これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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弐拾参之巻


───── 火烏(かう)と言うのは黒い羽(金色と言う説もあり)の三本足の烏で、太陽に棲んでいるらしい(黒い羽は太陽の黒点を表している)。また天帝の使徒でもあり、天帝は十羽の火烏を天により近い扶桑(ふそう)の巨木の上で飼育しているそうな。因みに日本の八咫烏(やたがらす)はこの火烏の伝説が元になっているとも伝えられている ─────



大和の国の征服を目論む金妖帝飛が仕掛けるであろう次の一手は、五人の妖術師達が守護するそれぞれの国に最強の刺客を放ち、五人を分散して戦わせる事だ。老練した術師と違い、未だ歳若い五名が単独で戦うと、些か未熟な部分があると言う事を分かっての作戦である。


その事に気付いた尸解仙人(しかいせんにん)と妖怪一の知恵者白澤(はくたく)は、確実に金妖帝飛を倒せる筈の新奥義、乾坤大覇浄(けんこんだいはじょう)が天門の両名により編み出される短時間の間に他の三名の妖術師達を鍛え直すべく、教示役を準備してそれぞれを魔道の駿馬である獅子馬(ししうま)に乗せ、あちこちに放ったのだった。


さて、先ずは大和国の東側、東国(あずまのくに)の南方にある炎赤の国(えんせきのくに)の守護神である炎の妖術の使い手、櫻井朱雀之守翔(さくらいすざくのかみしょう)である。彼が辿り着いたのは見た事もない大きさの巨大な扶桑の大樹だった。


否、大樹と言うよりもほぼ建物に近い聳え方であった。目測でも外周は十町(約660メートル(これ東京ドームの外周です☆))くらいはあるだろうか、遠目からでも確認出来るのだから、出発点の尸解道院寺からはかなり遠方の場所にこの扶桑の大樹が生えている事になる。恐らく獅子馬で無くば数日は費やしたであろう道筋に違いない。


「これは見事だ…♭」横幅も天辺も一体何処まで続くのか分かり兼ねる、まるで樹木の城壁の様なその扶桑の大樹を見上げつつ、翔は湧き上がる不安を抑えきれずにいた。高所は大の苦手なのだ。この巨木の頂点で訓練をするなどゾッと縮み上がる思いがする。


「待ってたぞ!櫻井朱雀之守翔!尸解仙人の要望にて天帝の命を受けまかりこした。俺は八咫(やた)。大和国の担当だ!」そんな声と共に上空から舞い降りて来たのは、まるで翼の様な漆黒の羽衣を纏った、金色の蓬髪の若者だった。


真っ黒な着物は翔の仲間でもある大野玄武之守智(おおのげんぶのかみさとし)の様だが、彼のそれは僧衣ではなく、全体的にひらひらとした、まるで天女みたいな変わった意匠の着物である。


中性的な顔立ちは白く端正で、金色の髪と相まって何だか異国人の少年の如く、年齢不詳な不思議な雰囲気があった。「八咫…?まさか八咫烏陰陽道(やたがらすおんみょうどう)の加茂一族と何か関係が…?♭」翔は息を呑み、眼前に舞い降りた若者を凝視する。


八咫烏陰陽道とは裏皇帝とも呼ばれ、都を守護する最高峰の妖術師、安倍晴明の師匠筋に当たる正体不明な伝説の秘密結社だ。日本神話の時代から脈々と受け継がれて来た一族らしいが、もしそうなら翔は伝説の正体を目撃した事になる。


「おおっ!尸解仙人から朱雀之守は博識だと聞いていたが流石だな。関係も何も八咫烏陰陽道は神代の時代に俺が組織したものだ。俺が大和国の担当になった時、国の秩序を守る為に加茂一族の長を導いて組織した団体だったんだが、何だかんだ変容しつつ今もまだ安倍晴明のおかげで機能している。


詰まり、安倍晴明は俺の弟子みたいなものよ。ならば安倍晴明が東国を守護する為に集めたお前達五行魔道士は俺の弟子の弟子の弟子の弟子の…兎に角そんくらい若輩者の弟子って事だ」八咫はそう言って胸を張ったが、見た目が少年めいているせいか、ちっとも説得力がない。


「あ?今そんなに凄いなら大和国の危機を助けてくれればいいのにとか思ったろ?言っとくけど俺はあくまでも天帝直属の使徒だからな。天帝の命令も無く勝手な行動は出来ないし、何より俺は神でも仏でもなくただの八咫。

 

詰まり単なる道案内人に過ぎず人に祈られる存在とは立場が大きく違う。故に神や仏にはなれないし、神仏を差し置いて人助けなんて以ての外。あくまでも人を導くだけの遣い走りで影の存在なのさ。


まぁ、後の世になってからどっかの殊勝な人間が俺を守り神に祀り上げる事なんかがあれば、俺も神獣界の仲間入りが出来るかもだけどな。今は未だただの八咫で、お前を今より強い術士になれる様導くのが天帝から命じられた俺の役目って訳。分かった?」


