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カコン、カコン


「………旦那」

「………夕蘭やないの」


「おひさしゅうございます。伊里早のだんな」


墓の前で、両手を合わせていると、すぐ横からきれいなリズムで下駄を鳴らしながら、夕蘭が立っていた


「………女将はんから、ここにいると伺いましてな?」


「そうか、………」


伊里早は、笑みを浮かべながら言う


「…………もう……49日が過ぎようとしてるんやな………」


「………あい、明後日、赤潮の屋敷にて身内もんだけでやります。旦那にも、参列してほしいとおめいましてな。報告しにきやした。」


伊里早に言われて、静かな声で言いながら、夕蘭もおなじように墓の前にかがみ込み、手を合わせる


「………伊里早の先妻の方も…………赤潮の出の方でやんしたなぁ………」


「………せや、」


伊里早は、じっと、目の前の墓を見つめる


「……朝霧というてな。

そらぁ、ようけべっぴんな女子やった…………


透き通るような白い肌で、笑顔かなんともいえんかった…………」

「………
………」


懐かしむような顔で言い放つ


夕蘭は、目を細め、下を見つめる


伊里早の先妻、朝霧は、伊里早に見初められ、身請けとして嫁いで来ていた

しかし………嫁いで1年目を迎えようとしていた矢先、仮身請けだった問屋の旦那が、朝霧を取り返そうと、乗り込んできたのだ

朝霧は、伊里早を守ろうと庇って刀の餌食になり、亡くなっている…………



「………朝霧の姐さんは………幸せやったと思いますよ」


夕蘭は、静かに言い放つ


「…………なんでや?」

「…………好いた人間守って逝くのは、ある意味満足感が得られるからです…………


好いた人間を………守ることも、ましてや手に入れる事も叶わず…………あの世にいくんは一生の悔恨………姐さんのように…………」



最後は、絞りだすような声で言い放つ