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Prologue




「何を見ているの?」



障子が空いてる片方の部分から、頬杖を付きながら外を眺めていると、後ろから声がかかる



「姐《あね》さんやないの…………こんな夜更けになんか用でやんすか?」



相手を確認すると、ニッコリ笑いながら迎え入れる


「赤潮の旦那が、あんたが離れの屋敷に居てはる言うたから、顔見せにきたんや



元気かぇ?」



姐さんは、クスクス笑いながら近くに腰を卸す



「見たまんまです


姐さんは?なんやニコマコしてますなぁ?



善いことでもありんしたか?」



私は、姐さんを見つめながら問う


「………わかるか?



実はな?ほんまもんの身請けが決まったんや」



「……………ほんまですか?」



姐さんの言葉に、騒然としながら答える



私らは、世で言う遊女



自分の体で、金を返すんが習わしの世界で生きてる



ただ、他の遊女と違うのは、私ら赤潮の遊女は、期間付きで仮の身請け人を探すのが決まりとなっていること


もちろん足抜けはご法度


仮の身請け人は、ちゃんと身の内がはっきりしている旦那に限る


その旦那から、期間中の金だけもらい、旦那達の監視の元暮らしていくのだ



いわばまとめ貸し


期間中ほんまもんの身請け人が決まれば、そのままそこへ嫁ぎ、借金の返済をする



期間中に見つからなければ、また赤潮に戻り、今までの倍の金額返済を余儀なくされる


甘い汁だけは吸わせない

約束を守れんかった当たり前の罰