これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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18

それぞれが、それぞれの想いを込めた満月の夜が訪れる。智は光沢のある白絹に大瑠璃揚羽と青い薔薇が染め抜かれた美しい着物を纏い、紅薔薇楼の表門で愛しい人の到来を待っていた。

始めは二宮の出鱈目話だった筈が、今宵の月は信じられない程大きく、時刻は真夜中の零時だと言うのに、街灯など無くても夜の道がはっきりと目に見える程に光を放ち、本当に太陽神の天照大御神と、月輪の神の月読命が出会う特別な夜の様に感じられた。

紅薔薇楼の櫻井と二宮、知念巡査と涼介は智に見つからない様に裏口からこっそりと外へ抜け出し、相葉公爵の自家用車で迎えに来ていた横山と共に、結婚式の準備を整えていた件の別荘へ、先に行って待つことにした。

月の光に照らされながら、表門で佇む智は白く透明で、そのまま月に吸い込まれて行ってしまいそうな程に綺麗に見え、その姿を見た知念巡査が「何だか光の中に溶けてっちゃいそうですねぇ…。月神様に連れて行かれなきゃいいけど…」と心配そうに呟き、櫻井が「あれは磨き過ぎたねぇ~♭神様が一目惚れしそうだ♭」と同意した。

「だからあれは私の創作ですって♭智さんはいいとして、何で事情を知ってる知念君や翔さんが月神様伝説を鵜呑みにしちゃってるんですか?♭大体智さんを連れて行くのは月神様じゃなくて松本さんでしょ?♭私達は一体どなたの結婚式に参加しようとしているんです?♭」

二宮はあくまでも現実的である。あつらえたての重ね扇の柄の着物が、夜目にも大層あでやかだった。運転席の横山が明るく微笑う。「まぁ、よろしおますがな。月の神さんがホンマにおったら連れて行かれるかも知らんて心配になる位、智君が綺麗に見えるっちゅー事ですやろ?一生に一度の晴れ舞台や、美しいに越したことあらしまへんやん」

その時、ランタンを照らした馬車が自家用車とすれ違って行った。まるで童話に出て来る様な純白の華麗な馬車である。馬車を引く二頭の馬も純白の白馬で、馬を操る御者も純白の背広と純白のシルクハットを身につけた仮面の男だった。

「あぁ、風間君や。ごくろーさん」横山が手を挙げると、馬車の御者も白い手袋の手を挙げる。どうやらあの馬車の中に松本が乗っているらしい。月光の下で見ると成る程、あたかも天から降りてきた様に感じるだろう。それくらい幻想的な光景に見える。

相葉公爵のそんな細かい演出に車内の一同は思わず感嘆の声を上げ、遠ざかって行く不思議な馬車を見送った。


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紅薔薇楼の表門を開け、山道の太い一本道をずっと見つめていた智は、不安で胸が張り裂けそうになっていた。明る過ぎる月明かりが一本道を随分遠くまで照らしていると言うのに、誰も歩いて来ないからだ。

どうしよう…おれ、月の神様に嫌われちゃったのかなぁ…。おれなんかじゃ月の神様は喜んでくれないのかも知れない…。思わず涙が溢(こぼ)れそうになるのをじっと我慢して、月を見上げる智の耳に、軽やかな蹄と車輪の音が微かに聞こえて来る。

「えっ…?♭」まるで外国のお伽噺の中にでも迷い込んだみたいな、それはそれは現実離れした風景であった。真っ白いキラキラした馬車が月光に光る道を軽快な調子でだんだんと近づいて来る。馬車を操っているのは金色の羽根飾りの仮面を着けた真っ白いシルクハットの真っ白い御者で、智には魔法使いのように見えた。

もう疑う余地はない。本当に月の神様が使者を寄越してくれたんだ…。智は両手を組み、月を見上げて何度も何度もお礼を言った。月の使者(智目線)が、紅薔薇楼の開かれた門をくぐり、智の眼前で停止する。馬車を引く白馬がブルルルと小さく嘶(いなな)いた。

月の使者が馬車の御者台を降り、「お待たせ致しました」とシルクハットを脱いで、丁寧に一礼する。その夢か現実が分からない様な光景に少しぽかんとしていた智の前で、御者が馬車の扉を開いた。

「…サトシ…。待たせたな…」「じゅん………!」こらえにこらえた涙がまるで堰を切った様に溢(あふ)れる。純白の夜会服に身を包み、前髪を緩く持ち上げたその人は、西洋の貴公子みたいに凛々しく美しい微笑みを浮かべ、「少し…痩せたか…?」と優しく言ってサトシを強く抱き締めた。

「帰って来たぞ…。そんなに泣くな…」「…だ…っ…て……おれな…んか…の為…に…死…ぬ…なん…て……」涙に濡れたサトシの頬を親指でそっと拭ってやりながら、天から降りてきたらしい松本がやんわりとサトシを叱る。

「『なんか』なんて…あんまり切ない事を言わないでくれ…。命よりも大切だから命懸けで守ったんだ…何が悪い…」「じゅん…おれ…で…いいの……?」「当然だ……」口づけを交わす二人に月の使者がさりげなく視線をそらす。だが、羽根の仮面に隠されたその瞳は嬉しそうに細められていた。

「さぁ行くぞ、サトシ。月の神様にずっと一緒だと誓わなくては…。結婚式だ。お前の母と雅暁公爵の様に…」「母ちゃんと…?」「そうだ。一緒に来るだろう?」「うん……!」松本に手を引かれ、馬車に乗り込んだサトシは夢見る様にその相眸を煌めかせた。

