうがねぇだろ?♭あいつ見てっとウチのチャーミー思い出すんだよ♭チャーミーから金取れるか♭」「チャーミーってお前ん家のチビ猫だろ?確かにな~♭」なんて言っててさ、俺はその瞬間、ガキの頃に聞いたお袋の話を思い出した。
ライオンの檻に子猫を入れると、ライオンはその子猫を食わないで可愛がる様になるってあの話さ。諸説あるらしいが、俺はあながち嘘じゃねぇんじゃねぇかとそん時に確信したんだ。
奇跡だ!奇跡が起きた!気づいたら俺は走り出していて、ぽかんとして道端に座り込むチャリの運転手を抱き起こしていた。「おい大丈夫か?何処も怪我してねぇか?」
ジーパンのケツや膝についた埃をパンパン払ってそいつに聞くと、チャリの運転手は半グレから貰った3万を両手で握り締めたまま、「うん大丈夫。ありがとう」ってちょっとぎこちなく微笑った。
男…?だよな…?♭一瞬どっちか分からなかった。こいつから男の要素を感じるのは声だけだったからだ。小っちゃくて細っこくて、滅茶苦茶幼い顔立ちで…。何つ~か、そいつを見てるとつい撫で回したり飯食わしたりしたくなるような、面倒看たくなるような、まさに子猫って感じでさ。秒でドキュンと来ちまった訳。
だが、そう感じたのはどうやら俺だけじゃ無かったらしい。いつの間にか駆け寄って来た翔さんも、変形していたそいつのチャリを植え込みから引っ張り出してやりながらソッコーやられちまったみてぇでさ、「今から自転車屋行って新しいの買おうぜ。もし足りなきゃ俺がカンパしてやっから」なんて男気を出しまくってた。
考えてみたら俺も翔さんもそこそこ猛獣系だしな♭ライオンと子猫の図式に当てはまってるっつ~事か♭弱い生き物は見た目の愛くるしさで猛獣から身を守ってる…。納得だわ♭
それから俺と翔さんは、ファミレスも飲み会もやめて、そいつと一緒に自転車屋へと向かい、道すがらそいつの名前が大野智だって事だったり、『森のどんぐり』ってパン屋でバイトしている事だったりを聞いた。
驚いたのは智も風嵐高校の出身で、翔さんの1個先輩だった事だ。「何で気づかなかったんだ♭」っつって翔さんはえれぇ悔しがっていたが、俺は翔さんが学生時代に智に気づいたりしねぇでマジ良かったと思ってる。
そんな智との出会いから俺はちょくちょく『森のどんぐり』にパンを買いに行く様になった。俺が良く買っていたのは、玉子サンドとココアの揚げパンだ。智に聞くと翔さんもチョコレートデニッシュを時々買いに来るらしい。
最近風嵐高校の生徒が良く買いに来てくれる様になったって智は喜んでいたけど、多分俺が『森のどんぐり』をダチや後輩に宣伝しまくったおかげだと思う。移動販売車の事を智から聞いたのも『森のどんぐり』に通うようになって暫く経った頃だった。
それなら風嵐高校にも来てくれって頼んだのは俺だ。当時の店長は俺の頼みを快く引き受けてくれて、そん時は良い奴だと思ってた。智にセクハラしてるとんだクズ野郎だったって事を知るまではね…。
あれは移動販売が昼時に高校に来る様になって数日過ぎた頃だ。移動販売車を運転していたのは店長で、智と一緒に売りに来ていた。今の運転手の相葉とか言う爽やか系は、あん時未だ店番だったと思う。
お試しパンは『辛口焼きそばパン』じゃなく、中華まんの具みたいのがパン生地に入っている『チャイナボール』って名前の結構美味い惣菜パンで、割合良く売れていた。それでも中々完売までは行かないから、いつも少し余っていたんだ。
店頭で売られるパンじゃねぇし、余った分は多分持ち帰りになるんだろうなって俺は思っていて、それなら特別に売って貰えないもんかと、放課後『森のどんぐり』に行ってみた。
店には相葉がいて、智の姿が見えなかったもんだから俺はだいぶがっかりして、それで仕方なく相葉に、お試しパンの『チャイナボール』がもし売れ残っているようなら特別に売って貰えないかと頼んでみたのさ。
