今年1月末、長いブランクを経てピアノを再開した当初、再開前に着手していない曲の中でどの曲を練習するか、選曲の決め手となった事について記載したいと思います。

 ショパンエチュードショパンバラードスケルツォCDが幼い頃から自宅に有り、それらを好んで聴いておりましたので、是非ショパンエチュードの中で着手していない曲の中から選ぼうと思っていたのですが、如何せん曲数が多すぎるので全て一度に練習する訳にはいかないのです。

 ショパンエチュードOp.10に限っても12曲収載されておりますし、Op.25にも12曲遺作3曲ショパンエチュードと一言で表現しても、合計27曲存在する訳です。

 再開前に既習の曲を除いても20曲以上有ります。

 

 好きな曲を選ぶ、これが大前提ですが、「好きな曲」の中で順位付けが出来ない程膨大な数の「好きな曲」が私には存在するので、まず1曲選び取るだけでも悩み抜く事になります。

 

 そこで、YouTubeにて偶然視聴した田久保萌夏さんストリートピアノにてショパンエチュードOp.10-4を演奏している動画に心惹かれ、Op.10-4即決しました。

 私が子ども時代から所有していたCDはプロのピアニストであるポリーニの演奏のもので、アシュケナージ横山幸雄の演奏CDも持っていたのですが、YouTuberである田久保萌夏さんの演奏はパワフルで、私の中のOp.10-4に対する概念を良い意味で変えた演奏でした。ポリーニやアシュケナージはサラリと演奏しており、それらの演奏も勿論良いと思いましたが、田久保萌夏さん情熱的な演奏に惹き込まれたのです。

 

 当然ですが、彼女のような良質な演奏が出来るとは思いませんでしたし、再開当時は打鍵力が弱り切っておりスケールの音を出す事自体難しかったので、ハノンツェルニー、既習の「小犬のワルツ」「トルコ行進曲(モーツァルト作曲)」等からやり直しました。幻想即興曲Op.10-12(革命)までのやり直しが終わった今年5月末頃の時点でOp.10-4譜読みに着手しましたが、その時点でも全く歯が立たず…。

 初めて視聴した際、Op.10-4を弾く事は夢のそのまた夢の話だと思い、彼女のテンポの2/3程度で音を鳴らす事が出来れば上出来だと判断しておりましたが、その判断自体が誤っていたのだと肩を落とした事が幾度と無く有りました。

 

 他の曲に数曲取り組み、指を強化た後、再び今年8月、Op.10-4の譜読みから始め、根気強くゆっくり練習を続け、私の執念が遂に勝ったのか、今年9月末の時点で、このまま練習を続ければインテンポでの演奏も夢では無いと確信を持つ事が出来ました。

 錆び付いた頭の所為か、この曲の持つ難解さに起因するのか、譜読みでここまで苦労した曲は初めてではないかと思える程、一筋縄ではいかぬ曲だと痛感しました。音を出すだけでも英雄ポロネーズより難しいのではないかと云う想いが脳裏を過った事もしばしば有ります。本当に8月上旬は何度諦めようと思った事か…。

 

 YouTuber田久保萌夏さんについてですが、全く面識は無く、動画を視聴して初めて知った方です。

 ご本人の自己紹介によると、昭和音楽大学の現役学生で、神奈川県立弥栄高等学校音楽科の卒業生だとの事です。

 

 ショパンコンクール in ASIAにて金賞を受賞された等の肩書も素晴らしいですが、何よりも演奏そのもの演奏している時の身体の使い方に惹かれました。

 動画を拝見した限り、然程大柄な訳でも無く、少しGoogle検索してみると、高校生新聞社の取材記事にて、実は手が小さいとの記載が見受けられ、同じく手が小さい私に希望の光が差したかのように感じられました

 勿論、彼女はOp.10-4の演奏の際、短9度を押さえている音が聴こえている気がする(※トーク有ver.では手元がハッキリ確認出来ました)事から、私と同じ訳ではありませんが、Op.10-4に関しては努力で「或る程度」克服出来るのではないかと云う思考に至りました。

 練習への取り組み方等も新聞社の取材記事欄に記載されており、その中で「運動は昔から好き」恐らく神奈川県出身者であろう事から、彼女との共通点を幾つか見出し、私もOp.10-4にご縁が有るような気分になり、練習を続ける事に決めました。

 

 その後、彼女のストリートピアノOp.10-8の演奏動画も拝見し、Op.10-8にも着手しております。

 

 Op.10-4の練習については、根気強く取り組めば努力が報われる曲だと手応えを感じられるようになり、自分でも数ヶ月前の状態が信じられません。勿論、私と彼女とでは置かれている立場もそれまで積み上げてきたものも全く異なりますので、比較する事自体無粋な行為ですが、インタビュー記事については非常に参考になりました。

 演奏そのものも重要ですが、やはりその背景に有るものも含め人を揺り動かす力を秘めているのだと思います。

 女性の奏者は、通常ロングドレスを纏っているので動きが判り辛い傾向に有りますが、ややタイトなパンツスタイルで演奏された動画の中で演奏中の重心移動についても一目で判った点も非常に有難く思いました。

 

 今では楽譜とピアノに向かって格闘している曲ですが、再開当初はYouTuberである田久保萌夏さんストリートピアノの動画から受けた影響が大きく、彼女の配信して下さった演奏動画に対しては感謝の思いと尊敬の念とが入り混じっております。本当にありがとうございました。

 

 ※ご本人が動画内で本名を公開していらっしゃるので、問題無いと判断し、此処に記載致しました。