先日、バレエの先生がバーレッスンのロン・ドゥ・ジャンブ(Rond de Jambe)の際、軸足と反対側の足の動きについてたっぷり動かして」と表現しながら、「この『たっぷり』って言葉で通じるのかしら?私、小さい頃ピアノ習ってて『そこはもっとたっぷり弾いて』って先生に言われて、意味が解らなくて先生に怒られたのよね…」と仰っていました。

 直感的にではありますが、意図は伝わりました。

 

 その後の先生の言葉が、「あの時まだ4歳だったのよ、言葉で指導されて解る?未だにこの時の事を憶えているぐらい当時のピアノの先生は怖かった。皆はもう大人だからこう云う言葉で見本を見せながら指導しても意図を汲み取れると思って、今『たっぷり』しか言葉が出てこなかったけど、小さい子に物事を指導するのって難しいのよね…」と云ったもので、コミュニケーションの難しさを痛感しました。

 

 ちなみにこの先生は旧ソ連時代のバレエ学校に留学経験が有り、そのバレエ学校での語学面に於ける問題よりも幼少期のピアノの先生とのコミュニケーションの方が難しかったと仰っていました

 

 私自身、6~7歳の頃、ピアノの先生から「気持ちを込めて弾きましょう」と言われて、どのような気持ちなのか解らず、ブルグミュラーの「無邪気」と云う言葉の意味は何なのか先生に直接その場で質問した覚えが有ります。

 その時の回答が、「今の貴女みたいな感じ」で、更に解らなくなりました

 

 小さい頃バレエを習っていた人達が、「身体の引き上げ」の意味が解らず先生に怒られただけで何も改善されなかったと云う類の話を聴くにつけ、動画や先生のお手本の問題よりも、教わる側の語学力(語彙力)や様々な経験の方に重きを置いて指導する必要が有るのではないかと思いつつあります。

 

 教わる側が高校生以上の場合、大人と同様の言葉遣いで問題無いと思うのですが、乳幼児~中学生ぐらいの年齢の場合、理解力の問題が生じ、上手くコミュニケーションを取らなければ真摯に取り組んでもお互い的外れな方向へ着地しかねません。

 

 今思い出したのですが、中学1年生の頃、「便宜」「為替」「森厳」「啓蒙」と云った漢字の読み書きの試験が有りましたが、このような言葉を使う機会がいつ訪れるのか不思議でならず、記してある例文に一応目を通したものの、いまいち理解出来ていませんでした。

 同じクラスの人に訊いてみても、日常会話で使う機会が無いと云う返答ばかりで、親に訊いたら「大人になったら使う。『為替』なんてニュースで毎日報道されている。新聞にも書いてある」と言われ、語彙力と生活スタイルとの相関についても当時考えておりました。

 

 バレエロン・ドゥ・ジャンブ(Rond de Jambe)の指導の際に適した言葉が思い付かないのですが、感覚的なもので以て伝達すべき分野なのでしょうか。

 ゆっくりアンディオールして、では不十分な表現かもしれませんが、このレッスン後幾ら考えてもロン・ドゥ・ジャンブ(Rond de Jambe)の肝要点については、一般的な未就学児や小学校低学年の児童に伝わるであろう言葉が見付かりませんでした。

 

 無邪気だった私には「たっぷり」と云う表現で伝わるのかもしれません。