成る程。言いたい事は何となく理解が出来た。いつの頃からか翔にも良く分からないが、きっと八咫は大和の国の創世記から神でも仏でもなく、あくまでも影の存在として人々を導く水先案内人としての役割を全うして来た生粋の使徒なのであろう。


いささか態度がデカイのは気になるが、この唐の魔道で、大和の国と深く関わる天帝に近しい存在の妖(あやかし)に会えたのも何かの縁(えにし)だろうと、翔は包拳の挨拶で恭しく八咫に一礼をした。


「心得ました。八咫殿。この若輩者に良き教示をお願い致します」翔の言葉を聞いた八咫は満足そうに頷くと、たちまち艶々とした漆黒の翼を持つ烏(からす)に姿を変え、地面をピョンピョンと楽しげに跳ねた。


普通の烏に比べて一回りほど大きく、足も三本生えているが、見た目は紛れもない烏であり、あまり妖っぽい要素は見受けられぬ。その姿を見た翔はここで初めて八咫が火烏と呼ばれる妖(あやかし)だと気づいた。


火烏と言えば三首人の村長から相葉緑龍之守雅紀(あいばりょくりゅうのかみまさき)が貰った翳形草(えいけいそう)の扇を思い出す。確か翳形草は天に棲む火烏が落とした種から生えた草だった筈。八咫が先程から天帝の使徒だと威張っていたのも道理であった。


八咫は烏の姿で翔の肩にピョコンと飛び乗り、「んじゃ早速行こうか?あ"、獅子馬はここで待たせときゃいいよ。ここには草原もあるし、天敵もいないからね」と、人の声で喋り、翔は素直にその言葉に従った。


「何処に参りますか?」「なぁに心配いらないって。目ぇ瞑ってたら一瞬で着くよ」八咫に導かれるままに目を閉じた翔は、自分の頭上高くでカァーーー!と一声上げる烏の鳴き声を聞いた。すると急にフワリと身体の浮くような感覚を受け、気付いた時は皮膚が凍りつく程の冷たい空気が翔の周囲を取り囲んだのである。


「えっ?!♭」ついさっきまで扶桑の巨木の下で長閑な風を感じていたのに、目を開けた翔が見たのは、何処までも続く雪原と、そこかしこに点在する尖った氷の柱のみが拡がる極寒の銀世界であった。


「ここは一体…♭♭」両肩を抱き、震える翔の狩衣の裳裾が細かい粉雪と共に舞い上がる。八咫は烏から再び人の姿に戻り、呑気な口調で「ここ寒いよな~」と他人事みたいに言うと、この場所の説明を始めた。


「悪い女妖怪が居てさ、雪妖(シュエヤオ)ってやつで、大和国では雪女的な?何せ顔は別嬪なんだけど兎に角性格が最悪。人界に行っては人を喰ったり、凍らしたりして、こんな氷漬けの山村をあちこちに作っては面白がってたんだけど、ある時凄腕の道士に退治されたんだ。


雪妖が消滅した事でだいたいの山村は元通りになったんだけど、何故かこの場所だけは元通りにならなかった。多分だけど雪妖とは別の物の怪がここに棲み着いているんだと思うんで、朱雀之守には火の妖術でそいつを倒し、ここの雪と氷を溶かして元通りにして貰いたいんだ。


因みにここは唐の魔道じゃなくて西蔵(せいぞう)の国(今のチベット)の山奥の村で、突っ立っている氷柱は元々ここに住んでいた住人や、彼らの家屋敷とか家畜や樹木だったりが凍ったものだから火の玉で吹っ飛ばしたりしないでよ。


そもそもこの場所は仙人道に繋がっている聖域のひとつなんで、このまま氷漬けだと仙人達が人界と仙界とを行き来するのにめっちゃ不便なんだよね。今日の夕刻までには何とかしてくれよな。じゃよろしく!」


八咫はそう言うと全身を金色に発光させながら上空に浮き上がり、黒い羽衣をひらひらさせて「頑張れ~~~!凍えんなよ~~~!!」と叫んだ。どうやら発光する事で寒さから身を守っているらしい。ずるいと思ったが、このままでは翔自身も凍死してしまう。


全身から熱を発散させ続け、火の妖術を使うのはかなりの体力を消耗する苦行だが、やらなければそこかしこに聳える氷柱の仲間入りをしてしまう。炎の砲弾も使えないとなれば、火炎放射の技を使って対象物を燃やさぬ様配慮し、少しづつ溶かして行くしかないが果たして夕刻までに間に合うのか…♭


「兎に角始めるか…♭」小さく呟いた翔は意を決して全身に気を巡らせた。額の心眼が開き、その双眸が紅玉の如く赤い輝きを放ち始める。八咫が「やるねぇ~♪」と、愉しげに口角を上げた。


