タクワンとセレブ
私が大学を卒業して1年だけ都市銀行に勤めたていた際、職場に1週間ほどベネズエラ人女性が来たことがあります。なんでもベネズエラのナントカ大臣の娘らしく、「短期研修」という名目でしたが、まともな仕事はせずヒマを持て余していました。私の部署は忙しいところだったので、新人の私が彼女のお相手に選ばれました。社員食堂でランチしたときのことです。その日の日替わり定食は、マグロの照り焼きに出汁入り大根おろしをかけたもの。そして次のような会話になりました。カッコは私の心の声です。彼女:what's this?私:tunawith ...... (大根おろし? だし? 日本のことを何も知らない彼女に何て言えばいいんだ?) ah, grilled tuna with sweet soysorce (大根おろしは無視しよう)彼女:what's on it? (大根おろしを指差しながら)私:…… a sorce made ofJapanese radish and fish consomme (うん、我ながら正確な説明だ)彼女:huh? (すごく警戒した表情) 私:you know, Japanese traditional fish dish. would you like to try? (めんどくさ。食べてみたらいいのに)彼女:No! で、結局、トンカツ定食になりました。ところがそこで予想外のトラブル発生。小皿に乗っていたタクワンがわからないようだったので、"japanese salty pickles"(正確じゃないけどこれで通じるだろう)と答えると、小さくひとかじりしました。と同時に、いきなり真っ赤になってものすごく怒り出しました。 音がする食べ物を食べさせて、わざと恥をかかせたんだろうと言うんです。どんだけお上品な育ちなの。でも確かに、そういうマナーもあるなあ。一瞬、ムッとしましたが、周囲を指差して「みんな食べてるでしょう。これはこういう文化なの!」と説明しました。彼女は怒りを鎮めたものの、口に入れたタクワンをそれ以上噛むことができないでいました。結局、水で飲み込んでいました。そういえば海外に住んでいた際、特別な場での食事マナー講習を受けた母が、「レタスを食べるときはシャクシャク音を立ててはダメで、小さくして飲み込むんだって」と言っていたことを思い出しました。そのときは笑っていたのですが、セレブは実践しているんだわ〜と実感。普通の南米人(?)と違い、彼女は本当のセレブリティだったんです。派手な私服、濃厚な化粧、濃厚な香水、眩いアクセサリー、そしてデスクの引き出しには大量のお菓子。そんなこんなで色々ありましたが、かなり楽しく過ごしました。そして帰国する際、引き出しに入っていた大量のお菓子をくれました。今ごろ、どうしているかな? きっと大金持と結婚して相変わらずセレブなんだろうな。