みなさんこんにちは。
英語ミュージカルサークルのSDACです。
突然ですが、実はこのブログは特定のメンバーが管理しているというわけではなく、毎回選ばれし者だけが書けるという仕組みになっております(どのようにして選抜されるのか…?それは秘密です)。
というわけで今回の選ばれし者は私というわけですが、私自身この春に仲間入りしたばかりでこれといったサークルに関するネタがないのでこれまで私が観劇してきた中で最も魅力を感じた作品を、あくまで私の視点から解釈しながら、みなさんにご紹介したいと思います!
では本題に移りましょう。
今回ご紹介する作品は、ずばり「アナスタシア」です✨
そこまでミュージカルに興味がないと言う人にとっては題名を聞いてもあまりぴんとこないかもしれません笑
それもそのはず、実はこの作品、2020年春に海宝直斗さん、木下晴香さん、葵わかなさんをはじめとする豪華キャストで日本初演を迎えたのですが、コロナ感染者増加の影響で泣く泣くほとんどの公演を中止せざるを得なくなってしまったんです…。
しかし幸いな事に私はその日本初演版、(そして去年冬の宝塚歌劇団版も)を観ることができ、また1997年に公開された映画版も幼い頃からDVDが擦り切れるほど観てきたのでこれらミュージカル版・映画版の2つを比較しつつ、①ストーリー②楽曲③登場人物の3つの観点からこの作品の魅力に迫りたいと思います!
(ミュージカル版ポスター)
(映画版ポスター)
①ストーリーの珍しさ
アナスタシアの一つ目の魅力はそのストーリー自体にあります。
まずはあらすじ(ミュージカル版)から↓
舞台は20世紀初頭、帝政末期のロシア、サンクトペテルブルク。ロシア帝国皇帝ニコライ2世の末娘として生まれたアナスタシアは、パリへ移り住み離ればなれになってしまった祖母マリア皇太后から貰ったオルゴールを宝物に、家族と幸せに暮らしていたが、突如ボリシェビキ(後のソ連共産党)の攻撃を受け、一家は滅びてしまう。
しかし、街中ではアナスタシアの生存を噂する声がまことしやかに広がっていた。パリに住むマリア皇太后は、アナスタシアを探すため多額の賞金を懸ける。それを聞いた二人の詐欺師ディミトリとヴラドは、アナスタシアによく似た少女アーニャを利用し、賞金をだまし取ろうと企て、アーニャと三人でマリア皇太后の住むパリへと旅立つ。
記憶喪失だったアーニャは次第に昔の記憶を取り戻してゆく…
同じ頃、ロシア政府はボリシェビキの将官グレブにアナスタシアの暗殺命令を下す。マリア皇太后に仕えるリリーの協力を得て、ついにアーニャはマリア皇太后と会う機会を得るが、グレブがアーニャを見つけ出し…
(ミュージカル「アナスタシア」オフィシャルHPより)
ざっと物語の流れはこんな感じです。
お分かりの通り、この作品はロシアの「アナスタシア伝説」が元になっており、物語はロシア革命から始まります。
歴史上の謎から生まれたという点で前回のブログのテーマ「オペラ座の怪人」と同じですね(「オペラ座の怪人」は実際に当時パリのオペラ座で起きた事件が元になっています)。
では同じように終始暗く重厚なイメージの作品なのか?というとそうでもありません。
もちろん前半の革命やその他のボリシェビキ達が登場するシーンは少しシリアスな印象を受けますが、物語全体は主人公のアナスタシアが仲間と冒険をしながら記憶を思い出し本当の自分を見つけるという希望に満ち溢れた明るいイメージです。
映画が公開された当時、このようなプリンセスが歌って踊る作品は歴史上実際に起こった事を元にしたものが少なく、その珍しさから多くの映画業界の人々から賞賛されました。
事実を元にする事で「私たちの世界と地続きになっている」という現実感を生み出し、ディズニーなどの他社の作品と差をつけたんですね。
②楽曲の素晴らしさ
もしかしたら最大の魅力かもしれません。
この作品のビックナンバーである''Once Upon a December(遠い12月)''と''Journey To The Past(過去への旅)''は、名コンビ、ステファン・フラハティとリン・アレンスが担当し映画版ではアカデミー主題歌賞・音楽賞にノミネートされました。
主人公アーニャがかつてロマノフ家が所有していたオルゴールから流れる曲を聴いて記憶の一部を思い出し、それが何なのかを必死で探ろうとする場面で歌われる''Once Upon a December''は短調で過去にその場所であった恐ろしい事を思い起こさせるような暗い響きのある曲ですが、その壮大さとドラマチックさ、哀愁漂うメロディが一度聴いたら頭から離れない不思議な曲です。
一方で、マリア皇太后に会うための旅で目的地パリに到着したシーンでアーニャによって歌われる''Journey To The Past''は彼女の胸のざわめきや不安が旅への期待や希望に変わる瞬間が描かれており明るく、''Once Upon a December''とはまた違った美しさの感じられる曲です。
ほとんどの楽曲は歌われるシーンが映画版とミュージカル版で異なったりミュージカル版にしかない曲がたくさんあったりと色々語りたいことが多いですが、ここで全てをご紹介すると読むにはうんざりするほど長くなってしまうのでそこは省略させていただきます笑
上記の2曲はミュージカル版の動画のURLを以下に貼っておくので良ければご覧ください🎵
https://youtu.be/5gZrYyi-XRQ
https://youtu.be/JtRa-0hBdbQ
③キャラクターの個性
ミュージカル版アナスタシアの主要人物は主に
・アーニャ(主人公、記憶喪失の少女)
・ディミトリ(詐欺師)
・ヴラド(詐欺師)
・マリア皇太后(アナスタシアの祖母)
・リリー(伯爵夫人)
・グレブ(ボリシェビキの将官)
の6人ですが、どのキャラクターも個性的で深みがあり見る度に違うキャラクターに感情移入してしまうんです…!
