その人は私の人生の良き先輩で、
私にとっては一番身近なヒーローだ。
My First HERO-65-
7月、梅子は来年度からの休学を決断する。
解離性同一性障害は少しずつ落ち着き始めた頃、世の中は「いじめ自殺」で騒がしくなっていた。
そんな時ニュースで過去のいじめを訴訟する人が増えているということを知った。
梅子の心は一気に騒がしくなった。
「謝罪はいらないが治療費の一部を払ってほしい。」そう思った。
あの期間がなければもしかしたら自分は…そう思うだけで憎しみと悔しさがこみ上げた。
しかし、小野田先生も両親も気が進まなかった。
「過去よりこれからを見つめてほしい。」
同じことを言われた。
だが梅子は納得してなかった。
いじめたアイツは家庭持って幸せに暮らしているのにどうしていじめられた自分はこんな体調で仕事もできないのか…。
いじめた側はその時で終わりかもしれないがいじめられた側は一生もの。
あまりに不条理過ぎる。
その直後、梅子の体調は悪化した。
夕食はすべて吐き戻し、身体が異常なほど痛みを訴えた。
門限は過ぎていたが森山くんが緊急外来がある総合病院に連れて行ってくれた。
血液検査の結果は異常なし。
身体の痛みはストレスからくるものだった。
梅子は泣いた。
ただただずっと。
私はなぜ今こんなに苦しんでいるのかと。