本のむし。の読書感想文

本のむし。の読書感想文

今まで読んだ本を紹介していきたいと思います☆

Amebaでブログを始めよう!

本のむし。の読書感想文-方程式

今日読み終わったばかりの本ですが、とてもいい本だったので感想を書きたくなりました。

 

小学5年生の恭平は、両親の仕事の都合で夏休みの残りを玻璃ヶ浦にある伯母一家の経営する旅館「緑岩荘」で過ごすことになります。

玻璃ヶ浦に向かう電車の中で、偶然出会う恭平と湯川。

海底鉱物資源開発の説明会に参加するために玻璃ヶ浦を訪れた湯川も「緑岩荘」に宿泊することになります。

その夜、「緑岩荘」のもう一人の宿泊客である塚原が行方不明になり、翌朝、岩場で遺体となって発見されます。

当初は転落死であると思われていたこの事件は、塚原が元警視庁捜査一課の刑事であることが判明し、また死因も一酸化炭素中毒と特定されたため、殺人の可能性も視野に入れた捜査が始まります。

塚原の後輩で、現在警視庁捜査一課管理官である多々良の命で独自に捜査を始めた草薙と内海は、玻璃ヶ浦にいる湯川と連絡を取りながら、少しずつ真相へと近づいていきます。

 

『なぜ塚原は玻璃ヶ浦にやってきたのか。』

これが、すべての謎の原点となっていると思います。

この謎を解き明かすために草薙刑事と内海刑事が奔走するのと平行して描かれるのが、湯川先生と恭平の玻璃ヶ浦での日々です。

最初は理科嫌いで大人嫌いだった恭平。

けれど湯川との数日間の交流によって、科学の面白さを学んでいきます。

読み始めたときは湯川先生と子どもって、なんか合わないなーと思いながら読んでいましたが、子どもである恭平に対しても大人と同じように扱う湯川先生の姿勢に、やっぱり湯川先生は湯川先生だなと思いました。

やがて、亡くなった塚原、「緑岩荘」を経営する川畑夫妻、その娘で玻璃ヶ浦の開発反対運動に参加する成実など、すべての人たちが1つの点で結ばれます。

その時、湯川はとてもつらい真相を知ることになります。

途中から、「こういう結末なのかなー」と思いながら読んでいたんですが、確かにそれは当たっていたんですけど、それからさらに先に本当の真相がありました。

それは、私にすればとても残酷な真相でした。

きっと本人が気づかなければ、湯川先生はそのまま自分の秘密として一生一人で抱え続けたのかもしれません。

 

この事件は、無事解決ということになり捜査本部も解散します。

けれど、何人かの人の中では、永遠に『未解決の事件』として心にとどまり続けるのだと思います。

もちろん、湯川先生の心にも。

こんな不完全燃焼な形で事件が終わるのは、たしかに『証拠』はなかったけれど、湯川先生としても本意ではないのかもしれません。

それでもこういう終わりの形を選んだのは、湯川先生の優しさなのだと思います。

そんな湯川先生の優しさが、とても切なかったです。

この本で湯川先生が一番最後に言った言葉が、とても素敵でした。

ある意味、自分の選んだ終わりの形に、自分で責任を負ったのだと思いました。

 

どなたかが書評で「加賀恭一郎っぽいけれど、これは湯川学でなければだめ」といったようなことを書かれていました。

確かにその書評の方の言うとおり、このストーリーは、たぶん、湯川学でなければ成り立たないのです。

本のむし。の読書感想文


長らく放置してたこのブログですが、なんとなく再開してみます。

一番最初に『目標は読んだ本全部の感想を書くこと』なんて言ってましたが、いったいいつになったら全部の感想を書けるのでしょうか...。

今日は小学校の頃に読んだ「このつぎなあに」という本の紹介です。

この本は児童書で、通っていた小学校の図書館に置いてありました。

小学校の頃から本を読み漁っていたので、この本もなんとなく借りた1冊でした。

今思うと小学生が読むには難しい内容なんじゃないかと思ったりもするし、たぶん当時の自分もちゃんと理解はできていなかったのではないかと思います。

 