「生きていた時も格好良かったけど、一度神様の所に行くともっと格好良くなるんだな…。きっと天国の光がじゅんを照らしたんだ…」「俺がか?」松本は意外そうにサトシを見つめ、やがてその肩をしっかりと抱き寄せた。

「お前の方こそ…。相葉公爵が言っていたぞ。父上の雅暁公爵とお前の母が今夜みたいに結婚式を挙げた時、お前の母の友紀子さんはまるで本物のかぐや姫みたいだったと…。

お前はきっとその時の友紀子さんに似ているだろう…。少なくとも俺の目にはそう見える。だからもう二度と自分を卑下するな。分かったな?」「うん…分かった…」白い夜道を馬車が行く。月明かりは益々冴えざえとさんざめき、まるで二人の門出を祝福している様に眩い光輪を夜空に描いていた。


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「結婚おめでとう!!」式場に到着した二人を待っていたのは相葉公爵と横山、櫻井と二宮、知念巡査と涼介である。月の使者は式場に到着するとシルクハットと仮面を外し、元の風間に戻って、待ち受けていた一同と一緒に拍手を送った。

そこは別荘の居間を改装したとはとても思えない程で、まるで外国にある教会みたいに本格的な装飾が成され、模細工硝子(ステンドグラス)の円形の窓の前にしつらえられた祭壇に飾ってあるオブジェも、本物の御神体に見えた。

二宮の創作話をすっかり信じ込んでいた智に取ってこの状況は驚愕以外の何物でもなかったが、紅薔薇楼の薔薇を美しく束ねた花束(ブーケ)を相葉公爵から受け取った時に、公爵の口から事の次第を初めて説明され、一連の事柄が全て相葉公爵の作戦だった事を知った。

「みんなしてなんだよぉ♭知らなかったのおれだけじゃないか♭」口ではそう愚痴ってみたが、不思議と腹は立たなかった。それぞれが謝罪の言葉を智に送り、それぞれが二人を祝福する。

それが何よりも嬉しく、智はまた涙に濡れた。そんな智を松本が優しく抱き締める。「ほらほら智さん。折角磨いたのにそんなに泣いちゃまたおじさん顔になりますよ。でも、これからは一人で泣かなくても良くなりましたね」

二宮がちょっとした皮肉混じりに小粋な事を言う。ブーケから一本の薔薇を抜き、それを松本の胸ポケットに差し込んだ二宮は智の頭をポンポンとはたいて「大丈夫。今宵の涙はとっても綺麗ですよ」とニッコリした。

その光景に櫻井が瞳を潤ませ、知念巡査がもらい泣きをする。「じゅんざぢょおぉ~♭本当におめでどうございまずぅ~♭」「知念君。俺はもう巡査長じゃないぞ。これからは君が俺の代わりに頑張なくては」「はい~♭頑張りますぅ~♭」

そんな知念巡査の涙を、涼介がかいがいしく拭いているのが何とも微笑ましい。横山と風間は相葉公爵の左右に立ち、「これでもう心置きなく新しい仕事に打ち込めますね?御前様」と、主に問い掛けた。

「フフフ、今夜の式は随分と楽しい宴になりそうですね。翔さんは黒の燕尾服。知念さんは貸し衣装でしょうか?背広の寸法がいささか大きいですね。和さんの重ね扇の着物はちゃっかりとあつらえて、涼介は舞いの舞台衣装。やはり紅薔薇楼の人は華やかに見えますね」

相葉公爵は式に集合した皆の服装を穏やかに見聞しながら微笑みを浮かべている。そんな相葉公爵はいつもより華美に装飾された濃緑のフロックコートを身に纏い、いつもの如く西洋の王子様然と、そこで佇んでいた。

「おや?横山君は存外地味ですね?それでは風間君が浮いてしまうじゃないですか」相葉公爵は最後に横山へと視線を移し、彼の着た薄鼠色の三つ揃えではなく、風間の着た純白の背広を何気にからかっている。

「私の場合は役目上浮き世離れる必要がありましたから♭でも私の衣装をお選びになったのは御前様ですよ?♭」すまし顔の相葉公爵に風間が弱い抗議をする。公爵は「そうでしたねぇ」と微笑み、「同じ純白の夜会服でも松本さんとは随分と見映えが違って見えたものですから…」とさりげなく失礼な事を言った。

「ご覧なさい。何と麗しい恋人同士でしょうか?私は本当に嬉しい。松本さんはまさしく光の貴公子…。それに…今の義兄さんはまるであの日の友紀子さんそのものだ」相葉公爵の目には智の姿がとても眩しく、そして今までで一番幸せそうに映っていた。

「この先も末永くあの幸福そうな笑顔を見守っていたいものです…」公爵に雇われた神主がみことのりを詠み、二人は月神様を具象化した御神体の前で、永遠の愛を誓っている。

相葉公爵は沸き上がる感動にその優しげな眼差しを輝かせ、「運命の人ですか…。信じていれば必ず出逢えるものなんですね……」と感慨深そうに呟いた。式場の窓に映る大きな月を見つめながら、相葉公爵は参列者の拍手喝采を何処か心地よく聞いていた。




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智君がようやく幸せになれました~照れさて、結婚式も滞りなく進行しておりますし、次はやっぱり新婚初夜ですかね~ラブてことで次限定でっす(o^・^o)

今回の挿し絵は潤智再会の図でございます👨‍❤️‍💋‍👨潤君のタキシード、描いた時はもっと白かったのにアップしたら何故か薄紫になってしまいましたわ~(大滝汗アセアセ)このお話もいよいよラストスパートに差し掛かって参りました♪最後までどうぞよろしく~(^^)/