名取市役所1階ロビーに設けられた行方不明者の手掛かりを探す掲示板の片隅に、1枚の紙が張り出されている。
「最愛の妻と生まれたばかりの一人息子を大津波で失いました。いつまでも二人にとって誇れる夫・父親であり続けられるよう精一杯生きます」
西城さんが被災者に向けて書いたメッセージだ。
妻で同僚職員の由里子さん(27)と8カ月になる直人ちゃんの命が3月11日の大津波で奪われた。
震災当日、職場で激しい揺れに襲われた。由里子さんは直人ちゃんと同市閖上の実家にいるはずだった。気になって携帯電話を鳴らしたが、つながらなかった。
間もなく、津波が閖上の街を襲った。「すぐに2人の元に駆け付けたい」。そう思いながら支援物資を市役所に運搬する作業に当たった。
仕事を終えたのは12日午前2時ごろ。自宅に戻った。「寒い思いをしているだろう。おなかを空かせているかもしれない」。自宅にあった袋に毛布や菓子を詰め込んだ。袋の数は七つになった。
実家周辺は水浸しで近寄れない。避難所を車で巡ったが、2人はどこにもいなかった。不眠不休で出勤した。
13日、避難所で会った義母から震災時の様子を聞いた。義母は2階にいて難を逃れたが、1階にいた由里子さんと直人ちゃんは津波にのみ込まれたと知らされた。
目の前が真っ暗になった。
15日、市内の安置所で直人ちゃんと対面した。今にも起き出しそうな優しい表情で、小さなひつぎに横たわっていた。
死亡届を受け取った同僚は目を潤ませた。西城さんも涙がこみ上げた。
翌日から、夕方になると安置所に通い、直人ちゃんにいろんなことを話して聞かせた。
「お母さんと初めて会ったのは3年前だった」
同じ部署に配属され、会話してすぐに気が合ったこと。3カ月後にプロポーズをしたこと。2009年に結婚したこと。
「直人の名前を付けたのは真っ直ぐな人になってほしい願いを込めたんだよ」
毎日1時間、ひつぎの前で語り掛けた言葉は、成長した息子にいつか教えたかった2人の思い出の数々だった。
由里子さんの身元は18日に確認された。だっこひもを身に着けたままだった。
「最後まで直人を守ってくれていたんだね。ありがとう」
そばで泣き崩れた。
家族がいない事実に押しつぶされた日もある。涙が止まらなかった日もある。でも、泣き終えた後は「もう負けない」と誓った。
保険年金課に所属する。悲しみをこらえ、市民に保険証を再発行する仕事に従事する。職場の机の引き出しに忍ばせた親子3人の写真を見て、自分を励ます。
西城さんのメッセージは、こう締めくくられている。
「被災されたみなさん、苦しいけど負けないで!」

27日の河北新報の記事です。
なんだろう。言葉にならないです。
「最愛の妻と生まれたばかりの一人息子を大津波で失いました。いつまでも二人にとって誇れる夫・父親であり続けられるよう精一杯生きます」
西城さんが被災者に向けて書いたメッセージだ。
妻で同僚職員の由里子さん(27)と8カ月になる直人ちゃんの命が3月11日の大津波で奪われた。
震災当日、職場で激しい揺れに襲われた。由里子さんは直人ちゃんと同市閖上の実家にいるはずだった。気になって携帯電話を鳴らしたが、つながらなかった。
間もなく、津波が閖上の街を襲った。「すぐに2人の元に駆け付けたい」。そう思いながら支援物資を市役所に運搬する作業に当たった。
仕事を終えたのは12日午前2時ごろ。自宅に戻った。「寒い思いをしているだろう。おなかを空かせているかもしれない」。自宅にあった袋に毛布や菓子を詰め込んだ。袋の数は七つになった。
実家周辺は水浸しで近寄れない。避難所を車で巡ったが、2人はどこにもいなかった。不眠不休で出勤した。
13日、避難所で会った義母から震災時の様子を聞いた。義母は2階にいて難を逃れたが、1階にいた由里子さんと直人ちゃんは津波にのみ込まれたと知らされた。
目の前が真っ暗になった。
15日、市内の安置所で直人ちゃんと対面した。今にも起き出しそうな優しい表情で、小さなひつぎに横たわっていた。
死亡届を受け取った同僚は目を潤ませた。西城さんも涙がこみ上げた。
翌日から、夕方になると安置所に通い、直人ちゃんにいろんなことを話して聞かせた。
「お母さんと初めて会ったのは3年前だった」
同じ部署に配属され、会話してすぐに気が合ったこと。3カ月後にプロポーズをしたこと。2009年に結婚したこと。
「直人の名前を付けたのは真っ直ぐな人になってほしい願いを込めたんだよ」
毎日1時間、ひつぎの前で語り掛けた言葉は、成長した息子にいつか教えたかった2人の思い出の数々だった。
由里子さんの身元は18日に確認された。だっこひもを身に着けたままだった。
「最後まで直人を守ってくれていたんだね。ありがとう」
そばで泣き崩れた。
家族がいない事実に押しつぶされた日もある。涙が止まらなかった日もある。でも、泣き終えた後は「もう負けない」と誓った。
保険年金課に所属する。悲しみをこらえ、市民に保険証を再発行する仕事に従事する。職場の机の引き出しに忍ばせた親子3人の写真を見て、自分を励ます。
西城さんのメッセージは、こう締めくくられている。
「被災されたみなさん、苦しいけど負けないで!」

27日の河北新報の記事です。
なんだろう。言葉にならないです。