ビーバーが贈る命の歌

 映画・東京リベンジャーズの主題歌として書き下ろされた「儚くない」、ビーバーファンとしては最初に聴いた時は驚いてしまいました。
 僕は「27」というアルバムが出てからかれこれ数年ビーバーファンをやっていますが、数あるビーバーの楽曲の中でここまで命を歌った歌はなかったと思っています。映画とマッチする内容だったということもあるかと思いますが、コロナやウクライナでの戦争など、命と向き合う時間が増えてきたせいかもしれませんね。
 今回は「儚くない」を味わっていきたいと思います。

 

 

  命には終わりがある

 
    

いつまでもないと わかっていても
いつまでもあってほしい
僕は死ぬことが 年々怖くなってる
その弱さは 憎めないな

 

 …はい、初っ端からすごい歌詞ですね。ビーバーはボーカル、ギター、ベース、ドラムの4人バンドですが、作詞作曲はギターの柳沢さんです。よく「え、ボーカルが書いてるんじゃないの?」と驚かれます。
 話を戻して歌詞ですが、命の終わりについて書いていますね。
 命はいつか終わりが来る、そのことはみんな分かっています。いつも自分を支えてくれる大事な人たち…、家族かも知れないし、恋人や友だち、先生、近所の人、ペットなどの動物かも知れませんね。
 終わりが来ることは分かってはいるけれど、でもやっぱりいつまでも一緒にいてほしいと思ってしまうものです。
 死ぬのが怖いと思うのは、人によっては「弱さ」と捉えられるかもしれません。でも、この後の歌詞で「なぜ死ぬことが怖くなってきたか」が分かると、その弱さも悪いものではないと受け止めることができるようになるかもしれません。

 

 

  命=儚い=美しい???

 

    

なくなるから 大事にするんじゃない
大事だから なくなれば 辛いんだろう

儚いから美しいなんて
命には当てはまらなくていい
慣れないから美しいんだねって
笑いながら しぶとく 僕は 生きていたいよ
願わくば一緒に

 

 「命は大事だ」ということは多くの人が認識していると思います。しかし、なぜ命は大事なのでしょうか。ここでは自分以外の命について、それがなぜ大事なのかを歌っています。
 命はいつかなくなるから大事、これはいわゆる「もったいない」に通じる感じ方でしょうか。なくなるから大事、うん理解できる、理解できるけど完全ではない気もします。例えば命が無限になれば大事ではなくなる、とも捉えられ、それは違うような気もします。
  ビーバーは「なくなるから大事にするんじゃない」と強く訴えます。「大事だからなくなれば辛いんだろう」と。2つは同じことを言っているように見えて、実は違うことを言っているようです。
  いよいよサビ。儚くて美しいもの、皆さんは何をイメージされますか?シャボン玉、花火、雪、蛍…いろいろありますよね。それらは時に人々の心を動かします。しかし、「儚い=美しい」は命には当てはまらなくてもいいのです。

 

 

 例えば虫のカゲロウは寿命が1日前後だそうです。カゲロウは儚いから美しいのか…。いえ、一生懸命生きて生き尽くしている様が美しいのだと思います。
 生きていると周りの人の死にも出会うことがあります。何度お葬式に行っても、その辛さは慣れることはありません。でも、その辛さを噛みしめながら笑って、しぶとく、できれば「あなた」と一緒に生きていたい、というメッセージを感じました。
 話が逸れますがビーバーはよく「あなた」という言葉を使います。ビーバーは常に「あなたたち」ではなく「あなた」に向かって歌ってくれています。そんな愛情を感じながらこの曲を聞いてみてください。

  受け止めながらそれでも生きる

 
    

いつまでもないと わかっていても
そのとき 涙は溢れるだろう
でも 僕は幸せが 年々怖くなくなってる
この心は 誇っていたいな

なくなるなら 気づきたくなかったかい
気づけたから 救われた 夜もあったろう

 

 命はいつまでもあるものではない、頭では分かっていてもいざと言う時、涙が出ることもあるでしょう。そうして命の終わりを意識するとき、今の幸せがなくなってしまうような怖さを覚えます。
 でも、命の終わりを受け止めることができた時、自分が幸せであることに感謝し、今ある幸せを恐れるのではなく喜ぼうと思えるのではないでしょうか。
 今あるありふれた、小さな幸せをなくしてしまうことを恐れてしまうあまり、「最初から幸せなんてなければいいのに」と目を背けることもあるでしょう。でも、振り返ってみてほしい。その小さな幸せに救われた瞬間を。
 「ただいま」と言えば「おかえり」って言ってもらえる。「遊ぼ」と言えば「うん」と言ってもらえる。辛いときに「どうしたの?」と寄り添ってもらえる。命の終わりを受け止めたからこそ、心から喜ぶことができる幸せもあるようです。

 

 

  人は後悔する生き物

 

    

後悔が悪いわけじゃないんだ
その理由がいつも初めてならいい
慣れないから寂しいんだねって
笑いながら 泣いて 泣いて 今更じゃなくて
今からどう生きるって 問い続けたいよ

 

 「もっと元気なうちに会いに行くべきだった、素直に話すべきだった」という経験がある方も少なくないのではないでしょうか。人は後悔する生き物です。しかし、後悔することは悪いことではありません。後悔を繰り返すことが良くないのです。

 別れ際に後悔をするくらいなら、後悔しないように思いっきり生きること、会いたい人には会って気が済むまで話し込むこと。

 別れるときに泣いて、泣いても、これからどう生きるのか、前向きに問い続けること。「そんなのいまさら」と投げ出さず、私たちはこれからも生きていかなければならないのです。感謝して、噛み締めて、生きていこうというビーバーなりの応援だと思います。

 

 

 

  生きてこそ、生きていてって

 

    

人はいつか必ず会えなくなるんだろう
今じゃないと 信じたい 伝えたい
油断じゃなく 願いだ

儚いから美しいなんて
命には当てはまらなくていい
慣れないから美しいんだねって
笑いながら しぶとく 僕は 生きていたいよ
願わくば 一緒に 生きていこうよ
儚くないんだよ

歪(いびつ)でもいい 無様でもいい ごめん やっぱり思っちゃうよ
生きてこそって 生きていてって

 

 別れがいつになるのか、それは誰にもわかりません。「また明日」とバイバイした友達と明日も会えるのか、「お前なんかいなくなってしまえ」と喧嘩した翌日、「ごめんね」と謝るチャンスがあるのか分からないのが人生です。

 その「いつか」が、できれば今じゃないと信じていたい、伝えたい、そう思うのが人情です。これは「どうせ明日も会えるさ」という油断ではなく、「明日も会いたい」という願いです。

 ただ生きるだけではなく、願わくば「あなた」と一緒に生きたいというところにビーバーの愛を感じますね。

 最後に1番熱いパートが続きます。

 「儚くないんだよ」もちろん、命は儚くないという意味です。どんなに歪でも無様でもいいから、「あなた」に生きていてほしい、そう思ってしまう自分がいること、そう思える幸せを噛み締めて生きていきたいですね。

 

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