ピアノの練習の際、曲の最初の一音を奏でる瞬間が必ず有ります。
この最初の一音が上手く決まったか否かでその後の成り行きに影響を及ぼす程、重大な存在だと私は思います。
私は、特定の曲に集中して練習する場合、必ず最初から通し練習を最低1回はする事にしております。
長い曲の場合、部分集中練習のみで終わらせた方が効率的なのですが、今までの経験上、「最初の一音が決まらずに何度もやり直す」事があまりにも多すぎたので、数ヶ月前から練習スタンスを変える事にしました。
私自身が他の奏者の演奏を聴いている時、聴き惚れる演奏は最初の一音からして別格ですし、最初の約10~20秒間でその後の印象が決定される気がします。
それ故、中間部に難所が有り弾き辛い場合であっても、最初の一音と最初の約10~20秒間だけ何度も練習する事も有ります。
素人の体感に過ぎませんが、ショパンエチュードのOp.25-12(大洋)やOp.10-12(革命)が「難易度の割に」弾き易い曲である気がするのは、最初の一音(厳密に言えば数音)が弾き易いからだと考えております。
それに引き換え、ショパンエチュードOp.10-4は最初の一音や最初の数小節が難しく、何度練習しても未だに最初の数小節の壁を克服出来ておりません。
この部分の練習法については後程考える事として、最初の一音や最初の数小節の重要さについては、J-POPにも同様の事が言えるのではないでしょうか。
複数のメンバーが歌唱するグループの楽曲の歌い出しのパートは、大抵そのグループの歌唱力No.1若しくは度胸の有るメンバーに歌割が振られる事が多いと思います。特にハロプロの楽曲についてはその傾向が顕著です。
この事実から、出だしが好調で無ければ、楽曲全体が崩壊する危険性を孕んでいるとも言えます。
また、出だしさえ好調でその後のフレーズも全て同質の仕上がりになるよう練習を積んでおけば、出だしの勢いに乗る事も可能だと思います。
(※あくまでも素人の趣味での演奏の場合の話です)
現代文の音読や会話、他人に与える第一印象についても「最初」は肝要な点だと私は認識しております。
高校時代の現代文の教師が、「読書感想文が巧い人は5枚有る原稿用紙の1枚目の半分まで読んだ時点で巧いと判る」と仰っていました。
社会人の朝礼やスピーチ等でも、話術が巧みな方々は最初の数秒間の間の取り方、滑舌を特に意識しているように思います。
最初の一音、これは演奏に於いては人間関係で言う所の「第一印象」のようなもので、人前で演奏する訳ではなくとも、最初の数小節が自分の中で好調でなければ自分自身が納得出来ず、その後の演奏も好転する事はほぼ無いので、或る程度全体的に納得出来る仕上がりになった段階に於いては、難所や自分の弾き辛い中間部よりも、最初の数小節の質を上げるべく重点的に取り組んだ方が良いのではないか、と云うのが現在の私の考えです。
「最初がその曲の難所」である英雄ポロネーズについてはまた別のアプローチ法を考えなければなりませんが、大抵の曲については最初は比較的平易である割にその後の出来を左右する重要なポイントとなる気がしておりますので、最初が平易だからと云って侮らずに大切に捉えて日々取り組みたいと思います。