お話は、おじいさんが山奥で、町へ行った息子の帰りを待ちながら独りで暮らしているんですけど、あまりに寂しくていっそ死んでしまおうかと思っています。

そんなある日、おなかをすかせたたぬきが大入道に化けておじいさんの家にやってきます。

たぬきは化けるのが下手で、おじいさんはその大入道がたぬきだと気付くのですが、優しいおじいさんはだまされたふりをして、たぬきにおにぎりを差し出します。

おにぎりをもらっておなかいっぱいになったたぬきは満足して帰って行きます。

たぬきは大蛇に化けたり鬼に化けたりして、何度もおじいさんのところへおにぎりをもらいに(奪いに)行きます。

その度におじいさんは、それがたぬきの化けた姿だと気づくのですが、笑いをこらえてだまされたふりをし、たぬきにおにぎりを差し出します。

そんなやりとりが何度が続いたある日、息子がおじいさんのところへ帰ってきました。

一緒に町へ行って暮らそうという息子とともに、おじいさんは山奥の家を後にします。

おじいさんが山奥の家を出た後、なにも知らないたぬきがまたおじいさんの家にやってくるのですが、そこには誰もいません。

けれどたくさんのおにぎりとお菓子、そしておじいさんがたぬきに書いた手紙が置いてあるのです。

手紙を読んだたぬきは、おじいさんがわざとだまされたふりをしていたことを初めて知ります。

そして今はもうこの家にいないおじいさんを思って泣くのです。

 

大人になったある日、ふと昔読んだこの本のことを思い出しました。

そしてもう一度読みたくなって、自分でこの本を買いました。

とても切なくなるお話ですが、一生大切にしたいと思えるお話です。


本のむし。の読書感想文-ファイル0001.jpg

前回に引き続き、近藤史恵さんの本を。
「タルト・タタンの夢」と「ヴァン・ショーをあなたに」の2作品です。
この2つは同じシリーズの本で、ビストロ『パ・マル』のシェフの三舟さんが、お店を訪れるお客さんのちょっとした謎を解いていくお話です。
すべての謎が料理や調理器具の関わったもので、毎回のように三舟シェフの美味しそうなお料理も登場します。
タルト・タタンの作り方が体調不良の原因究明のヒントになったり、志村シェフの作った不格好なガレット・デ・ロワの秘密を暴いたり、別れのきっかけになったカスレに込められた想いを紐解いたり。
日々の些細な謎を、三舟シェフは鮮やかに解いていきます。
ミステリーというほど大げさなものではありません。
でもミステリー小説がメイン料理だとしたら、デザートみたいな、あると嬉しい推理小説だと思います。

『パ・マル』はフランス語で『悪くない』という意味だそうですが、この本を読んでみる限りは『悪くない』どころか『素晴らしい』お店です。
パ・マルは、三舟シェフともう1人のシェフの志村さん、ソムリエの金子さん、そして主な語り手となっているギャルソンの高築くんの4人で切り盛りしている小さなお店です。
その分お客さんとの距離も近く、パ・マルはとてもアットホームなお店です。
出てくる料理は三舟シェフがフランスで覚えてきた本場の味。
私もパ・マルで美味しい食事をしたいなと思ってしまうお話でした。

パ・マルに行くことは不可能なので、今日はステキなお店を探して行ってきました。
小さな路地裏にある、小さなビストロです。
とっても美味しい料理をいただきながら、パ・マルに思いを馳せました。


ちなみに。
謎を持ってくるお客さんに三舟シェフが振る舞う裏メニューのヴァン・ショー。
ワインをお湯で割って作る飲み物なのですが、シリーズ2作目の『ヴァン・ショーをあなたに』で三舟シェフのヴァン・ショー誕生の秘密が明かされています。


本のむし。の読書感想文





今回は近藤史恵さんのサクリファイスです。

もともと私は近藤さんの本は読んだことがありませんでした。

サクリファイスという本がある、ということは知っていましたが、内容がどんなものかなど詳しいことはまったく知りませんでした。

先日Story Sellerという新潮社発行の短編集(7人の作家さんがそれぞれ書いた短編のアンソロジー)を読んだのですが、その中に近藤史恵さんの短編も掲載されていました。

その短編が、サクリファイスのスピンオフ作品である自転車ロードレースの話でした。

自転車ロードレースの知識は全くなく読んだのですが、とても面白く、すぐに話の中に引き込まれていきました。

そしてこの短編の最後に書かれていた作者紹介で、サクリファイスも自転車ロードレースの話であると知り、面白いに違いない!!と思っていた矢先に文庫版が出版されたので、購入してすぐに読みました。


 



主人公は、オリンピックも狙えるといわれた陸上競技を捨て、自転車ロードレースの世界に足を踏み入れた白石誓。

彼はプロのロードレースチームの一員としてレースに参加する中で、ロードレースの最高峰であるヨーロッパのチームが、日本人を1人スカウトしようとしていることを知ります。

