最近、ショパンの名曲「英雄ポロネーズ」の練習に取り組み始めました。

 この曲に関して言えば、完全独学での練習です。

 

 上には上が有りますが、「英雄ポロネーズ」で要求される技巧はかなり高いので、10年以上前、そして今年5月、の計二度譜読みを終えてから、自分に足りないスキルを身に付けるべく、「英雄ポロネーズ」の本格的な練習に入る前に、ショパンエチュードOp.10-4に真摯に取り組む事に決めました。そもそも、一度譜読みをしなければどのようなスキルが不足しているのか、実感出来ない事自体が問題かもしれませんが、所謂「大人の再開組」の再開したての頃にありがちな「昔は問題無く出来た事が今は出来なくなった」事を認識し、受容すべく、現在の実力を客観視する為にも、まずは譜読みをして現実を直視する事から始めようと思った訳です。

 人間は自分のピークの頃の実力を今の実力だと勘違いしやすい性質が有りますし、昔そこそこ出来た人ほど現在の腕がピーク時と比較して衰えた事を認めたくないと思いますが、人間、時間と共に体力・記憶力を含めた様々な能力が変化していきますから、過去の栄光に縋り付くのでは無く、「今」の実力を直視し、「今」の実力を上げる為にはどうするのが最善か、判断する必要が有ると思います。

 

 ショパンエチュード、エチュードとは「練習曲」と云う意味で、その名の通り、今後様々な楽曲を練習していくうちに必要な技巧が多々要求される、良き「教科書」のような存在です。
 勿論、ショパンのソナタやバラード・スケルツォetc.にも役に立ちます。弾き込めば弾き込む程、ショパンエチュードが基礎力を徹底的に底上げ出来る教則本である事を実感出来ると思います。

 基礎と云っても全くの未経験者にとっては基礎では無く、高等教育を受ける際の通過儀礼である大学入試センター試験のような存在でしょうか。

 或る程度のスピード、或る程度の知識、或る程度の思考力が要求されると云う点ではピアノ界の大学入試センター試験レベルと云っても差し支え有りません。

 大学の学部にて専門的な教育を受ける際、その分野のセンター試験レベルの「基礎力」が身に付いていなければ、専門書を読んでも理解には程遠く、実力不足のまま専門書に入るのは一見近道のようで却って遠回りどころか悪い癖が付くだけだと云う理論と根本的には同じなのではないかと思います。

 

 Op.10に収載された12曲+Op.25に収載された12曲+遺作3曲=27曲全てを学習するのは時間的に厳しいですし、効率を考えるとよろしくないので、Op.10-4Op.10-8、以前学習したOp.10-12(革命)に絞って取り組みました。

 Op.10-4とOp.10-8については、再開して初めて楽譜を見た作品です(この時点でだいぶ問題が有る気がしますが…)。

 

 そこで、ショパンエチュードOp.10-4と対峙して判った事は、手の開閉が苦手だと云う事、特に右1-4でオクターブを取る練習が必要だと云う事です。

 

 上貼付画像(12小節目;似たような音型が曲中に4箇所登場します)の橙色で囲んだ部分、減速しがち。私の要注意箇所。

 対策;Op.10-1の最初の10小節の右手部分を両手に変更して繰り返し、各指の開きを上行・下行共に鍛錬する

 

 上貼付画像(44小節目)の赤で囲んだ部分、インテンポになると白鍵→白鍵の右1-4を開き切れずミスタッチを起こしがち。私の要注意箇所。一時期は運指について右5を使って次を4で取るオーバーラッピング(手の小さい人は一度ぐらい考えた事が有るのでは…?小回りは利きますから…)も考えたのですが、今後「英雄ポロネーズ」にて登場する右1-4で取るオクターブはどう考えても不可避(「英雄ポロネーズ」の場合、更に右4,5でトリルまで付いている)なので、右4から逃げるのは適切では無いと判断し、右4を採択しました。

 Op.10-4の攻略を最終目標とするのなら、赤で囲んだ部分を右5で取ってオーバーラッピングした方が私にとっては明らかに効率の良い方法ですが、「その後」の事を考えると、この攻略法は根本的な問題の解決として使えないので敢えて右4で練習しました

 対策;意外に使えるのがモーツァルトのトルコ行進曲のオクターブ部分を全て1-4で取ってみる(※完全なる個人的見解ですが、ゆっくりであれ、トルコ行進曲のオクターブ部分を全て1-4で取れれば手が小さい事を懸念している人も、手の大きさと云う観点では英雄に挑戦しても差し支えないと思います)

