幼少期ピアノを習っていた少女達は、バダジェフスカ「乙女の祈り」を一度は耳にした事が有ると思います。

 ベートーヴェン「エリーゼのために」の次に少女達の弾けるようになりたい曲の中に挙げられるのではないでしょうか。

 タイトルからして少女達が憧憬の念を抱きそうな曲で、男の子達がモーツァルト「トルコ行進曲」を目標と定めていた一方、女の子達の小学校卒業までに弾けるようになりたい曲ベスト10にランクインしていたのではないかと思います。

 

 私の幼稚園時代、年の近い年齢の生徒達を集めて、ピアノの先生がクリスマス会の時に皆の前で演奏して下さった曲が「乙女の祈り」でした。

 生徒達も各自短い曲を1曲ずつ演奏する小規模な発表会のようなイベントで、まだ身体も小さく演奏技術も未熟な子ども達の中で、ペダルを踏んで演奏された先生の「乙女の祈り」は迫力が有り、高音部分のトリルがクリスマスツリーの上で輝いている星の煌めきの音のように感じられました。

 「乙女の祈り」をCDで聴いた事は有りましたが、間近で演奏されているのを見たのはその時が初めてで、私自身一度も演奏で使った事の無いピアノの鍵盤の高音部が楽曲演奏中使われているのを実際に見た時には不思議な気分になり、この星の煌めきのような曲に興味を持つきっかけとなりました。

 

 このイベントの直後、このままピアノを習い続け、オクターブが届く年齢になれば「乙女の祈り」を弾けるようになるのは夢では無いと知り、いつか「乙女の祈り」を弾こうと思い、家路に着きました。

 

 しかし、時が過ぎ、小学校生活も終幕を迎えた頃、ショパンワルツトルコ行進曲等は教わっていたにもかかわらず、「乙女の祈り」についてはどうも習う気配が感じらず、教本がどんどん進んでいったので、自分で楽譜を買ってきて独学で「乙女の祈り」を練習して弾けるようになりました。

 

 右手のアルペジオの上行の部分も非常に耳に心地の良い、私のお気に入りの曲のうちの1曲です。

 

 今考えると、幼少期の先生の間近な演奏による影響は大きいので、幼稚園児や小学校低学年の子どもが集まった時には、「このまま練習を続ければ現実的に考えて数年後には弾けるようになりそうな曲」を演奏して下さると、イメージが湧きやすく、練習のモチベーションにも繋がると思います。

 モニター越しにしか視聴した事の無いプロのピアニストの演奏よりも、普段接している先生の生演奏は非常に魅力が感じられ、大人になった今でもあの時の右手が行ったり来たり激しく動きながら煌めく音を奏でていた先生の演奏を思い出します。

 

 本日は、あの時のクリスマス会の事を思い出しながら、「乙女の祈り」を奏でておりました。

 この曲は自分で演奏しながら癒しの効果が有るのか、疲れた時に気分転換に弾く事が多いです。

 当時の先生にいたく感謝しております。

 

 

 最近ではハロウィンのイベントも有るようですね。

 昨今の情勢からして自粛傾向ですが、当時の先生の演奏効果は絶大でした。

 

 

 聖母マリアの物語「乙女の祈り」は、今後も世界各地の少女達を魅了していく事でしょう。