「月刊 ショパン」を遡って読んでいると、2015年10月発刊号にフィギュアスケーター安藤美姫さんとピアニスト福間洸太朗氏との対談が掲載されておりました。

 日本のアイスショー「ファンタジー・オブ・アイス」にてクラシックのピアニストが生演奏したのは福間氏が初めてではないかとの事でしたが、その福間氏の発言の中で興味深い箇所がありました。

 

 通常のクラシックのコンサートとの違いについて、

 「スケートリンクの側にピアノがあるので鍵盤が湿って滑りやすくなっていたり、室温が低いので手が冷たくなって弾き辛かったり…。あとは、演奏中に照明がどんどん変わっていくので、鍵盤の影の形が変わってよく見えなくなってしまうとか、演奏中に拍手や歓声が聞こえるのも経験したことがなかったので大変でした。」

 

 との事で、プロのピアニストの方でも室温の影響を感じる事が判明。

 ピアノを演奏する上で、室温と湿度の影響は不可避なものなのでしょうか。

 勿論、福間氏はプロでいらっしゃいますから、万全に対策を行っているとは思いますが…。

 照明についても、あらゆる対策を練られた事でしょう。

 

 私自身、フィギュアスケートには明るくないのですが、以前クラシックバレエの先生からレッスン中、

 「バレエはピアノと同様、本番で披露するパフォーマンスは練習の時に10回やってみて10回とも間違えないと確信を持てるはず。それはコンクールに於いても発表会に於いても同様。

 練習で出来ない事を本番で披露しようなんて人は居ないはず。

 でもフィギュアスケートは違う。練習で100%成功すると確信を持てない技にも本番でチャレンジする」

 と言われ、それ以来、競技と芸術の違いが何となく実感出来た気がします。

 クラシックバレエは舞踊の側面も有りますが、分類としては舞台芸術です。

 

 その、「競技」の特性を持つフィギュアスケートのBGMを生演奏するプロのピアニストはやはり本番で失敗する事は100%許されない事で、一般の方から見ると「出来て当然」だと云う眼で見られる重圧に押し潰されそうになりながらも演奏をこなしていらっしゃった福間氏に興味を抱きました。

 

 同対談中、羽生結弦選手が以前ショートプログラムで使用された、ショパンバラード第1番を、原曲を丸々1曲では無く実際のフィギュアスケートの演技に合わせて、曲をカットして全然違う所に飛んだり、いつもと違うテンポで弾く事に緊張なさったエピソードも有り、原曲を弾き込んでいらっしゃる方程編曲された演奏に難儀するのではないかと素人見解ながらに畏敬の念を抱いております。

 

 本日、このショパンバラード第1番楽譜を見ながら「正しい音を出す」だけで苦戦していた私にとって、人前で演奏出来るだけでなく、曲をカット云々、それもスケートリンクの側で…と云う条件下にて生演奏をこなすプロの技を想像しただけで頭が下がる思いです。