リリーがあまり登場しない上に性格が全く違ったり、グレブがそもそもいなかったり、ディミトリとマリア皇太后のソロ曲が無かったり…と映画版ではあまりアナスタシア以外のキャラクターに注目する機会がありませんが、ミュージカル版は映画版より上演時間が長く歌がメインということもあり、主人公以外のキャラクターのことも深く掘り下げられています。
全員について語るとこれもまたとてつもなく長くなってしまうので、ここではミュージカル版にしか登場しない重要人物、グレブをご紹介しようと思います。
映画版では悪役としてラスプーチンという当時実在した人物を登場させているのですが、ミュージカル版ではボリシェビキの将官であるグレブという青年が代わりに登場します。
しかし、彼は悪役なのか?と言われるとそうとも言い切れないんですね。言ってしまえば、闇の部分もあれば光の部分もある、複雑な人物なので善でも悪でもないんです。
例えば、彼の「悪」の部分は職業柄ロマノフ家の生き残りであるアナスタシアの生存は認められないことであるため彼女の暗殺を試みているというところ。つまり、アナスタシアである可能性のある主人公アーニャとは敵同士の関係にあるという点です。そして「善」の部分は、アーニャを大切な存在として想っており、密かに守ろうとしているところ。
彼の歌う''The Neva Flows''や''Still''にも「彼女を暗殺しなければいけない」という義務と「彼女を守りたい」という感情の間で揺れ動く彼の心情がよく表れているのでぜひ聴いてみてください!
またこの作品にはアナスタシアとディミトリ、アナスタシアとグレブ、アナスタシアとマリア皇太后、ヴラドとリリーといった2人の人物の間の関係性の変化も注目ポイントなのですが、どの関係の間にも誰も入らず、キャラクター一人一人が物語を通して成長し、彼らだけで問題を解決していくというところも個人的に良いところだと思っています。
以上、ストーリー・楽曲・登場人物の観点からミュージカル「アナスタシア」を紹介させていただきました✨
映画版と宝塚版はDVD・Blurayが販売されているのでぜひ観てみてください!
文責 笠原
英語ミュージカルサークルのSDACです。
突然ですが、実はこのブログは特定のメンバーが管理しているというわけではなく、毎回選ばれし者だけが書けるという仕組みになっております(どのようにして選抜されるのか…?それは秘密です)。
というわけで今回の選ばれし者は私というわけですが、私自身この春に仲間入りしたばかりでこれといったサークルに関するネタがないのでこれまで私が観劇してきた中で最も魅力を感じた作品を、あくまで私の視点から解釈しながら、みなさんにご紹介したいと思います!
では本題に移りましょう。
今回ご紹介する作品は、ずばり「アナスタシア」です✨
そこまでミュージカルに興味がないと言う人にとっては題名を聞いてもあまりぴんとこないかもしれません笑
それもそのはず、実はこの作品、2020年春に海宝直斗さん、木下晴香さん、葵わかなさんをはじめとする豪華キャストで日本初演を迎えたのですが、コロナ感染者増加の影響で泣く泣くほとんどの公演を中止せざるを得なくなってしまったんです…。
しかし幸いな事に私はその日本初演版、(そして去年冬の宝塚歌劇団版も)を観ることができ、また1997年に公開された映画版も幼い頃からDVDが擦り切れるほど観てきたのでこれらミュージカル版・映画版の2つを比較しつつ、①ストーリー②楽曲③登場人物の3つの観点からこの作品の魅力に迫りたいと思います!
