これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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潤に送り出され、向かいの洋館からよく見える道路添いの位置に、わざと佇んだ智ならぬサトコは、おもむろにスマホを取り出すと、何処かに電話を掛ける振りをした。そんなサトコにいち早く気付いたのは黒人のトンプソンである。

一体この男はどんだけ薪割りが好きなのか、今日も仲間らしき東洋人の男と二人して庭先で薪を割っていた。トンプソンはサトコの姿を見つけると、嬉しそうに白い歯を見せて、遠くから「ハロー!♪サトコ!!♪」と手を振っている。

それに答え、サトコも「ハーイ!♪」と手を振ってやると、トンプソンは今にも飛んで来るんじゃないかと思う程の満面の笑みを浮かべて益々大きく手を振り、一緒にいた東洋人らしき仲間に注意されていた。

その時、まるでタイミングを見計らったかの様に、軽い歩調で道路を渡って来たのは、ダークグレーの英国風トラッドスーツをお洒落に着こなした、目が覚める程にハンサムな外国人の男である。

サトコが1人で居れば、探りを入れる為に間違いなくアプローチを仕掛けて来るだろうと、わざと1人で出掛ける風を装ったのだ。恐らく先方はチャンス到来と思っただろうが、こちらとしてはまさしく狙い通りだった。

「Hello . nice to meet you ♪」男は物慣れた微笑みを浮かべ、サトコに挨拶をすると、サトコの「ソーリ。アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ」とぎこちなく詫びるのに被せる様に「心配ないデス。日本語、分かりますカラ」と優しく言った。

流石は現役スパイと言う所か、メヘッド・サーリムがこの男を探り役にあてがったのは、初日で交わした挨拶での、サトコの英語苦手感を加味した結果でもあったと言う訳だ。

「私ハ向かいに住んでイルorchestraのmemberデス♪Christian blessト言いマス♪クリスチャンと呼んで下サイ♪あなたはサトコさんデスネ?♪近くにとっテモ素敵な女性がいるト、私達の噂デスヨ♪」

オーケストラやメンバーを、まるで教科書の様な美しいキングズ・イングリッシュで発音したクリスチャンは、普通の女性であれば誰でもつい見蕩れてしまうであろう微笑と、洗練された仕草でサトコと握手を交わし、「あなたノhusbandはご一緒ジャないのデスカ?」と聞いた。

「部屋でビジネスよ。潤はインターネットビジネスをやっているので今はパソコンとにらめっこなの。山裾のショッピングモールに行きたいので、タクシーを呼ぼうかと思っていた所よ」

サトコが答えるとクリスチャンはやや大袈裟に「オー」とのけぞって、「それなら私にお任せ下サイ♪チョッと待って。just moment.」と言うと、すぐさま洋館のガレージに向かい、シルバーのベントレーを駆り出した。

ベントレーはサトコの眼前に停車し、左ハンドルの運転席から降り立ったクリスチャンは助手席のドアを開け、「ドウゾ♪」と大層紳士的に片手を差し出して、サトコに乗車を促した。「いいの?」サトコが聞くとクリスチャンは「勿論♪あなたの様なcuteな女性とdrive出来るなんてとても嬉しいデス♪」などと歯の浮くようなセリフを言った。

「サンキュー♪」サトコが小首を傾げてニッコリ微笑うと、クリスチャンは「oh…♪」と呟き、ちょっとはにかむ様な微笑みを見せる。その様子はさっきまでの芝居がかった優男振りとは確実に違った表情であった。

ほら釣れた…♪だから言ったじゃん…♪助手席に乗り込みつつ、サトコは心の中で小さくガッツポーズをした。

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その頃、『聖ヴィンセント学園』では、ちょっとした騒動が持ち上がっていた。下級生クラスの生徒が1人、1時限目の国語の授業の時にトイレへ行くと言って教室を出て行ってから帰って来ないと言うのだ。

教師達は全員1時限目の授業を自習にして学長のアレクセイ・ゴールドと共にその生徒を探し回っていたのだが、今はもう取り壊されている旧校舎のあった敷地の、古井戸の傍らで失神していた所を発見された。

保健室に運ばれたその生徒の体に外傷は無く、養護教諭の話では恐らく貧血の類いであろうと、診断されたのであるが、学長が詳しい事情を聞いた所、その生徒の話が実に奇妙な内容であった事から、学長は潜入捜査中の櫻井と相葉に相談を持ちかけたのである。

