これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在の人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので、苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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松本巡査長と知念巡査の『紅薔薇楼』での常駐警察の勤務は驚く程簡単に決まった。東京警視庁第一部第一課では、本部長が恵比寿顔で出勤して来た松本と知念に「でかしたぞ!」と褒めちぎり、設立されたばかりの『紅薔薇楼特別派出所』へと辞令を出した。

何と言っても名士ばかりが集う最高級歓楽所からの指名である。てっきりその筋からの厳しい咎めを受けると戦々恐々だった本部長は、やれ棚からぼたもちだの、瓢箪から駒だのと、大いに喜んで二人を送り出してくれた。

『紅薔薇楼』では流石の仕事の速さとでも言うか、松本が初めて訪れた後のほんの一月程で、玄関口の事務室を大層立派な『紅薔薇楼特別派出所』へと改装し、すっかり準備を整えていた。

元々は交替制と言う話だったが、男の子達が居住している寮(とは言え松本や知念の住まう警察官舎よりいい部屋だったが)に空き部屋もあり、二人は住み込みで勤務する事になった。

住めば都とは良く言ったもので、『紅薔薇楼』での常駐警察官生活も、慣れればなかなかに快適なものだった。

多少の小競り合いはあるものの、特別大きな揉め事が起こるでなく、殆どが紅薔薇楼内の見廻りと、玄関口での警護や雑用等の簡単な仕事ばかりで、のんびりと過ごせた。

働いている男の子達はみんなそれなりに教育が行き届いていて礼儀正しく、時々派出所を訪れては他愛のないお喋りをしたり、客から貰った珍しいお菓子や飲み物を差し入れしてくれたりするので、知念巡査などは「一生ここで働いていたい」と毎日楽しげである。

だが、松本巡査長は知念巡査程この生活を謳歌している訳ではなかった。言うまでもなくサトシの事である。石楠花の間で初めて顔を合わせてからと言うもの、松本はサトシに対し、何故か不可解な危機感に捕らわれる様になってしまったのだ。

この感情をどう表現すればいいのかさっぱり分からないのだが、兎に角このままではいけない様な気がするのである。自由奔放そうに見えてその実、放って置くと自ら破滅していきそうな、サトシにはそんな危うさがあるように思えてならないのだ。

なので、松本は極力サトシから目を離さぬ様に努めていた。特に親しく話したりする訳ではない。だが、見廻り警護の時も、櫻井や二宮の手伝いに駆り出される雑用中も、松本はなるだけサトシの動向に目を光らせていた。

サトシと会話をしている客人あらば、櫻井か二宮に必ず身元を尋ね、無防備に歩いていれば何処に行くのか行き先を確認してから自分の職務に戻ったりして、いつの間にか櫻井からは「松本さんはまるで智君専用の護衛官のようだな」などと、からかわれたりするようになった。

だが、智の身体の秘密を知ってしまった以上、いつなんどき、どのような危機に見舞われるか分からない。

それがサトシに取っての危機なのか、サトシと寝た男に取っての危機なのか、あるいは両方か、いずれにせよ松本にはサトシを取り巻くあらゆる危機を回避させるべく責務があると、そんな風に感じていた。

そんなある日の事、松本がいつもの様に『紅薔薇楼』内を見廻り警護していた時である。揚羽蝶が描かれた派手な羽織を翻しながら、ダンスホールの方へ歩いて行くサトシの姿を見掛けた。

松本はすかさず後を追い、サトシを捕まえると、ぶっきらぼうに「サトシ、何処へ行くんだ?」と尋ねた。

「またあんたか…。おれが何処へ行こうが勝手だろ?何でいちいちあんたに報告しなきゃいけないんだよ」面倒臭そうに答えるサトシに、松本はまるで容疑者にでも接しているような硬い顔つきで杓子定規に言った。

「決まっている。お前は危険だからだ。俺にはここで働く全ての青年達や客人を警護する責任があるからな。特にお前は要注意人物だ」「おれが?お客さん達はみんな可愛いって言ってくれるけどね」

嘲る様にクスクスと微笑うサトシに、松本は顔色一つ変えるでもなく、「斑目少尉や鳥飼子爵もか?」と詰問する。

「ああ、その話なら翔くんから聞いた。元々あんたはその事をおれに話したかったんだよな?話してやってもいいよ。但し、あんたの今日の日給、全部ぶっ飛ぶけどね。おれ、高いからさ」

サトシはなだめる様に松本の肩をポンポンと軽く叩き、その耳元に唇を寄せた。何の香りだろうか?花と果実の混じった様な甘い匂いがした。「今から支度して舞台に上がるんだよ。特別にあんたにも見せてやるから、このダンスホールの隅っこででもせいぜい見張りなよ」

サトシが離れ、ダンスホールの角にある控え室に入って行く。「全く…♭」サトシの背中を見つめ、小さくため息をつく松本に、集金を終えたらしい二宮がさも愉快気に近づいて来た。

「あらら面白い♪智さんはどうやら松本さんを気に入っている様だ♪」「とてもそうは思えない♭部下の知念に対してはもっと優しいが、俺には楯突いてばかりだぞ♭いつだっていいようにあしらわれて、まるで掴み所がない♭」

唇をへの字に曲げてむっつりする松本を、二宮は片手で口元を押さえつつ、くつくつと含み笑いを漏らした。

「だから私が言ったじゃないですか。あの人は好みじゃなければ、はなも引っ掻けないんですよ。でも松本さんに対してはよく構っているじゃありませんか?それもお客に接する表向きの顔ではなくてね。

私ね、思っているんですが、智さんが未だにお客を取っているのってもしかしたらお母さんの事があるからじゃないんでしょうか?松本さんも翔さんから友紀子さんの話、お聞きになったでしょ?

