セミナー講師ってかっこいいですねー。

そんな素敵な先生業に憧れますね。

 

 

 

 

さて、

 

ここで、聖父くんに登場してもらいましょう。

いかにも怪しいですね・・・。

やばそうな名前です。

 

聖父くん

「水素分子2個と酸素分子1個で2分子の水ができるのは中学の教科書にも書いてある。水素ガスは抗酸化作用があるのではないか?」

 

中学 理科 教科書 に対する画像結果

 

聖父くん

「僕は勉強家なんでね。科学的メカニズムを考えれば当たり前のことだと思うんですよ。ちゃんと教科書で学んでいます。」

バーーン!!ドヤァ

あんちょこーー!

 

聖父くん

「この本によると、酸化ストレスにより内臓脂肪の慢性炎症が起こっている。それを抗酸化剤の水素ガス吸入で抑制できれば痩せるだろう。科学を知れば当たり前のこと!」

 

~~~1年半後

 

聖父くん

「俺は痩せた!俺の理論は正しかった!セミナー講師になって俺の水素理論を広めよう」

image

 

2型糖尿病のAさん、いままで何をやっても痩せなかったので「水素ガスを吸うだけで痩せる」という簡単な方法に飛びつく。

結果、1ヶ月で2kg体重増。

・・・体重2kgなんて大したことないと思われます?

実際には内臓脂肪500gの変化でもアルブミン尿は増減するのですよ。

その後、水素ガス吸入は中止したものの2kg増加したまま体重は減少せず、アルブミン尿は持続し5年で血液透析導入となりました。

 

聖父くん

「俺は痩せた!俺の理論は正しかった!Aさんは特異体質だったんだ。」

 

・・・その後の調査で、参加者10名の1ヶ月間水素ガス吸入の成果は、平均2kgの体重増加と判明する。

 

聖父くん

「俺は痩せた!俺の理論は正しかった!なのにどうしてみんな太ってしまうんだ?」

水素ガス(水素水も)は、グレリンを介して食欲を増進させるんだわ。だから、水素ガスで太ったというのは既知の効能なんですよ。

 

聖父くん

「ええー!知らなかった。では俺はどうして痩せたんだ?」

筋肉痛が緩和されて筋トレが捗ったんちゃう?

または特異体質とか・・・。

まあ、そもそもn=1のちなソースは俺では減量できたとしても再現性に欠けるよね。

 

で・・・どうするの?

Aさんは血液透析になってしまったよ・・・。

不適切な人体実験をしてしまったんだね。

 

 

 

 

 

 

 

では、聖父くんは最初の「酸化ストレスにより内臓脂肪の慢性炎症が起こっている。それを抗酸化剤の水素ガス吸入で抑制できれば痩せるだろう。」という思い付きを得たらどうしたらよかったか?

 

 

当たり前ですが、中学校の教科書や看護師用のあんちょこ読んで知識を得たつもりになっててはダメですよ。

あれは勉強するためのものではなく、既に成書で勉強した人がちょっと見て自分の知識を確認するための本です。

 

成書とは例えばこれ、減量その他代謝を学ぶ目的なら糖尿病関係の教科書でということでお勧めです。

Joslin's Diabetes Mellitus https://amzn.asia/d/bNaOSDg

 

また、pubmedで過去の論文を検索します。

 

引き続き、検索や成書で得た既報をEBMの図に当てはめて、現在の研究はどこまで行っているか確認する。

image

 

 

実際のフローはこちら、

 

 

EBMの図だけ拡大すると、

既報で動物実験レベルでも水素ガスも水素水も食欲増進と太る効果はあっても痩せる効果は無かったですね。

パーキンソン病は食欲が無くなり痩せる病気ですしね。

 

ここでも、まだ瘦せる効能があるに違いない!と思うなら、動物実験モデルで実験してくださいね。

 

中学校の教科書からでも想像できる抗酸化剤としての水素ですが、人体のメカニズムは俄かのアマチュア研究家が解明できるほど甘くはないということです。

 

グレリンでたかだか2-3キロ太るだけででタンパク尿が増えて2型糖尿病の患者さんが血液透析導入まで悪化するかもしれない。この例のように実際に理論上有効と考えられるのに、結果として特に効果が無いどころか重篤な副作用がおこることも少なくない。
紙の上で浅知恵の人間が考えた「俺の考える最強の治療」が神の作った人体のメカニズムを容易に解明できるなんて思わないほうがいい。
だから、この段階のことがわかっていないセミナー講師は健康被害の責任も取らずに問題であると警告します。

 

 

ちょっと思うのはね・・・医療系じゃなくとも大卒者で45歳以下の人々はエビデンスベースで思考するように学んでいるはずなのよね。

・・・で、それなのに、「あなたは正しい!先生がんばれ!」と持ち上げる人は何を望んでいるの?

そんなの友達ではないよね。

本当の友達はそこで批判なり非難なりをしてセミナー講師になろうとする人を止める人ね。

誰が本当の友達かわかったかな?多くの人達はそんな本当の友達には気が付かないんだろうけど。

 

 

不適切な人体実験の例

 

 

心屋なんとか

「俺の考えた最強の心理学」

 

なんか・・・もう、いろいろあって、臨床心理士でも公認心理師でもないんで。

彼の考えた心理学が成書に則ってなくおかしいという例はなんぼでも見つかるのでググってください。

 

 

 

 

 

 

セミナー講師

「日本人は和食を食べてきたんだから欧米のガイドラインをそのまま当てはめるのはおかしい。米、漬物、味噌汁の一汁一菜でいい。」

「塩分?高血圧の原因は塩分だけではない、そこまで考える必要はない。」

 

 

素人のセミナー講師が俺ソースで言うことですからエビデンスレベルは欄外です。

 

栄養学はサイエンスですので、ガイドラインがあります。

厚労省が「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を公表


 

↓まあ、米と味噌汁だけでも具材を工夫すれば、これを達成できるでしょう。

 

しかし、

食塩6g/day未満が推奨されていますよ!

若いうちからの生活習慣病予防を推進するため

これ大事。

 

一食の食塩量が例えば漬物2g 味噌汁1.2gなら9.6g/dayになってしまう。

一見イイハナシダナーーーに見えても厚労省のガイドラインを無視するならば、適切なエビデンスが必要です。

まずは人体実験以前に食塩量を6g未満にしないでも米・味噌汁・漬物であれば腎臓病や高血圧にならないというような結果が得られる動物実験をして論文化してください。SHRラット(高血圧モデル動物)を用いて研究すれば良いでしょう。

 

 

 

 

 

他にも、ベジタリアンやら有機農法やら食に関する良いハナシに聞こえるトンデモ科学は仰山ありますよね。

その話を聞いた時は、この図であなたの話のエビデンスレベルはどれですか?と聞いてください。

image

 


医師じゃなくとも専門職じゃなくともこれね。


 


※↑のTwitterの人はたまたま良いこと言ってたから取ってきただけ、私の関係者ではない。その人じゃないけど、このブログはしょーもないバイオインフォマティシャンな内科開業医(M.D., Ph.D. 甲)の監修です。


 

天啓聖母