「『学園ミステリー』ですか?」櫻井の声に呼応した相葉が「アヒャヒャ♪それ俗に言う『学校の怪談』みたいな?」と尋ねた。

「そうデス、そうデス、この学園にもありマスよ。噂と言うノハいつの間にか都市伝説の様に生徒達に広がってイマスから、我が校の場合ハこの学園の名前にもなっている『聖ヴィンセントの亡霊』と言うモノです。

殺された宣教師の話は生徒ナラ誰でも知ってイマスから、学園創立当初から旧校舎の古井戸にはヴィンセント・ゴールドの亡霊が出ると言われて、生徒達がキモダメシをしたりしていたそうです。

今は空地になってイマスが、旧校舎には理科室などもありマシタので、『聖ヴィンセントの亡霊が自分を殺した村人達の子孫である日本人を恨んで…』などと言う怪談めいた話も広がり易かったのデスね。

だからなのでしょうか?失神していた生徒はトイレを済ませて教室へ帰る途中に、昔の宣教師の様な格好をした背の高い外国人を廊下の窓から見掛けた様な気がしたと言うのデスね。

何ともワンパクな子デスが、もしかして聖ヴィンセントの亡霊かも知れないと思ったソウで、その外国人を見掛けた辺りにこっそりと行ってみたところ、そこが丁度旧校舎のあった場所デ、古井戸がポツンと見えたそうデス。

これが夜ならもっと怖かったノカモ知れませんが、1時限の時デスから外も明るく、生徒は怖いもの見たさも手伝って古井戸を覗いてみたらしいのデスよ。すると井戸の底から生暖かい風がフワーっと吹いて来たらしく、その瞬間、大蛇の様な冷たくヌルヌルしたモノが首に巻き付いて来てそのまま…」

学長が話術も巧みに抑揚を付けて語るので、すっかりビビったアイバチャンは「怖えぇぇぇぇ~~♭」と言って肩をすくめた。だが、櫻井は無言のまま立ち尽くしており、その相眸は虚空を向いて固まっていた。

「アヒャヒャヒャ♪チーフ怖がり過ぎでしょ?」からかうアイバチャンを櫻井はやんわりと手で制し、「…学長さん。その古井戸はもう渇れているのでは?」と聞いた。

「ハイ、あの井戸は学園創立当初から渇れてイマスが、曾祖父のジェルマンが『あの古井戸は何があっても埋め立ててはいけない』と歴代学長に伝えていたソウで、そのままにしてあります。デスが、今回の様な事があると生徒達が危険デスから早急に塞いでしまおうかと考えてイマス」

どうやらこの学長は亡霊とか祟りなどよりも生徒達の安全を最優先にしたいらしい。立派な考えではあるが、塞ぐにしてもお祓いくらいはした方がいいんじゃないかとアイバチャンは学長に進言した。

「そうデスね。でもお祓いとなると神父さんにお願いするノカ、お坊さんにお願いするノカ、どちらが良いデスカ?」宣教師の亡霊なら神父さんだろうが、この学園は鎌倉大仏のお膝元である。とは言えミッションスクールなのだ。アイバチャンはすっかり悩んでしまって学長と二人で盛んに首を傾げている。

「いや、お祓いも井戸を塞ぐのも少し待って下さいませんか?」そう言って2人を止めたのは櫻井だった。本来怪談話が物凄く苦手なチーフなので、この櫻井の反応はアイバチャンには至極意外であった。

「学長さん。その古井戸、放課後に少し調べてみてもいいですか?」「えぇぇぇぇ?!♭♭」アイバチャンは腰を抜かす程驚いて櫻井を二度見するのであった。

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一方、クリスチャン・ブレスの運転でショッピングモールに到着したサトコは、本来の目的を誤魔化す為の、生活用品等の買い物を済ませ、運転してくれたお礼と称してショッピングモールの一角にあるカフェのテラス席でお茶を飲んでいた。

「『ミューズ・シンフォニー』?それじゃあ皆さんは演奏家の方なのね。この『Ka-Ma WH』の何処かで演奏会をされるのかしら?」カップとソーサを持ち、英国風の所作で紅茶を嗜むクリスチャン・ブレスを見つめ、サトコはホットチョコレートに時折口をつけながら、いきなり核心を突かぬよう世間話の様な会話を行っている。

