原色の絵の具をチューブから出したばかりの混じり気の無さを感じさせる、眩しいほどに鮮やかなガクアジサイが満開となっています。

 

 

 晴天の日に見る紫陽花からは、どこか初々しい印象を受けます。

 降雨により滴る水の要素が紫陽花の魅力を引き出しているのかもしれません。

 

 

 さて、標題の通り、「音楽的な演奏」と云う言葉について、ピアノを再開した時からしばしば考える事が多かったので、本日僅かでありますが言及する事にします。

 

 そもそも、随所で用いられている「音楽的」とは、どのような状態を指すのか、この件について予てより想いを巡らせることが多く有りました。

 譜面上の音程と音価との整合性を図るだけであれば、何らかの機械に打ち込めば完成するわけですが、その仕上がりを「音楽的」で有るか否か問われると、間違いなく、「否」でしょう。

 

 

 そこで、或る考えが脳裏を過りました。

 

 知人「ミネラルウォーターが飲みたいからちょうだい」と云う発言から、ペットボトルをそのまま渡した方がよいのか、温度はどれくらいの物がよいか、何かグラスに注いだミネラルウォーターを渡した方がよいのか、グラスに注ぐのであればどのようなグラスなのか、量はどれくらいが適切か、etc.多くの決断が迫られ、その決断の方向性が異なると、知人の要望を満たす事なく有難迷惑になってしまう事が多々有ります。

 

 ここで、譜面に書かれた事を読み取る過程で必要な能力と、知人の要求を察知する能力とは、同質のものではあるまいかと考える事がしばしば有ります。

 

 譜面に書かれた1の事を正確に1読み取れていなければ、知人の言葉の指すミネラルウォーター「ミネラルウォーターにテキーラを混ぜた物」「少量のミネラルウォーターにコーラを注いだ物」の方が適切だと自己判断し、知人困惑させる結果に至ります。

 

 よく、「一を聞いて十を知る」と云う言葉が用いられますが、「一を読んで一確実に読み取る」事ができた者だけが自らの経験や感性で以て状況把握から対処法を導き出し、十まで膨らませる事ができるように、一を無視してアレンジをしたり(ミネラルウォーターに砂糖を入れて提供する行為)一を疑って「ここにはこう書いてあるけれど、実際の心境はああだろう」などと決め付けたり(ミネラルウォーターではなく、シャインマスカットの果実を提供する行為)すると、「何故ミネラルウォーターを頼んだのにシャインマスカットの果実を出される羽目になるのか」、「一体どこからシャインマスカットが出てきたのか」と、最初の一はどこに行ったのか疑問に思われ、要求を満たしていない行為に終わるでしょう。

 

 感性楽曲分析音程と音価との整合性、これらの事柄を混同してしまうと、上述のような、自分では気を利かせたつもり傍から見ると当初の要求発言を無視した行為に至るのだと思います。

 

 音楽の演奏の場合、感性とは、ミネラルウォーターに何も混入せずミネラルウォーターのままどう提供するか自分で判断する事であり、ミネラルウォーターにテキーラを入れたり、ミネラルウォーターが欲しいという発言自体を疑って別の物にすり替えたりする行為ではないのだと私は考えています。

 

 そして、譜面よりもCDの演奏音源を重視して演奏する行為は、「ミネラルウォーターは必ずグラスに注ぐものだ」と思い込み、その思い込みの度が過ぎると、グラスに注いだ液体は全てミネラルウォーターである」と云う固定観念に囚われ、グラスに注ぎさえすれば中身は何でもよい」と云う概念が植え付けられるのと同質の過ちを犯しているのだと思います。

 

 

 標題の「音楽的な演奏」とは、譜面が要求するものを全て把握した上で、正確な状況把握を済ませた後に行う自己判断を加える事なのではないかと私は考えています。

 

 

 

 

 【本日のピアノの練習について】

 

 ・バッハ インベンション第1番 ハ長調(暗譜済) 

 ・バッハ インベンション第2番 ハ短調(暗譜済)

 ・バッハ インベンション第3番 ニ長調(暗譜済)

 ・バッハ インベンション第13番 イ短調(暗譜済)

 ・バッハ インベンション第9番 へ短調(暗譜済)

 ・バッハ インベンション第4番 ニ短調(暗譜済)

 ・バッハ インベンション第7番 ホ短調(暗譜済)

 ・バッハ インベンション第8番 ヘ長調(暗譜済)

 ・バッハ インベンション第12番 イ長調(暗譜済)

 ・バッハ インベンション第5番 変ホ長調

 ・バッハ インベンション第15番 ロ短調

 ・バッハ インベンション第10番 ト長調

 ・バッハ インヴェンション第11番 ト短調

   ・バッハ シンフォニア第11番 ト短調(暗譜済)

  (※ここまでそれぞれ1~2回通しただけ)

 

 ・バッハ シンフォニア第2番 ハ短調(運指決定)

 

 ・ショパン エチュードOp.10-4 嬰ハ短調(暗譜済)

 ・ショパン ノクターン第1番 Op.9-1 変ロ短調

 ・ショパン ノクターン第5番 Op.15-2 嬰ヘ長調

 ・その他(スケール、アルペジオ、半音階、その他)

 

 そこで、その「音楽的な演奏」ができるようにする為に、少し丁寧に譜面と向き合おうと思います。

 作曲家も人間ですから、自らの要求が無視された練習を続けられると厭でしょうし、そのような行為は失礼に当たると思います。