相葉は「店長に聞かないと分からない」って、まぁ当然っちゃ当然の事を答えたんだが、俺が風嵐高校の生徒だと分かったのか、急に声を潜めて、「風嵐高校のOBで長瀬さんって人知ってる?今3丁目でラーメン屋やってるんだけど…」と俺に聞いて来た。
『鬼麺組朱雀』にはしょっちゅう入り浸っていたし、長瀬さんは俺ら界隈の大先輩でもあるから、勿論知っていると答えたんだが、すると相葉は「なら丁度良かった。実は…」と、俺を店外に連れて行き、店長が智にセクハラしているらしい事実をこっそりと教えてくれた。
相葉の話だと、お試しパンが売れ残った時は作ったバイトの責任になるとか何とか、あれこれと理由をつけては営業後、店仕舞いを相葉に任せっきりで智を店長室に連れ込み、ネチネチと説教を垂れているらしい。
しかもお試しパンを智が作った時に限ってそれをやっているから、相葉も常々変だと思っていたそうだが、しがないバイトの身で店長相手に問い質す事も出来ない。
そこで良くない事だとは思いつつも、店の終わる頃を見計らって、いつも智が連れ込まれている奥の店長室にカメラ機能を作動させたままのスマホを、2人が映りそうな位置にこっそりと置いたらしい。
するとかなりはっきり店長と智の様子が撮れていたみてぇでな。店長は智に説教をしながら、「クビになったら困るだろう?」とか、「相葉君に迷惑掛けたくないだろう?」とか、まるで脅す様な事を言ってはベタベタと智を触り、挙げ句に「今夜は俺に付き合え」とか下心アリアリなゲスっぷりを発揮していたそうだ。
さすがに智も夜のお付き合いに関しては「どうしても抜けられない夜間バイトがある」って上手く断っていたらしいが、このままでは智が大変だと、相葉は店長の同級生で当時番長だった長瀬さんに相談して、店長へセクハラをやめる様に、長瀬さんから注意して貰いたいと考えていたそうだ。
あんのクソ店長め!!♭俺は超ムカついて、相葉に任せておけと請け負い、隠し撮りしたスマホ映像を俺のスマホへと送信して貰った。
俺はその日の内に『森のどんぐり』の親会社でもある大手食品会社のサイトを開き、『お客様ご意見窓口』にちゃんと本名を記入してから、店長の実名入りメールをセクハラ映像付きで送りつけてやった。
こう言っちゃ何だが俺の親父の運営する会社はかなりの巨大企業で、唯一はみ出した俺以外の兄弟はみんなそこそこ出世してる。こんな事でも無ぇ限り、親の威光を利用するなんざ金輪際ゴメンだが、その時ばかりは特別だ。智の役に立つならと、親父の会社を大いに利用させて貰ったぜ。
モチ効果はテキメン♪セクハラ店長は翌日にクビになり、逃げる様に町から出て行った。まぁ、あのセクハラ店長がクビになった経緯に俺が関わっていた事は今でも秘密だが、おかげで智は今も風嵐高校にパンを売りに来てくれているっつ~訳よ♪
2個目の『辛口焼きそばパン』をかじりつつ、智との馴れ初めを事細かくニノに説明してやりながら、俺は遠ざかって行く『どんぐりころころ』のメロディーを何処か得意気に聞いていた。
ここでやっと冒頭部分の『ライオンの檻に子猫』の話が意味を成す事になる訳ですが、このお話には諸説あるみたいで、必ずしもそうなる訳ではなさそうですね~(^^;)))多分『そんな事もたまにある』位の感覚で考えて頂ければ良いかと思います
因みに私の母K子はかつて30年強の長きに渡り、パン屋さんで働いておりましたので、今回作中に登場している『チャイナボール』なるパンは当時私の好きだったパンの名前を使わせて頂きました
まぁねぇ~本来半グレの足をチャリを轢いて許して貰えるなんてあり得ないんでしょうが、以前某所で観た『真夜中の嵐』って番組で、
若かりし日の大ちゃんがチャリで移動していた際に、怖いお兄さん達に絡まれて、何事もなく解放されてた時もありましたから、(今から思うと中々に怖い番組ですよね~)まさに『ライオンの檻に子猫』でございます