数日前から、ショパンの有名曲「英雄ポロネーズ」の練習に取り組んでおります。

 実態としては、10年以上前に10度以上のアルペジオが続く事に困難を覚え、一度練習を保留し、つい先日まで眠り姫と化していた曲ですので、練習を再開したと表現した方が適切でしょうか。楽譜を探し出した時点で、眠り姫を起こし、救い出す英雄のような気分に浸りながら練習に挑んだ訳ですが、10年以上の年月が経過したからと言って私の手が大きくなった訳でも無く、幾つか考えた事が有ります。

 

 聴くだけでも勇敢な印象を受ける「英雄ポロネーズ」は、演奏する為に要求される技巧の難易度が高く、更に手の大きさによっては楽譜通りの半9度~10度の和音を掴めないと云う問題が生じると思います。10度の高速アルペジオが連続する箇所が頻出するので、全て高速アルペジオで逃げ切れば理論的には演奏可能ですが、10度の高速アルペジオの連続に慣れていない状態の手の持ち主が無理をすると、怪我etc.手に何らかの支障をきたす事も有ります

 したがって、幾つか考えられ得る対処法の一つとして、空いた片方の手を加担させる事、もう一つに、旋律にあまり影響を与えない程度に音を抜く事が挙げられます。

 前者の方法に関して、両手共オクターブ以上の和音が出現する本曲に於いては使用できるのは主題部の最後の方に出現する1箇所のみにしか有効で無く、後者に至っては、邪道だと罵られそうな気がします。 

 そこで、挙げられるもう一つの方法が「このようなオクターブ超の和音が頻出する曲を演奏するのは諦める」であり、10年以上前に私が取った選択肢がまさにこれです。

 そこまで英雄ポロネーズに執着していなかったと云うのも理由の一つですが、自分の体格や手の大きさを冷静に見ると、オクターブ超の和音が頻出する曲に挑むのは物理的に無理な事を受容する方が賢明だと判断した結果です。

 

 しかし、ショパンエチュードOp.10-412度のアルペジオに対峙して考えたのですが、「英雄ポロネーズ」をはじめとしたオクターブ超の和音が頻出したところで、高速アルペジオで以て換えられるのならば非常に難関ではあるけれど不可能ではないのではないか、と云う事です。

 また、12度では無く、10度に関しても、ショパンエチュードOp.10-4の49小節目及び50小節目に出現する左手の10度の和音は、手の親指と小指を180度可能な限り開いたところでオクターブを押さえるのが限界である場合、高速アルペジオとして演奏せざるを得ません。尤も、この部分について言えば、楽譜の出版社によってはアルペジオの記号が記されている事も有るので、特に問題では無いでしょう。そもそもショパンエチュードとは、読んで字の如く「練習曲」ですので、左手の10度の和音を高速アルペジオにする事により、この曲を練習する事により学ぶ事の本質が損なわれる事は無いと思われます。

 

 今回は、曲を完成させると云う目的よりも、「とりあえず高速アルペジオを駆使して英雄ポロネーズを攻略する方法」が現時点でどこまで通用するのか、と云う観点で暫く練習を続けていこうと思います。

 手の大きさは変える事が出来ませんが、手の柔軟性を高める=手を開く為の練習として、ショパンエチュードOp.10-1の最初の10小節を繰り返して弾く事が非常に効果的です。ただ、これでは右手のみの限られた練習になってしまうので、Op.10-11に真摯に取り組む事も検討中です。

 

 「英雄ポロネーズ」の楽譜をさらってみた全体的な感想として、両手ユニゾンのスケール部分は然程困難を感じる事は無いのですが…と云うか、単音の部分に手こずる気配は無く(表現まで考え出すとこれが極めて困難な部分に豹変しそうですが)、ひたすら連続アルペジオの克服中間部に出現する左手のオクターブ連打の攻略法が鍵を握りそうです。

 そして、前奏部分の運指には熟考の余地が有りそうです。

 複数個所音を抜かざるを得ないのならば、この曲の魅力を損なう事になるので、再び眠らせざるを得ません。

 

 手の健康に留意しながら練習継続の可否を判断して進めていきたいと思います。