徐々に復興が進む東北中の熱い声援を受け、ベガルタ仙台は夏場以降、驚異的な快進撃を続けた。



原動力は、ユアテックスタジアム仙台での圧倒的な勝率だ。



もともとホームでの強さには定評があったが、今年は『がんばろう!宮城・東北』の熱気と、それに押されたベガルタの驚異的な運動量が相手チームを苦しめた。



もう1つの追い風は『南米選手権』と『移籍ラッシュ』だ。



J1上位陣はシーズン半ばの7月に主力を代表に引き抜かれ、さらに、南米選手権での準決勝進出で日本の評価が上がったことで8月には欧州移籍が続出。



ガンバ・遠藤、アントラーズ・本田拓、レッズ・柏木、ジュビロ・前田、グランパス・闘莉王…。



各チームが軒並みバランスを崩すなか、ザックの粋な計らいか、代表選出のなかったベガルタはジワジワと順位を上げていった。



そして、特筆すべきは8月に行われた緊急補強だ。



チームにさらなる勢いをもたらすべく、仙台サポーターからいまだに絶大な人気を誇る岡山一成(スペイン3部・トレド)、そしてあの『キング・カズ』こと三浦和良(J2・横浜FC)を電撃獲得したのだ。



スーパーサブとしてゴールとダンスを量産するカズ。



試合に出ても出なくても、サポーターの熱気をさらに煽る『岡山劇場』の復活。



こうしてベガルタの奇跡は最終章を迎えた―。











【12月3日 ユアテックスタジアム】



最終節を残して8チームが勝ち点3差以内にひしめく大混戦のJ1。



首位のベガルタは勝てば初優勝が決定。



対するヴィッセル神戸は、大量点差での勝利が絶対条件となる。



『プロだから勝ちにいかなければ…』



試合前、ヴィッセルの和田昌裕監督は自分に言い聞かせていた。



S級ライセンス取得の同期で、親友のベガルタ・手倉森誠監督がどんな思いでシーズンに臨んだか―。



それを知っているからこそ、心境は複雑なはずだ。



試合開始とともにベガルタは猛烈なプレスをかける。



ヴィッセルも必死でラインを押し上げるが、裏のスペースに関口、梁勇基の日朝代表コンビをはじめ、黄色いユニフォームが次々と飛び込む。



ベガルタペースのまま、0‐0で試合は進んだ。



後半20分、地鳴りのような歓声が鳴り響く。



柳沢、カズという『ジョーカー』2枚が同時投入されたのだ!



『仙!台!レッツゴー!』



後半35分、こぼれ球を拾ったカズが敵陣深くへ侵入し、ゴール正面やや右から右足を振り抜く!



DFに体を寄せられジャストミートできなかったシュートは左へ転がり、吸い寄せられるようにあの男の足もとへ―。









『急にボールが来てくれたので』



試合後、記者に囲まれた柳沢はそう言って笑った。



2006年ドイツW杯での『QBK事件』から5年、ついにあの呪縛から解き放たれたのである。









カズ、柳沢を中心に選手たちは喪章を掲げる。



残り10分、ヴィッセルに反撃する力は残っていなかった…。



試合後、手倉森監督は号泣しながらマイクを握って叫んだ。



『星野さん、青葉通りで待ってます!!』











今週発売された週刊プレイボーイの記事ですメモ



楽天とのW優勝。



確かに千年に一度の奇跡だけど、千年に一度の災害の後だけに、こんな奇跡が起こっても不思議ではないですよね。