『My First HERO』68 | 木村春翔のブログ小説『My First HERO』

木村春翔のブログ小説『My First HERO』

「My First HERO」は自叙伝小説

その人は私の人生の良き先輩で、
私にとっては一番身近なヒーローだ。

My First HERO-68-

梅子がバイトを辞める辞めないで心が激しく揺さぶられると、解離性同一性障害が出てくるようになった。
しかし今回の交代人格は名前も何もない女の子。
副人格の栗原梅子が本格的に主人格である栗原梅子を乗っ取ろうとしてきたのである。
「お嬢さん、名前は?」
『わからないです。』
「主人格の栗原梅子さんに身体返せない?」
『どうやって返せばいいのかわかりません。それに怖いお姉さんが身体を返すなって言うんです。』
「怖いお姉さんて?副人格の栗原梅子さん?」
『…わからない、でもとても怖い人、すべてを支配する…。』
ここで小野田先生はキーワードとなることばを言った。
「じゃあ、梅子さんの家族に連絡しないと。」
すると梅子の身体はまた机に伏せるようにして倒れた。

そうしてやっと「栗原梅子」に戻る。
長い時で一時間以上、梅子は人格交代していた。

「まずいねぇ…。」
「…すいません。」
「まずいって人格交代するとあなた戻ってこないことよ。」
が、梅子には記憶がほとんどない。
「家族に連絡して、バイトも辞めて、しばらく実家で過ごしたら?」
「!家族だけは…連絡したくないです。森山くんのこともありますし、私こっちにいたいです!」
中の人格だけではない、主人格である栗原梅子自身家族に自身の事実を話すことを拒んだ。

そう、キーワードは「家族」。
家族との関係を改善しない限り、解離性障害の回復の見込みはなかった。