『My First HERO』77 | 木村春翔のブログ小説『My First HERO』

木村春翔のブログ小説『My First HERO』

「My First HERO」は自叙伝小説

その人は私の人生の良き先輩で、
私にとっては一番身近なヒーローだ。

My First HERO-77-

「番号が…ない!」
10月早々に予想外の事態が起こる。
誰もが受かると思っていた試験に森山くんの受験番号がなかった。
それはつまり不合格を意味する。
後にそれは非常に理不尽な理由からの不合格とわかるがこの場では伏せておく。

「向こうの家族への挨拶は延期にしたら?今の状態じゃかえって返り討ちにあうよ。」
母に報告するとそのように返事がきた。就職先も決まってないこのタイミングで梅子がしゃしゃり出ては確かに返り討ちにあうかもしれない。
「10月に挨拶したかった、どうしても…。」頭ではわかっていても気持ちは納得できなかった。だが梅子はそんな気持ちを理性で無理矢理抑えつけた。

半月ほどかけて話し合い、森山くんは梅子の地元で講師の希望手続きをした。
この頃からただでさえ梅子にベッタリな部分があった森山くんがさらにベッタリになり始めた。
だが梅子も最初はストレスだと思い、さほど気にしなかった。

それから間もなく、彼が実家に帰ることがあった。
そして夜彼が帰ってくると、
「やっぱ俺こっち来年も受けようかなって。」
「!?」
梅子に衝撃が走る。理不尽な理由で落ちたのに彼のお母さんに丸め込まれて彼は優柔不断になっていた。
梅子の中に疑問がわく、「果たしてこの人でいいのか?」と。
それと同時に梅子の体調も悪化。
安定していた体調はうつ病の症状がひどくなり一気に寝たきりの生活が始まる。
この時点でようやく森山くんは元の進路に戻した。
しかし梅子への依存度も高くなる一方だった。

時はすでに遅かった。