クリスチャンの方は数時間のデートですっかりサトコに心を奪われたのか、完全に打ち解けた様子で大層気軽に何でも答えてくれた。

「ハイ。Halloweenの日に学校のfestivalで演奏会をシマス。ほら、私達の別荘カラも見えるデショ?山の上にあるいい感じのcastle。あの学校デスネ」「まぁ?あの素敵なお城みたいな建物って学校だったの?」

知っている癖にわざととぼけて驚きの表情を作るサトコを微塵も疑う様子もなく、クリスチャンは気安く誘いを掛けて来る。

「yes♪あれは学校ナンですよ♪あの学校はmission schoolデスからHalloweenにはfestivalを行いマス♪10ガツ29ニチカラ、31ニチマデ、3days続きマス♪

全寮制ナノですが、この3daysだけはparentやfriendを呼んで楽しみマスよ♪私達は31ニチのHalloween当日に体育館のdance partyで演奏シマス♪classicカラBEATLESマデ、沢山演奏シマスからサトコもいらっしゃい♪仮装partyだから楽しいデスよ♪」

成る程学園襲撃はハロウィーン当日か…。襟に飾った小型カメラ入りピンバッジの映像から潤も気付いたに違いない…。サトコは頭の片隅で潤がテロリスト襲撃の日取りを急いでメンバーに報告しているであろう事を考えながら、顔だけはいかにも嬉しそうな様子を装っていた。

「すごぉい♪とっても楽しそうね♪『ミューズ・シンフォニー』の皆さんも仮装をするの?♪」「勿論♪私はvampireのcostumeデスよ♪私達は皆色んなmonsterのcostumeで参加シマス♪サトコは可愛いprincessなんてどうデスか?♪サトコの首に噛みつきマス♪」

テロリストの一団はモンスターね…。じゃあハロウィーン当日はモンスターのコスプレをした外国人の集団を警戒すればいいわけか…。情報がどんどん入って来る。

サトコはなよやかに身をよじり、「まぁ♪それじゃあ噛みつかれないように魔女の仮装をして対抗しなくちゃね♪」と、可愛いジョークを飛ばした。

決行日は10月31日。襲撃するのは生徒達や招待客が一斉に集まる体育館のダンスパーティーの時…。それじゃあそろそろこのハンサムさんの本質に迫ってみるか…。

サトコがそう思い掛けた時、まるで神様のイタズラの様に1台の暴走車がテラス席に向かって突っ込んで来たのである。暴走車の進行先には小さな女の子と母親の席が…。

「危ない!!」咄嗟に叫んだサトコはテーブルに飛び乗り、まるで鳥の様にフワリと空を舞うと、一瞬で親子の席に着地し、2人を抱えて横っ飛びに避け、暴走車の追突から救い出した。

暴走車はそのまま親子が座っていたテーブルと椅子をふっ飛ばしながら、大きく迂回して街路樹にぶつかり、ようやく停止する。親子の無事を確認したサトコはすぐさま暴走車に駆け寄り、中で気絶する高齢ドライバーを車外に引き出した。

その間わずか1、2分程の事である。それはそれは実にあっばれな手際の良さであった。周囲の買い物客から拍手が起こる。

救われた幼い女の子は「お姉さんカッコいい!♪『美少女戦士プリティーセブン』みたい!♪」と流行りのアニメーションのタイトルを言って大きな瞳をキラキラさせた。

「サトコ…♭君は一体…♭♭」眼前で行われた救出劇に呆然とするクリスチャンの手を引き、急いでその場を走り去りながら、サトコは振り向きざまに「後で説明するね♪兎に角逃げろ♪」と、ウインクをした。

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今回はだいぶ急ぎましたよ~ウインクこのくらいサクサク進むと気持ちがいいですねぇ~ニヤリ

学長さんのセリフとクリスチャンのセリフを書き分ける為に、クリスチャンの方は名称を英語表記にして発音の良さを引き立てたのですが、字面で読むと何だかルー大柴さんみたいでちょっと面白くなっちゃいました笑い泣き

サトコの正体バレたじゃんアセアセと思われた方、安心してくださいOK決して悪いようにはならない徹底的ご都合主義物語ですからグラサン全然大丈夫ですよ~ウインクチョキ