 

(※全く書き込みの無い楽譜が全音楽譜出版社の物しか見当たらなかったので、全音楽譜出版社のものをupしました)

 

 よく、一般的な有名曲について、「攻略法」なるサイトが出回っておりますが、最終目標がその曲「だけ」なら有益な情報が詰まっている事が多いと思います。ただ、付け焼刃でその曲の難所を乗り切ったとしても、その技術が他の曲に通用するかと云うとそうは言えないと思うのです。勿論、その曲「だけ」を目標とする方々や、「他の曲」でもまた新たな攻略法を次々産み出していく自信の有る方、「他の曲」でも攻略法サイトが出る事を信じてそれに頼って練習すると決めている方なら良いと思います。

 しかし、或る1曲を「攻略」する為に絞り出された知恵(習得した「技術」とは呼びません)は、問題の本質から逃げているだけの事が多く、結果的に他の曲を練習する際の遠回りになっている事が多いと思うのです。

 英語の一文だけを丸暗記して、その文法の成り立ちや品詞について全く理解せずに「その一文だけ」流暢に発音出来ていても、英語力が向上したと呼べないのと同様の理論です。昔、英語教師の方が、英語の勉強はピアノの練習に酷似していると仰っていたのを思い出し、あながちこの自己流の解釈も間違ってはいないのではないかと思います。

 決して攻略法云々を批判する訳では有りませんが、私は、試行錯誤した結果、地道な努力を積み重ねて基礎力を上げる王道が一番の近道だと云う結論に至りました

 

 

 大問題箇所は上述の2箇所で、強弱やアーティキュレーション以前の問題として、そもそもインテンポで通して演奏しようとすると、どうしてもミスタッチを起こしがちで、その原因として手の開閉の甘さに問題が有る事、そしてインテンポの2/3の速度ならば出来ると云う事実から、9度の和音を同時に押さえるのが無理等と云った対策の術が全く無い物理的な問題では無く、まだ改善の余地が有る練習ポイントだと認識し、丁寧に対策していく事で手の柔軟性を高めつつあります。

 この対策が奏功したのか、「英雄ポロネーズ」の10度のアルペジオも以前より取りやすくなった気がします

 

 

 「英雄ポロネーズ」の難所の中に、中間部の左手のオクターブ連打前奏のオクターブ連打が有り、「英雄ポロネーズ」に限らず他の曲についても左手のオクターブ連打からはどうあがいても逃げられませんから、まずはOp.10-4の上貼付画像の赤で囲んだ部分の運指について、白鍵は1-5、黒鍵は1-4と決まったパターンだけで無く、考えられ得る様々なパターンを試してみました。

 

 肝心な「英雄ポロネーズ」は、散々言われておりますが、体力必須です。

 あくまでも体感に過ぎませんが、革命3回分より消費エネルギーは多いと思われます。

 私は練習前のストレッチも指練習とは別に必須です。

 慣れない曲に於いては、椅子に座った状態で重心移動する癖が付いていないので、自然にその癖が付くまでが大変だと思います。

 沢山食べてから練習に臨んだ方が良いと思います

 そして、実はスケールも重要なので、子どもの頃に散々取り組んだであろうハノン39番変イ長調のスケールを毎回練習着手前に数往復しています(…どの曲の練習前にもやらない人の方が珍しい…?)。

 

 こんな事を言っては身も蓋も無いのですが、「英雄ポロネーズ」よりもショパンエチュードOp.10-4の方が難易度高い気がしてならないんですよ…。「英雄ポロネーズ」に求める完成度が恐ろしく低いだけかもしれませんが…。

 実は、本日初めてOp.10-4をインテンポで鳴らす事(アーティキュレーションが不完全過ぎて「奏でる」レベルでは無い事は充分弁えております)に成功し、本当に何か壁を乗り越えたようで、浮かれているだけかもしれませんが…。

 それが、明日Op.10-4の練習に取り組まなければ弾けなくなるのです。

 本日がピークでは無意味なんですよ…。

 基礎力を強化して花を咲かせるのも難しいですが、一度咲かせた花をずっと枯れさせないよう状態を保つ事の方がピアノについて言えば実は難しいのが悩みの種です。

 

 本記事を将来読み直した時、こんな基礎的な事で悩んでいた事に呆れる事、何か誤解していたと悟る事を願って、投稿ボタンを押下いたします。