相変わらず、熟女パブで検索が多い。
先日、11月11日、「ポッキーの日」に、個人的には「ボッキーの日」となるべく、上野のランジェリー熟女パブに、逝ってきた。
この店は、九月初旬にも一度、訪れている。およそ二年ぶりの訪問であった。
その際、俺の手を握り締め、湿った目で顔を近接する、いわゆる「イチャ営」「ベタ営」の女がいたので、今回、指名してみた。
しかし、二ヶ月前に訪問し、「また来てくれるの待ってるねー」という営業メールを一度貰ったきり、女とはLINEのやりとりをすることが、絶えてなかった。
女のほうも、一度としてメールを寄越さない。これは完全な「営業割り切り型」の嬢だとはわかっていたものの、何しろ11月の11日。すべてが↑を向き、怒髪天をつき、勢いづいてしまったので、「バビロン再訪」ならぬ「ランパブ再訪」を果たしてしまったのである。
しかしやはり、結果は失敗であった。以前からの知り合いである店のマネージャーだけが感激し、再訪を喜んでくれ、嬢に「今日はいいことがあった日だねえ!!!!」と声をかけてくれるが、嬢のほうは「はあ?」などと聞き返したりしている。
前回は女は寡黙であったたために、気付かなかったが、言葉遣いの悪さも気にかかった。
もう若くはなく、三十代だと思うのだが、
「ミッチー、何の仕事してんの?」
などという口の利き方をする。タメ口は別に構わないのだが、どこかキツイ感じなのだ。俺はキツイ女は徹底駄目なのである。
見れば、俺以外にも指名がふたつ、被っている。一人は亀井静香似の完璧なオヤジで、これは俺の眼の前の席に座っている。もう一人はクルクルパーマの大泉洋をちょっと精悍にしたような奴で、そんなにトシはいっていないであろう。
女が席を外し、俺はトイレに立ったときに、チラッと大泉洋のほうを見てみた。案の定、女は大泉洋の手をしっかりと握り締め、イチャ営をしている。
「マーフィ キャバ蔵の法則」にあるとおり、「イチャ営する女は、特定のお気に入り客にだけでなく、全員にイチャ営業をする」のである。だから、自分だけがモテていると思ってはならない――
しかし、この女、今回はあまりミッチィに対してはイチャ営をしてこない。向かい側に亀井静香似がいるからかもしれないし、若干、警戒しているような感じもある。
「はじめよくて、あと悪し」とは、水商売の女の特徴について吉行淳之介が書いた言葉であるが、この女も、まさにそんな感じである。掴みばっかりで、客をつなぎとめる握力がないのだ。
会話もはずまない。間も悪い。そのくせ携帯をとりだして、
「ミッチーの誕生日いつなの」
と聞き、データーに移そうとしている。「何年の生まれなの」とまで聞いて来る。
「そんなこと聞いて、どうするの」
「知ってたっていいじゃん」
これが誕生日にメールのひとつでもくれるような、気遣いのできる子なら、嬉しいのだが、どう見てもそういうタイプではない。断るのも悪いので一応教えはしたが、単に個人情報をダダ洩らししているような気がしてくる。
事実、店をでてから数時間後に、お礼メールらしきものが来たのだが、これが呆れたことに「今日はありがとう」というラインのスタンプを一個、押しただけのものだったのだ。
お礼メール一つ返せない奴が、どうして生年月日を携帯に入力するのか……俺は頭を捻らずにはいられなかったのである。
俺はウサギがポテチを食べながら「ふーーん」と呟いているスタンプを押し、
「驚いたな。お礼メールが、スタンプだけとは……」と返信した。
すると、翌日になって、
「朝起きたらまたラインしようと思って起きたんだけど、寝坊した」とあり、
「昨日は久しぶりに会って、お話が出来て楽しかったです。ありがとうございました」
と、とってつけたような決まり文句が添えられていた。
おそらく、俺が不平を伝えなければ、御礼のスタンプ一個で終了していたであろうことは、想像に難くない。
女は「私はメールは苦手なの。昼も夜も仕事しているから」と、キッパリと言っていた。
「メールが嫌い」と公言するなら、キャバ嬢などやらなければいいと思うのだが、この女の場合、それでも常連客はちゃんと来ているようだから、ますます怠慢、失礼ぶっこきマンボーと化すのであろう。
俺がマネージャー氏と嬢に送り出され、エレベーターの所にたっていると、例の大泉洋似が、エレベーターでまた、上がってきて我々と出くわしたのであった。
大泉洋似は一度店を出て、指名が被っているので、呑み直しをしようとしているのであろうか。
それとも、一回店を出てまた指名をすれば、嬢のポイントが二倍になるので(嬢の給料は指名の数によってスライド制になっている)、嬢に協力しているのであろうか。
どちらにせよ、ご苦労なことである。ご執心なことである。一定の嬢に通うという習慣を、ほとんど持たないミッチーには、理解しかねることである。
そんなに、この嬢には魅力があるのであろうか。特別待遇してもらっているのであろうか。どこまで掘り下げていっても、そんなことにはならないと思うが――
マネージャー氏は俺の姿を見ては、「かっこいいですねえ」とやたらとお世辞を言うのだが、肝心の嬢は、俺に対するインプレッションを、「全く」口にしない。ここでも、「キャバ蔵 マーフィの法則」
「客に対する関心や観察を口にしない嬢は、割り切り感ハンパない女と思うべし――」
という鉄側が適用されてしまうのである。
どうも、熟女系というのは難しい。
「ミッチーナイト」の読者は、毎日「熟女パブ」で検索なさっているようだが、ミッチーはこのランジェリー熟女への、再々訪は、おそらくはもうないと思う。
