『茫漠』短歌研究2018年4月号掲載作品15首
短歌研究二〇一八年四月号 特集「不思議な歌の国・名古屋競詠短歌」(十五首)茫 漠 西田政史誰も来ない公園あまた沿線にひらく消えゆく記憶のごとくアガペーを、エロスをこえて、東山動植物園のフラミンゴ首都機能移転のゆめにふる雪のひとしく母系家族をつつみアドルフを生まずイエスを育まず覚王山のゆきの新月覚王山の坂駆け上がるをさなさは碇シンジのごとく激しく名古屋駅地下街をゆく人びとの歩幅かさなり合ひ眩暈する改札を抜けてLINEを追ひかけて地下迷宮へ散る少女たちぜんまいを弛めて歩む人形のウマク死ネルダラウカト止マルベルリンの天使が落ちてくる夜と、この空と、この雨と、この生雨、雨、雨、飴色の雨、春の雨、雨、茫漠と雨、雨をゆくこの夜のすべてに雨が降つてゐて仔犬のやうにぶるぶるとして傘をさす人にもささないをとこにも寄り添ふ春の、夜の雨降る水彩をかさねるやうな希薄さにさらされ濃尾平野の夜明け人間のおこなひをして生き延びるじんるいたちの朝のシリアル数人に取り囲まれて冷めてゆく青銅鏡のやうに名古屋は