『エース』を勝たせるために自らを犠牲にする『アシスト』という役割をチームから与えられた自分は、どうすればそのチャンスをものにできるのか。

そう思い始めた彼が、アシストでありながら偶然レースで優勝を飾った直後、チームメイトからある噂を聞かされます。

「チームのエースである石尾さんが、3年前にわざと事故を起こして自分のエースの座を脅かそうとしていたチームメイトに再起不能のケガを負わせた」と。

石尾さんを信じたい気持ちと疑う気持ちが交錯する白石。

しばらくしてチームはヨーロッパ遠征へと向かい、そのレース中にまた事故が起こります。

果たして2つの『事故』は、本当に事故なのか。

その真相が明らかになったとき、白石は石尾さんの激しすぎるほど強い思いを知ることになります。


 



私はStory Sellerから読んだ人間なので、まず石尾さんの人間としての成長にびっくりしました(Story Sellerの話は、石尾さんがまだ新人だった頃のお話です)。

そして石尾さんがとった行動の意味を知ったとき、悲しいような悔しいような、でも、清々しいような気持ちになりました。

『たかがそんなことのために。』

最後、白石の同期のチームメイトである伊庭がそう言う場面があります。

私は自転車レースのことをまったく知らなくて、近藤さんの本で得た知識しかないけれど、この本に書かれてあるのが自転車レースの精神的な本質なのだとしたら、『たかがそんなこと』が、彼らにとってどれほどの意味を持つものなのか、痛いほど伝わってきました。

この競技でなければ、起こりえなかったこと。

この作品は『エース』と『アシスト』のいるロードレースだからこそ成り立つもので、そこにすべてが集約されているように思いました。


 



サクリファイスの文庫版の書評に「稿料なんかいらないから宣伝させてほしいと思った」というようなことが書かれてありました。

私もその意見には賛成です。

こんなにも人に勧めたいと思う本は、めったにないと思います。

Story Sellerも併せて読むとより一層楽しめると思います。

ちなみにStory Sellerの第2弾であるStory Seller2にも近藤さんのお話が収録されていて、それも石尾さんの話のようです。(私はまだ読んでません)

個人的には、白石よりも石尾さんの方が好きです。

サクリファイスの主人公は一応白石ですが、石尾さんは主役級の脇役だと思います。

また、サクリファイスの続編であるエデンも出版されているようなので、私もまた読んでみたいと思います。


 







本のむし。の読書感想文


この本は2年半くらい前の、やっぱり夏の文庫フェアで買って読んだ本です。

まだ1回しか読んでないけれど、いろいろ考えさせられる本だったので、今年の夏に読み返せたらなと思っています。


主人公は、普通の一人暮らしの会社員。
ある日町の広報に『となり町との戦争の開始』がお知らせとして載っているのを見つけます。
開戦当日、何が起きるのかと思いながら彼の1日は始まりますが、普段と全く変ることのない1日で。
翌日も、その翌日も、何ら変わらない日常は続きます。
戦闘の気配すらない町に、『本当に戦争は始まったのか?』と疑問を抱く主人公。
けれど広報には『戦死者〇人』と書かれてあって、実感のないままに戦争は進んでいました。
そんなある日、主人公の元に役場から1通の通知が届きます。
それは『戦時特別偵察業務従事者の任命について』。
彼は戦争を感じるためにこの任命を受け、戦争と関わっていきます。

いつ戦闘が行われているのか。
どんな形で行われているのか。
戦争中であるものの、町の日常は戦争開始前と何も変わらないため、主人公は『戦争をしている』という実感がないまま。
やがて彼は、『戦争』とは何なのか?という深い疑問を抱きます。

この疑問の答えはこの本には書かれていないと、私は思いました。
登場人物それぞれが、自分にとっての戦争について考えています。
それを見て、あなたは戦争とは何だと思いますか?と、聞かれているような気がしました。
テレビで目にする戦争には、たくさんの武器があって、街は廃墟のようになっていて。
武器を手にしたこともない、瓦礫の中で暮らしたことのない私たちには、戦争とは非日常的な、テレビの中だけの出来事にしか感じてない部分は多分にあって。
けれどそこに生きる人々にとっては、それは日常の中で起きているリアルで。
そういう感覚の違いから、生まれた小説なんじゃないかと思います。

自分は戦争と関わらずに生きている。
多くの日本人がそう思ってるけれど、果たして本当に関わっていないのか?
そんな内容の文庫本特別書き下しも収載されています。
この『となり町戦争』も映画化されています。
私は観たことないですが、映画もちょっと観てみたいです。