こちらの作品は私のオリジナル作品です。
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「……………蘭」


私は、目を覚まさない程度に、軽く夕蘭の目に掛かった髪を払い除ける

泣き腫らした顔が、なんとも痛々しいことか……………

私は、顔をしかめながら、先ほどの話を思い返す


『…………なぁ旦那、確かに夕蘭が自分を見てくれへん事に、イラついたり、悲しくなったりするかもしれへんけど、


夕蘭を好いてるなら…………まず、夕蘭のココロを、救ってくれへんか?

あの娘の傷付いたココロを、救って欲しい

それからでも、遅うないで?』


『…………憎まれてる私が、救うことなんかできますか?』


『…………できる

なんせ、あの娘が本に憎んでるんは、自分なんや

旦那や大旦那のことは、さほど憎んでおらへんと思うで?

ただ、あまりの憎悪の大きさに、自分でもどう扱ったらええんかわからんき、旦那にあたってるんやと思う


まぁ謂わば、子供の癇癪やな?』


伊里早の旦那は、そう言って苦笑いしていた

「…………私にできるかわからないが…………

蘭…………お前
のココロを、助けたい」

私は、ゆっくりと、夕蘭の露になった額に口付ける

今まで取っていた無責任な行動を恥、気持ちは、謝罪でいっぱいだった

夕蘭が、私に本当の名を呼ばせないのは、ただ単に、私のことを嫌っているからだと、理由を聞く事もせずに決め付け


夕蘭の心には、あの亡くなった澄舞という姐女朗しか存在しなく、入り込む隙がない事にショックを受け


素っ気ない態度に腹立てた挙げ句、仕事を放棄して夕蘭に任せて……………



内心、夕蘭の本当に好きなのは、あの伊里早の旦那なんだ、だから私を嫌っているんだと嫉妬もしていた


1人で、見知らぬ家に嫁ぎ、挙げ句慕っていた姐女朗が、今回の本身請けで自害し、深い傷を背負ってここに来ていたのに……………

私は自分のことばかりで、そこまで見ようとも、考えようともしなかった……………


「本当につらかったんは………蘭、お前やったんやな…………ほんに、堪忍や…………」


悔しくて、涙が溢れてしまう


私が、支えるべきなのに…………

私が、守るべきなのに…………


逆に、私が夕蘭を苦しめ、追い詰めた……………


「………っ、」


夕蘭の頭の上、空いていた部分に自分の額を押しつけ、声を殺して泣いた


今度から、何があっても私は、夕蘭の側にいようと心に誓う


自分の気持ちは、夕蘭の心の傷を癒せた時に、伝えよう



それまでは、後回しだ


ゆっくり顔をあげ、そんな事を思ったときだった



「…………ん、………」


夕蘭が、顔を顰めて、ゆっくり目蓋を開けたのは………