みっちぃはここ十年くらい、イブ・サンローランの「ライブ・ジャズ」という香水を愛用していた。香水のボトルが鍵盤の形をしている、お洒落なデザインである。
これは「ジャズ」という香水の弟バージョンであるのだが、「ジャズ」が夜っぽく、ムスク系で、外人がつけそうな香りであるのに対し、「ライブ・ジャズ」は爽やかで、そのくせ芯のある男臭い香りで、フェロモン的な感じもあり、アトマイザーに入れてシュッシュッとやっていたのである。
ところが。例によってネットでこれをまとめ買いしようとしたら、もはやどこも発売中止である。
みっちぃは困ってしまった。基本的に、仕事の最中はほとんどつけないようにしてるが、プライベートではいつもこの香水を振っていた。
香水というものは、必ず「○○の香水つけているでしょう!!!」と言い当てる女が現れるが、これはあまり手に入らないということもあり、言い当てられることは殆どなかった。他人と被っているものはイヤである。
困った末に、「同じサンローランなら間違いはないだろう」と思って、イブ・サンローランの「プール オム(男性用 インセントレイト」というのをネットにて購入してみた。
なんつーか、一番「基本」となる香り(のはず)なのだ。pour hommeと書いてある奴は。それが「夜用」「爽やか、スポーツ後用」などと、バリエーションが枝分かれしていくのだ。
だから、サンローランの「顔」となる、代表的な香りのハズであるから、まあ間違いはないであろう……。
そう思い込んだのが、運の尽き。実際にこれを、ためしに手首の辺りに振ってみたところ……。
「くっ、臭いっ!!!香水だから臭いのは当たり前だが、重油のようなクサさだ!!あるいは殺虫剤だ!!!!!」
要するに、ムカムカしてくるクサさなのである。
トップノートにはたしかにレモンの香りがあるが、怖れていた「トニック臭いんぢゃねえか」という悪寒が的中してしまった。体感的にはトニック八割、甘い香り二割、というかんぢである。
「うーーーーん、マンダム!!!!バイタリス!!!」
一日中、このトニッククサさが取れない。おまけにこれが、重油さながら、人を疲れさせるクサさなのだ。こんなものに送料込みで五千円弱も払ってしまったのだ。
ちなみに謳い文句はこうであった。
「 1971年に発売され、1983年に再販となった、「YVES SAINT LAURENT」のフレグランス・ラインの裏佳作です。クラシカルな佇まいのシトラス・グリーン・ウッディ、そのテイストはどこまでもアリッド且つラグジュアリーで、自信に満ちたジェントル・スタイルを、豊かなエッセンスからなる極上の香調で鮮やかにリッチに彩ります。
レモン、プチグレイン、バーベナ、クラリセージなどが、清々しく澄み切った柑橘と緑の恵みを香り立たせるトップから、カーネーション、ローズマリー、ラベンダー、ローズウッド、ナツメグなどが、凛々しくエレガントな男性美をクリエイトするミドルへ。ラストはサンダルウッド、シダー、ベチバー、マジョラム、パチョリ、トンカビーンズなどが、重厚で厚みのある頼もしいマスキュリンを、深みのある柔らかな甘さで演出いたします。
秋、冬のイブニング・シーンにシックなウェアと合わせて、余裕のある大人の時間を愉しんでみてはいかがでしょうか。ボトルやパッケージも、シンプルで洗練されており、飽きがこないデザインです」
ウソつけ、この野郎!!!「重厚で厚みのある重油クサさを、深みのあるトニック臭で演出」ぢゃねえか!!!
この重油クサさは何に拠るものなのか。シダーやサンダルウッドの配合が強いせいだと思う。たしかに昔の香水、70年代の男性用香水の香りではあり、いまは「ロム」という新しいモデルがサンローランで出ているみたいだ。そっちにすればよかった。
100mlもあるものを捨てるのは勿体無い。しかし、クサってもサンローラン。
みっちぃ、あれこれ考えた末、レモングラスのエッセンシャル・オイルを、これに数滴たらしてみた。すると、重油クサさはスッと後ろに引っ込んだのである。
香水とは、かように難しいものなのだ。勿体無いからこんなふうに自分で調合して、使い切ってしまうしかない。
クヤシイので、ドンキ・ホーテにいって「ライブ・ジャズ」に近い香りを買ってきてしまった。ルチアーノ・ソプラーニの「just free」という奴である。
非常に爽やかでいい香りなのだが、「ライブ・ジャズ」の深みみたいなものはない。ちなみにネットで見ると、これも販売中止となりつつあるようである。
愛用してしまうと、またもや「香水難民」になってしまうというわけだ。まったく、香水というものは難しい。
ドンキに三個ぐらい残っていたようだから、それを買占めておいてもいいわけだが、ま、そこまでの秀逸な香水というわけでもない。2,400円程度で、廉かった。
ちなみに、この「just free」を先の「インセントレイト」と混ぜ合わせても、良い香りが出来上がる。七対三くらいの比率で、深みのある香りができあがる。
なんで自分が香水の調合なぞをしなきゃならんのか。どこまで凝り性なんだと首をかしげたくなるが、これも「LIVE JAZZ」が販売中止になってしまったのがいけないのだ。
サンローランには「オピウム(OPIUM)」というのもあり、これは文字通り「阿片」を連想させる、御香とか、白檀の香り付けがなされているという。
それに興味は沸くが、実際に使いこなすのは難しかろう。文学的ではあるが……。
コクトーやボードレールの連想から、そういうものを買ってみようかとも思うが、ファッションやイメージだけに飛びつくと、あとで後悔することになりそうだ。
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