こちらの作品は私のオリジナル作品です。
他サイトで投稿しているものをこちらで載せています。
盗作では有りません。
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「そういや、話はがらりと変わるが。旦那、あんたいい女将さんもらったもんだな」


「…………急にどうなすったんです?」

蘭の話がでて、意外に感じながらも問う


「南方さんの一途さで思ったんだが、女将さん、来たばっかりだというのに、既にこの店の為想いやって、頑張りはってますなぁ……………見ていて、頼もしい限りですわ」


「………………蘭が?」


「旦那は、ここにいんかったから、知らんだろうが…………あんたが商いから遠ざかって、わしら取り引きもんにとっちゃ、大丈夫かいなと不安じゃった

特に、ほらぁ~………あの、旦那と幼なじみの…………いつも一緒にいた貿易商人」

頭をペチペチ叩きながら、必死に思いだそうとしている


私の幼なじみで、貿易商人といったら、八朗しかいない


「………八朗ですか?もしかして…………」


お互いたちっぱだった為、どうぞと縁側に腰掛けるよう促しながら、答える


「あぁ~、そや、八朗や八朗

その八朗がな、でかい声だして女将はんに向かって言い張った

『商いについてなんも知らん女朗が、若旦那がいないからとしゃしゃりでるでない!あんたに話してもなんもならへん』てな?

えらい剣幕やった」


「八朗が?そんなことを?」


私は信じられない気持ちで呟く


八朗はどちらかと言うと、おっとりした気立ての優しい奴で、そんな風に他人を叱咤するところなんか見たこともなかった


「そしたらな?
今まですんませんと頭を下げていた女将はんが、勢いよく頭あげてな?」











『ちょいと旦那
今の言葉聞き捨てなりんせんな?いくら旦那といく親しいお方でいらっしゃるとしても、女朗やからと差別用語をいけしゃあしゃあと口にするのはどうでありんしょか?

確かにあちきは、商いには慣れておりんせん。
しかし、旦那が商いから離れてしまった以上、妻となったあちきがこの店を支えていけるようにならなあかんと、ここにいる榊原や、店の社員さん方に、手取り足取り教えてもらい、だいたいの商いの仕方は理解しているつもりでやんす


ほんでなければ、こな所に顔なんぞ出しんせん
それに、言わして貰えば、女朗といえ、同じ人間
商いはできしんす
貿易商人の方が、相手を肩書きだけで差別するんは、間違っていんせんか?

それでは、ほんに貴重な商品は手に入らんし?

親しかった旦那に対して、失礼にあたりますので、旦那がいないからと言っても、取り引き相手がいらっしゃるこういった所では、そういった失言はお控えくんなまし』






「そう言って、ピシャリとその場を治めてしまったんや」


「……………そうですか」


私は、つい照れ笑いをしてしまう

『妻となったあちきがこの店を支えていけるようにならなあかんと………』


妻…………、納得の行かない身請けで嫁いできたはずの蘭が、自らそう言ってくれていたとは………



『本人が自覚しとらんだけで、本当は、気を許しとる証拠なんや………』


以前伊里早の旦那が言っていた事を思い出す