習い事として今でも依然として高い人気を誇るピアノですが、子どもの頃に習っていた方々は発表会当日の衣装選びに胸を躍らせていた思い出も有るのではないでしょうか。

 勿論、当日の演奏の為のピアノの練習が重要なのは言うまでも有りませんが、その演奏をステージの上で煌めくものにする視覚効果についても家族で話し合って選んだ方も多いと思われます。

 男性の場合、黒いスーツ等シックなスタイルの事が多いようですが、小学生の女の子の場合、ドレスワンピースetc.普段は滅多に身に纏う事の無い衣装を着用する機会で、衣装選びの時点でときめきを感じていた方も多いのではないでしょうか。

 

 現在はネットショップ等でも販売されているようですが、私の小学生時代にはまだネットが普及しておらず、家族で出向いて購入しに行く為に試着する事も一種の楽しみでした。

 写真撮影の為の衣装では無いので、ピアノを演奏する事を第一前提として、袖の造り座った時の感覚に留意して選ばなければならないのですが、今色々なwebページを閲覧していると、モニター越しに見ているだけで妖精が舞い踊っているようなドレスが満載でときめきを感じます。

 

 私の思い出深い衣装選びのピアノの発表会は小学校4年生の頃の事で、母のお手製のドレスを身に纏って演奏した記憶が有ります。

 演奏する曲のイメージや本人に似合うデザイン・色を選ぶ傾向に有ると思いますが、小学校低学年時と異なり、小学校4年生になるとフリルやリボンの多く着いたドレスは子どもっぽく感じ、少し大人になった気分の色・デザインを好むようになっておりました。とは言え、黒やブラウン系の深みの有る衣装の良さが解る程精神的に成熟していた訳では無い、難しいお年頃です。

 そこで、シンプルなミントグリーンのノースリーブドレスを身に纏う事になったのですが、採寸・型紙作り・仮縫いの過程を経て、曲の仕上がりに間に合うように母が腕を振るって作成した衣装は爽やかな感じの中に少し温かみがこもっていたように感じられました

 発表会の一週間~数日前からは、当日着用する衣装を実際に身に纏って練習していた方が多いと思うので、曲の完成に向けて母は衣装製作に勤しんでおりました。曲の完成への進捗と衣装製作の進捗とが上手く呼応しているようで、ピアノの発表会一つ取ってみても、子どもの成長と同時に母も伴走していた気がします。この時、既に母は親子連弾の伴奏の相手では無くなっておりましたが、次のステップとして衣装製作を行うとは思いもよりませんでした。

 

 この時のピアノの練習を思い出すと、一つの試練とも言える曲が割り当てられ、小学校時代のピアノに関しては自分の中の屈指の壁を感じておりました。大人への階段へ足をかけたひとときでした。今では懐かしいと思える事ですが、当時は本当にこの曲が仕上がるのか…と内心不安で、発表会のプログラムも後ろの方になり(この種のプログラム決定法について異論の有る方が多いようですが、中学生の生徒さん達の後に演奏するのは本当にプレッシャーでした…先生から「この演奏順にした事を自覚して~」etc.毎回のレッスンで指摘され、褒められているのかプレッシャーをかけられているのか判らなくなるぐらいの危機感が有りました)、無邪気にひたむきに参加出来た小学校低学年時代とは違って初めて本気でプレッシャーを感じた思い出に残る発表会でした。

 その後は、この発表会を乗り越えてまた次の壁へと挑む事になる訳ですが、芸事とはこのようにして上達してゆき、子どもはこのように一つ一つ段階を踏んで成長していくのかもしれないと今更ながらに思います。

 大人になってから再開後の今では当時よりだいぶ上手く演奏出来る気がするのですが、当時を思い出すと、あの経験が有ったから今が有る訳で、周りの協力して下さった大人の方々のお陰で私が成長出来たと思うといたく感謝しております。

 

 ペダルを踏む事を考慮して靴を選んだりヘアスタイルを考えてヘアアクセサリーを選び客席から見える右側にお花のアクセサリーを着けたりと、ピアノをはじめとした楽器を習うと云う事は、発表会に際して衣装選びと云う楽しみも有り、また私も演奏会に出たいと思うようになりました。

 書道やダンス、水泳、英会話etc.の習い事では、華やかなドレスを身に纏って身に付けた芸を披露する事はまず有りませんから、ピアノを習っていて良かったと今更ながらに思います。

 

 成人後、私は撮影を趣味のうちの一つとしており、一度撮影に使用しただけでクローゼットに眠っているロングドレスが沢山有るので、活躍する機会が訪れると良いと思います。

 その前に何か楽曲を完成させなければ単なるファッションショーで話になりませんので、演奏の中身の方も充実させるべくどこかに習いに行く事も検討しております。

 大人になったら、イヤリングやその他アクセサリーを選ぶ楽しみも有るので、「小学校4年生の頃の曲を磨き上げてみた成果」をどこかの演奏会で演奏しているのも良いかもしれないと思いつつあります。

 

 それにしても、子どもの頃の習い事の発表会についての思い出は一生もので、当時は大人になってもこれ程までに鮮明に思い出す事が出来るとは想像も付かなかったので、尊い時間を過ごしていたのだと改めて実感します。