何の本だったか忘れたが、以下のような内容が書かれていて、表現的に面白いと思ったことがある。

 

「大東流合気柔術の技は、相手の腕等に電撃のような衝撃が走り相手を制することができることから、別名を『しびれやわら(痺れ柔)』と称する。」

 

 「電撃のような衝撃」は、普通に考えれば佐川系大東流で言う「掴み手」、養神館合気道で言う「四ヵ条」、八光流で言う「雅勲」等の技術によるものであろう。しかし、自分にはコレとは違う意味での「しびれ合気」「しびれやわら」の思い出がある。

 

 それは、あるカルチャーセンターで師匠の指導補助をしていた頃の話である。書道や体操、ヨガ、尺八など多彩な習い事を提供するカルチャースクールだったので、その会場は床であり畳ではなかった。一部のヨガ教室やブラジリアン柔術教室等と同じく、はめこみ式ウレタンマットを敷き詰めて、少年少女への指導をしていた。ご承知の通り、柔道着は綿100%ではなく、いくぶんかのポリエステルを含んでいる。その道着でウレタンマットの上を転がりまわるのである。

 ある冬のことであった。小さな小学生に手首を握られそうになったとき、「バチッッ!!」と大きな音がして手首にピンポイントで痛みが走った。そう、乾燥した冬にしか生じない、摩擦による「静電気」である。1回の稽古の間に何度もこの「バチッッ!!」が発生するので、しまいに子供が痛がって稽古を嫌がり始めた。

 いやあ、本物の電気だよ。大人でも一瞬何が起こったのか理解できず、痛みと音に驚くよ。これこそ、「しびれ合気」だよ、「しびれやわら」だよ、小学生が使いこなすよ(笑)。

 

 あまりにも静電気が多発するので、師匠がカルチャーセンターの経営者に申し出て、冬には端の方で加湿器を稼働してもらうこととなった。おそるべし、ウレタンマット。おそるべし、冬の乾燥。おそるべし「しびれ合気」・・・。