これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在の人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ。下差し

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サトシの家に初めて招かれてからと言うもの、松本巡査長は約束通り毎晩サトシの部屋へ赴き、寝ずの番で見張りを行っていた。

サトシはさすがに気の毒がって仮眠用の布団を敷いたりしてくれるのだが、松本は頑なに約束を守って玄関の前に座り込み、時折サトシの様子を確認しながら、物を書いたり、本を読んだりしながら、夜の時間を過ごした。

二人の間に特別艷めいた出来事は起こらなかったが、それでも毎日一緒にいる事で、親しみや情も沸いて来るもので、両者の間では次第に互いを思いやる信頼関係が築かれて行った。

「ええっ?!♭毎晩家に行って一晩中一緒にいるのに何もないんですか?!♭ただの一度も?!♭」支配人室の長椅子に腰掛けたままで大袈裟にのけぞる二宮に、松本巡査長は思わず苦笑する。

「おかしいなぁ~♭おかしいですよ♭普通に真面目な松本さんはこの際置いといて、あの智さんが松本さんに手を出さないなんてねぇ~♭

私はてっきり松本さんは智さんの好みだと思っていたんですが、誘う素振りも見せないとなると、これはいよいよ智さんに何か心境の変化が起こったとしか…」

頻りに首を傾げる二宮に、櫻井支配人がすかさず嗜めた。「和(かず)♭お前さんさっきから、何を言っているんだ♭松本さんは智君の身を案じて悪漢から守ってくださっているだけだぞ。

智君だってそれを分かっているから、自宅に松本さんを招いているんだよ。あの人は本来自分の家に他人を入れないんだから、松本さんの事を余程信用しているに違いない。

お前さんは何かにつけて智君を好色な男好きの様に言うが、春先の猫じゃあるまいし、のべつまくなしに発情している訳ではないんだ。松本さんにその気がないのに智君だって誘ったりしやしないさ。そうですよね?松本さん」

もはやどう答えればいいのかも分からない♭ひたすら苦笑する松本に、二宮が畳み掛ける様に言った。

「そんな事言ったって翔さん。あの人近頃ちっともお客を取らなくなったんですよ。私が折角羽振りの良さそうな二枚目を紹介しようとしても「体調が良くない」だとか、「そんな気分じゃない」とか言ってあっさり断っちゃうんですから。こっちは商売あがったりですよ」

二宮は不服そうだが、櫻井は至極上機嫌だ。「結構な事じゃないか。そもそももう客取りの年齢は過ぎているんだ。これで智君にもやっと大人の分別と言うものが身に付いて来たと言う事だな。御前様もきっと御安心されるだろう」

その事については松本も二宮の話を聞いて随分ホッとしたのだ。何処かしら投げやりにお客との 性 戯 を楽しんでいたサトシがお客を取らなくなったのは、実にいい傾向である。

身体だけが高ぶる心のない 性 戯 など、サトシに取っては虚しいだけであろう。そんな自分を追い詰める様な真似を、サトシにはなるだけさせたくなかった。

淫 気 を沸かせるのは好きな相手にだけで十分だ。気分が乗らないのは、サトシの気持ちが落ち着いて来た証だと嬉しく思った。松本の存在がその手助けになっているのならサトシを見守る甲斐もあろうと言うものである。

誤解をされると話がややこしくなるので、あえて口にはしない松本だったが、サトシと二人で過ごす就寝までのひとときが、近頃本当に楽しくて、心地よくて、少し戸惑っていた。

今まで仕事一筋に片意地張って生きてきた堅物の松本に取って、サトシの持つ柔軟な雰囲気や、その端々に覗く何とも言えない愛くるしさは癒しそのものである。

先程櫻井はサトシの事を猫だと表したが、本当にサトシは猫の様な青年だと思う。ふわふわと柔らかく、のびのびと気まぐれで、そのくせ時折可愛らしい甘え上手な一面も見せる。

正直松本はそんなサトシを憎からず思っていた。この感情が色恋に通じるかどうかは不明だが、サトシと居るとまるで少年の頃に戻った様な、懐かしくも幸せな心持ちになるのは事実である。

それにしても…。サトシの警護を知念巡査に任せ、少しばかりの仮眠を取っていた松本を無理矢理に叩き起こし、支配人室に呼びつけた割にはさして重大な話はされていない♭

櫻井にしても二宮にしても一体松本に何の用事があったのか、ちっとも要領を得なかった。つい欠伸をしてしまう松本に、たった今気付いたかの様な物言いで二宮がわざとらしく「そうそう!」と、手を打った。

「翔さん。そんな事言ってる場合じゃないですよ。御前様がおいでになる旨を松本さんにお伝えしておかないと。その為に来て貰ったんでしょうに。そう話が横道に反れてばかりじゃ困りますよ」「話を横道にばかり反らすのはお前じゃないか♭」「あら私?そうでしたっけ?」

本当にとぼけている♭櫻井は脱力した様に肩を落とし、小さな溜め息をついてから松本に言った。「明日の昼過ぎに御前様がこの紅薔薇楼へお越しになるんですよ。一応視察と言う名目ですが、智君の様子を確認するのが、本来の目的だと思われます。御前様は松本さんに是非お話を聞きたいと仰せなので、謁見に応じて下さいね」