決して長い生涯ではなかったですが、友紀子さんの一生を通してあの人の稀有な身体ではなく友紀子さんを一人の女性として心から慈しみ、愛してくれた男は智さんの父親だった舞台役者の大野鷹智(おおのたかとも)さんと、相葉雅暁公爵だけだった。

もしかしたら、智さんもそんな相手を探しているんじゃないでしょうか?確かにあの人の、母親譲りの春水船の身体は男を虜にします。

松本さんが問題にしていた斑目少尉も鳥飼子爵もそんな男の一人でしょう。彼らがもし、智さんの身体ではなく、智さん自身を愛してくれていたのなら、あのような物狂いにはならなかった筈です。

あの人達はね、松本さん。智さんを独占したかったんですよ。愛情からではない、あの人の身体が、男を虜にして止まない春水船の身体が欲しかっただけなんです。そう言うのって分かるんですよ、私達の様な商売をしているとね」

二宮は遠い目をして、控え室の方向に視線を向けると、真剣な声音で言った。「ねぇ、松本さん。「愛している」って言葉を始めに疑わなくてはならない人の気持ちってどんなだと思います…?

特別男色家と言う訳でもないのに、智さんの相手は女では駄目なんですよ。それだけでも悲劇なのに、春水船の身体ですからね、誰でもいいと言う訳にはいかない。相手を狂わせてしまうからです。

翔さんはこの『紅薔薇楼』を智さんに取っての牢獄だと言ったが、私はそうは思いません。智さんが、智さんらしく生きられる唯一の場所…。それが『紅薔薇楼』なんです」

二宮の言い分は松本にも痛い程に良く理解が出来る。例えどんなに格が違おうと、世間では男娼など、蔑みの対象でしかないであろう。

なのに、サトシが母から受け継いだ極上の 肉 体 は、肌 を重ねた相手を 性 欲 に囚われた偏執狂に変えてしまう。「愛している」と言う言葉を疑わなくてはならない気持ち…か…。痛い所を突かれた気がした。

「ですからね、松本さん。あなたは智さんにしてみれば今までに出会った事のない、実に興味深い人なんですよ。だって、智さんに接する時、にこりともしないでしょう?

いつだってしかつめらしくて偉そうで…。なのに、誰よりも智さんの事を案じているように何やかやと世話を焼きたがる。ましてや下心なんて皆無でね。

その点、知念巡査は物凄く分かり易く智さんに懸想しているじゃないですか?言うなれば知念巡査の反応が智さんには当たり前で、だからこそ愛想も振り撒く訳ですよ。

でもあなたは違う。智さんの身体の秘密を知った上で、それでもあんな風に智さんに対して鉄面皮になれる人はそうそういませんからね。

しかもあなた、智さんより年下でしょう?年下の若い男に、お色気要素零度でああも冷静に扱われる事なんて智さんにしてみりゃ初体験ですから、あなたに興味があるんですよ」

二宮はもう一度くつくつと含み笑いを漏らして「まぁ、何かとご面倒かも知れませんが、これからも智さんのお相手をしてやって下さいな。今から御覧になる智さんの舞台はなかなかの見ものですよ」と、言い置いてから舞台裏の方へ歩き去って行った。

いつの間にか広いダンスホールは大勢の見物客で一杯になろうとしている。どうやら智の出演する出し物は本当に人気があるらしい。松本は少し感心して、今は未だ緞帳が降りている舞台をじっと眺めた。

舞台の片隅に美しい筆文字で『仮面遊戯』と演目が書かれている。見物客の会話に耳を傾けると、この演目は智の十八番(おはこ)で中国の『変面』なる伝統芸能を元に創作された演舞であるらしい。

三味線を抱えた二宮が神妙な顔つきで、舞台の袖に座る。さっきまでペラペラと喋っていた人物とはとても思えない程にその様子は凛として風雅であった。見物客から大きな拍手が沸き上がる。

「よーーお」ベンベンベンベン!見事な拍子で三味線が掻き鳴らされ、緞帳がゆっくりと上がって行った。

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ここ数日体調がどうもおもわしくなかったものですからアセアセ更新が少し遅れてしまい、申し訳ありませんでしたm(._.)m

今回は挿し絵を描く気力もなくチーン文字だけの更新となりますが、どうぞお許しくださいまし~(/≧◇≦\)その代わりと言っては何ですが♭次回は華やかな挿し絵ををご用意する予定になっておりますキラキラ

ちなみに智君の演じる舞台のイメージは勿論ジャポコンDVDの『マスク』のショーから発想しておりますウインク