「炎風熱波!」渦巻く風炎が翔の周りを取り巻き、徐々に大きくなって行く。翔は右手から放出する風炎を強く、左手から放出する風炎を緩やかに調節しながら雪原をゆっくりと進んだ。


強い風炎は勢い良く地面を這って雪をどんどん蒸発させ、緩やかな風炎は点在する氷柱の周囲をまるで小さなつむじ風の様に包み込み溶かして行く。だが、翔の履く浅沓(あさぐつ)がどうしても雪に埋もりがちになり、少しづつしか歩を進ませる事が出来ず、いかにも効率が悪いのだ。


翔は時読みの腕飾りに時々視線を落としながら、既に半時が過ぎているのを確認した。こんな速度では夕刻に間に合わぬ…。せめてこの雪を滑降する事が出来たなら…。そこで思いついたのが嘉子姫奪還の折りに出会った猩々(しょうじょう)から貰った逸品である。


「そうだ…。猩々緋(しょうじょうひ)がある…」翔はすかさず袂から風呂敷大の赤い毛織物を取り出すと、それを雪の地面へと投げ広げ、その上に飛び乗った。この方法が図に当たる。


猩々緋は生きているかの如くその両端を翔の足に巻きつけてしっかりと固定し、まるで橇(そり)の様に雪原を滑って行く。それは徒歩で進む数倍の速さであった。


この不思議な毛織物はどうやらその持ち主に役立つ様な動きを自然としてくれる作用があるらしい。体軸の均衡を上手く保ちつつ、翔はスルスルと雪原を滑降しながら風炎を放出して除雪作業を続けた。


足を取られる事が無くなった分、翔の疲労も半減するので技にも集中出来、作業の効率も格段に向上している。そんな翔の様子を上空から眺めていた八咫は、「猩々緋を橇の代わりにしたか。やっぱすげ~頭いいじゃん♪」と、嬉しそうに微笑んだ。


八咫は更に上空高く浮き上がり、目が眩む程の光を放射し始める。それはまさに太陽に棲む烏の如く輝きであった。すると翔が除雪を終えた場所から次々と緑の息吹が蘇り、雪解け水は小川に、人家は元通りとなって徐々に復活していくのである。


その様子はまるで翔の放つ炎が地を滑(な)めて風景の色を激変させている様な、実に小気味良い景観であった。そんな変化には全く気付かず技に集中し、ただひたすらに雪と氷を排除する事に没頭している翔は、これだけの大掛かりな作業を1人でこなしている無意識の内に、自らの能力が格段に向上して行っている事にも未だ気付いていないのだった。



八咫君で~すニコニコお顔は手描きですが、それ以外はフリーイラストをパソコンで合成して作りました♪急ごしらえでしたので、ちょっとバランス悪いかも…😅羽衣の感じが上手く表現出来なかったので羽根も付けてみました~💦


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うわ~(滝汗アセアセアセアセアセアセ)翔君の訓練場面だけでこんなに時間が掛かってしまうとは💦毎回遅くって本当に心苦しい限りでございます🙏🙇


しかし書いていて思ったのですが、チベットの山間にある広大な場所(東京ドーム何個分でそ?💦)に振り積もった雪と聳え立つ氷柱を1人で溶かしまくる(しかも夕方までに)作業って無茶苦茶な無理難題でございますのぅ~ガーン


しかしながら猩々緋をスノボ代わりにして(何か翔君ってスノボ得意そうなイメージがあるんですよね~ニコニコ)赤い着物をはためかせつつ炎と共に雪山を滑降する翔君の姿はなかなかに豪快なのではないでしょうか?グッウインク


今回のお話ではコーチ役を火烏の八咫君が務めて下さいましたけど、八咫烏って日本神話では天照大神の遣いとして、導きの神とされているんですよね~♪中華では天帝の使徒なんて伝えられていたりしますけど、太陽に棲んでいると言う所からそんな発想になっているのだと思いますニコニコ


作中の八咫君は神になれないなんて自虐しておりましたけど、熊野地方では八咫烏を祀った神社もありますので、日本の八咫君は立派に神様になっておりますよ~チョキJリーグのキャラクターも八咫烏ですし、中華圏では天帝の使徒でも日本での八咫烏はとってもメジャーな存在なんですよね照れ


さて、亀さんどころかハシビロコウの如く動きの遅い我が家ではございますが滝汗苦心惨憺しながらもしっかりと前進していく所存でございますので、どうか見守って頂けたらと思っております🙇🏻‍♀️⸒⸒


恐らく次回は今年初めの翔君ハピバ企画で書いたお山さん作品の完結バージョンになると思いますにっこりそれが終わると潤くんハピバもありますので、『Japonism』の更新はちょっと無理かも。。。😅


世の中はオリンピックで盛り上がっておりますが、大変な酷暑の折り、どうぞ皆様熱中症にはくれぐれもお気をつけ下さいまし~😉/