長椅子から立ち上がった櫻井は向かいに腰掛ける松本に近づいて来ると、その両肩をポンと叩いて背後から釘を刺した。「いつも通りでお願いしますよ松本さん。余計な事は言う必要はありません。普段の貴方の様に、聞かれた事に対して実直に答えて下さればいいですから」

詰まり口答えはするなと言う事であろう。だが、松本には思うところがあり、もし今後相葉公爵に会う機会があるのなら思いきって話してみようかと考えていた。

櫻井はああ言うが、相葉公爵が真実、サトシの事を考えているのであれば、きっと耳を傾けてくれるに違いない。とは言え一介の小役人ごときが本来介入するような事柄ではないので、公爵が気分を害される危惧は多分にあった。

さぁ…吉と出るか凶と出るか…♭櫻井の忠告を軽く受け流しながら、松本は未だ会った事もない相葉公爵の人となりを頭の中で想像していた。


**


そして翌日。サトシを仕事に送り出した松本は、相葉公爵の正午訪問に会わせて仮眠を取り、支配人室に赴いた。

支配人室では櫻井と二宮がすでに待ち構えており、いつもの様に警官の制服をビッシリと着込んだ松本の禁欲的な姿を見て満足そうに頷いた。

「おはようございます松本さん。流石に時間ピッタリですね」櫻井の声掛けに松本は「勿論です」と答え、二人の少し後方に控えると、紅薔薇楼の表門に向かって行った。

三人で表門の内側に並び、公爵の訪問を待っていると、見事な程の正確さで通りの向こうから黒塗りの自家用車(クラッシックカー)がゆっくりと進んで来る様子が見えた。

当時は高級官僚や本物の資産家しか持てなかった自家用車である。松本は心密かに、やはりお持ちなのだな…と思い、次第に近づいて来る自家用車に視線を向けた。

滑り込む様に門の中へと進んで来た自家用車が、頭を垂れる三人の前で静かに停車する。始めに運転席から従者らしい若い男が降り、三人に一礼してから後方に回り込み扉を開けた。

「風間君ありがとう」穏やかに従者を労い、自家用車から降りて来たのは、驚く程に貴族らしい青年であった。

鴨之羽色(かものはいろ)の艶々した金釦付きのフロックコートに白いズボン。膝まであるロングブーツを穿き、ふさふさしたリボンタイが結ばれた薄緑色のシャツを着ている。

まるで西洋の皇太子の様なそのいでたちに松本は少し唖然としてこの紅薔薇楼の創設者、相葉雅紀公爵を見つめた。背の高い、すらりとした体躯の男である。松本が想像していた人物とはだいぶかけ離れた印象の、繊細そうな細面の青年だった。

「翔さん、和さん、ご無沙汰していました」声質も静やかで優しげである。この男が泣く子も黙る影の実力者だとは松本には至極意外であった。

相葉公爵は櫻井や二宮の少し後方で控えめに佇む松本巡査長に目をやると、「貴方が噂の松本さんですね?」と聞き、大層紳士的な仕草で右手を差し出した。

「初めまして。相葉です。いつも櫻井や二宮がお世話になっております」「いえ、こちらこそ。紅薔薇楼の皆さんには部下共々良くして頂き、感謝しております」相葉公爵と握手を交わしながら、丁寧に挨拶をする松本に、相葉公爵は納得したのか二、三度頷いた。

相葉公爵は風間と呼ばれた従者を従え、紅薔薇楼内を一通り視察して回ると、櫻井や二宮に促されるまま、支配人室を訪れた。その時に松本は初めて気付いたのだ。支配人室にある本棚の奥に、隠された部屋があった事を。

それはまるで昔のからくり屋敷の様に、本棚を横滑りに押すと現れる隠し扉で、『貴賓室』と書かれてあった。そこはこの紅薔薇楼にあるどの部屋よりも贅を凝らした場所で、絵画や石膏像等が飾られ、長椅子も、円卓も、絨毯も、完全に西洋風であった。

そこで松本巡査長は相葉公爵と長椅子に差し向かいで相対峙していたのである。従者の風間は公爵の後ろに、櫻井と二宮は松本の後ろにそれぞれ控えていた。

「さて、松本さん。貴方とこうしてお話をするのは他でもない。智義兄さんの事です。失礼ながら、貴方の経歴は調べさせて頂きました。実に申し分のない清廉潔白な経歴です。

今は未だ巡査長だが、貴方はいずれ東京警視庁にはなくてはならない存在となるでしょう。だからこそいささか心配なのですよ。例えば…例えばですよ?

