蝉その蝉は道の傍に手足をこわばらせて死んでいた 駄々をこねる子供みたいに天を仰いで 彼は7年のまどろみののちその複眼に夏の日差しの眩しさをどう感じたろうか 仲間とあらん限りの声で響き合い生のカタルシスに全身をわななかせたろうか 夕立の中重く冷たい羽を震わせて木陰に逃げ込んだ後 甘く湿った夏の大気をその気門いっぱいに取り込んだだろうか 俺はどうだろう何を感じ得るだろうか 干からびて死ぬまでに