貴方はいつか出世すると分かっていても、智義兄さんの為に今の仕事を捨ててしまえる覚悟があるのか…とね…。私は遠回りな言い方が好きではない。ですから、単刀直入にお尋ねします。

松本さん。これは憶測ではなく確実な事です。貴方が現在、智義兄さんの事をどう思って守ってくださっているのかは知らないが、あの人と一緒に居るといずれ貴方は出世の道から外れる事になる。

何故だかはお分かりですね?智義兄さんはこの紅薔薇楼でしか生きられない人だからです。言うなれば私は智義兄さんが世間から後ろ指指される事なく、堂々と生きていける場所を作った。

智義兄さんに寄り添うと言う事は貴方ご自身もこの紅薔薇楼で生きて頂く他はないのですよ。貴方にそれほどの覚悟がおありになるとは、今の段階ではとても思えない。ならば、智義兄さんが傷つく前に貴方の気持ちをはっきりさせて頂きたいのです」

有無を言わさぬ強い口調であった。どうやら優しげな外見に惑わされてはいけないらしいと松本はここに来てはっきりと自覚した。言い訳めいたおためごかしなど、この男には直ぐに見抜かれてしまうだろう。ならば…。松本は確(しっか)りと相葉公爵を見据え、いきなり口火を切った。遠慮をしている場合ではない。

「恐れながら申し上げよう。確かに貴方の仰る様に、サトシの存在は世間では容易く受け入れて貰えないかも知れない。

それはこの紅薔薇楼が、世間の認識では資産家相手の高級遊郭だとされているからです。サトシの特殊な身体の事をおもんばかり、貴方がここを遊郭とした経緯は理解出来る。

だが、ここが遊郭だと言う世間の認識が変わって行かない事には、世間の白い目は永遠にここで働く若者達に注がれる事になります。ここの若者達は皆礼儀正しく、気品があるが、それはこの場所に来なくては分からない事です。

だが、ここは世間の人々が容易く来られる場所ではない。確かにこの紅薔薇楼は贅を尽くした素晴らしい場所です。景観も環境も随一と言ってもいいでしょう。だが、それでも遊郭は遊郭。それが世の中の認識です」

従者の風間が「無礼な…!」と、気色ばむ。櫻井と二宮が顔色を変え、慌てて松本を黙らせようと声をあげるが、相葉公爵はそれを静かに制し、「聞きましょう」と言った。

「ありがとうございます。私は商売などは素人ですから、経営についてとやかく言える立場にありません。それを承知で貴方に申し上げたいのです。ここを遊郭ではなく、劇場と言う形には出来ないものかと…。

サトシを始め、ここで働く若者達の芸事の才能は歌舞伎や歌劇に決して引けは取らない程です。身体ではなく芸を売る人としてその才を育成し、発表する場所としてこの紅薔薇楼を活かせないでしょうか?

私はサトシに言いました。お前がいずれ芸事で名人と呼ばれる様になれば、お前を蔑む者など居なくなると…。それはサトシだけではなく、ここで働くどの若者にも言える事だと思います。

資産家ばかりを相手にした閉鎖的な遊郭ではなく、芝居や踊り、楽器演奏や歌劇など、あらゆる分野の芸事でお客をもてなす大劇場としてこの紅薔薇楼を活用していけば、世間の目は自然と変わっていくのではないでしょうか?

私はごく一般的な警官です。だからあくまでも一般的な目線で話をさせて頂いている。庭の薔薇園も、周囲の風景も、そしてこの贅を尽くした建物も、何より若者達の舞台演出そのものが、金持ち相手の単なる道楽として終わらせてしまうのはあまりに惜しい。

私はね、サトシやここの若者達がここの本質を知らない世間の人々に口汚い言葉で蔑まれるのが許せないんですよ。

だが、世間は広く、あまりに無知だ。遊郭で働いていると言うだけで差別して、見下すんです。それはこの紅薔薇楼が資産家しか相手にしていないごく閉鎖的な場所だからです。私はその現状を貴方に変えて頂きたい。これはここを設立した相葉公爵、貴方にしか出来ない事だ」

怖じける様子もなく、はっきりと己が考えを伝える松本巡査長に、相葉公爵は深く俯き、大きな息を吐いた。「まさか警察の方にこれ程先々の展望を見る事が出来る人物が存在しているとは…」

「ご、御前様…?♭」顔色を伺う様に、櫻井と二宮がおずおずと声を掛ける。松本がそんな二人を庇い、「これはあくまでも私の個人的な意見ですから」と付け足した。

「…では、松本さん。私がそれを前向きに検討すれば貴方にもお手伝い頂けますか?もし私が今すぐ警察を辞め、紅薔薇楼を変える事業に幹部として参加して欲しいと申し出れば貴方はそれを受けて下さるのですか?」

「勿論。貴方が本気で着手して下さるのであれば、私は貴方が最も大切にする貴方のお義兄さんの側に寄り添い、紅薔薇楼の今後を見守って行く覚悟はあるつもりです」「…命…掛けられますか…?」「私ごときの命で良いのなら…」

相葉公爵の口角が満足気に上がる。松本の背後にいる二宮と櫻井が声を出さずに両手の人差し指を交差させて駄目駄目と首を振った。

「…翔さん。いい人を見つけてくださいましたね。それでは早速貴方には死んで頂く事に致しましょう」「何ですって?!♭」

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恐ろしい事になって参りましたガーン今回も文章が長くなりましたので挿し絵を入れずに行きたいと思います。相葉公爵は一体何を考えているのでしょう?今後の展開に注目です(^^)d