(ミュージカル版ポスター)
(映画版ポスター)①ストーリーの珍しさ
アナスタシアの一つ目の魅力はそのストーリー自体にあります。
まずはあらすじ(ミュージカル版)から↓
舞台は20世紀初頭、帝政末期のロシア、サンクトペテルブルク。ロシア帝国皇帝ニコライ2世の末娘として生まれたアナスタシアは、パリへ移り住み離ればなれになってしまった祖母マリア皇太后から貰ったオルゴールを宝物に、家族と幸せに暮らしていたが、突如ボリシェビキ(後のソ連共産党)の攻撃を受け、一家は滅びてしまう。
しかし、街中ではアナスタシアの生存を噂する声がまことしやかに広がっていた。パリに住むマリア皇太后は、アナスタシアを探すため多額の賞金を懸ける。それを聞いた二人の詐欺師ディミトリとヴラドは、アナスタシアによく似た少女アーニャを利用し、賞金をだまし取ろうと企て、アーニャと三人でマリア皇太后の住むパリへと旅立つ。
記憶喪失だったアーニャは次第に昔の記憶を取り戻してゆく…
同じ頃、ロシア政府はボリシェビキの将官グレブにアナスタシアの暗殺命令を下す。マリア皇太后に仕えるリリーの協力を得て、ついにアーニャはマリア皇太后と会う機会を得るが、グレブがアーニャを見つけ出し…
(ミュージカル「アナスタシア」オフィシャルHPより)
ざっと物語の流れはこんな感じです。
お分かりの通り、この作品はロシアの「アナスタシア伝説」が元になっており、物語はロシア革命から始まります。
歴史上の謎から生まれたという点で前回のブログのテーマ「オペラ座の怪人」と同じですね(「オペラ座の怪人」は実際に当時パリのオペラ座で起きた事件が元になっています)。
では同じように終始暗く重厚なイメージの作品なのか?というとそうでもありません。
もちろん前半の革命やその他のボリシェビキ達が登場するシーンは少しシリアスな印象を受けますが、物語全体は主人公のアナスタシアが仲間と冒険をしながら記憶を思い出し本当の自分を見つけるという希望に満ち溢れた明るいイメージです。
映画が公開された当時、このようなプリンセスが歌って踊る作品は歴史上実際に起こった事を元にしたものが少なく、その珍しさから多くの映画業界の人々から賞賛されました。
事実を元にする事で「私たちの世界と地続きになっている」という現実感を生み出し、ディズニーなどの他社の作品と差をつけたんですね。
②楽曲の素晴らしさ
もしかしたら最大の魅力かもしれません。
この作品のビックナンバーである''Once Upon a December(遠い12月)''と''Journey To The Past(過去への旅)''は、名コンビ、ステファン・フラハティとリン・アレンスが担当し映画版ではアカデミー主題歌賞・音楽賞にノミネートされました。
主人公アーニャがかつてロマノフ家が所有していたオルゴールから流れる曲を聴いて記憶の一部を思い出し、それが何なのかを必死で探ろうとする場面で歌われる''Once Upon a December''は短調で過去にその場所であった恐ろしい事を思い起こさせるような暗い響きのある曲ですが、その壮大さとドラマチックさ、哀愁漂うメロディが一度聴いたら頭から離れない不思議な曲です。
一方で、マリア皇太后に会うための旅で目的地パリに到着したシーンでアーニャによって歌われる''Journey To The Past''は彼女の胸のざわめきや不安が旅への期待や希望に変わる瞬間が描かれており明るく、''Once Upon a December''とはまた違った美しさの感じられる曲です。
ほとんどの楽曲は歌われるシーンが映画版とミュージカル版で異なったりミュージカル版にしかない曲がたくさんあったりと色々語りたいことが多いですが、ここで全てをご紹介すると読むにはうんざりするほど長くなってしまうのでそこは省略させていただきます笑
上記の2曲はミュージカル版の動画のURLを以下に貼っておくので良ければご覧ください🎵
https://youtu.be/5gZrYyi-XRQ
https://youtu.be/JtRa-0hBdbQ
③キャラクターの個性
ミュージカル版アナスタシアの主要人物は主に
・アーニャ(主人公、記憶喪失の少女)
・ディミトリ(詐欺師)
・ヴラド(詐欺師)
・マリア皇太后(アナスタシアの祖母)
・リリー(伯爵夫人)
・グレブ(ボリシェビキの将官)
の6人ですが、どのキャラクターも個性的で深みがあり見る度に違うキャラクターに感情移入してしまうんです…!
リリーがあまり登場しない上に性格が全く違ったり、グレブがそもそもいなかったり、ディミトリとマリア皇太后のソロ曲が無かったり…と映画版ではあまりアナスタシア以外のキャラクターに注目する機会がありませんが、ミュージカル版は映画版より上演時間が長く歌がメインということもあり、主人公以外のキャラクターのことも深く掘り下げられています。
全員について語るとこれもまたとてつもなく長くなってしまうので、ここではミュージカル版にしか登場しない重要人物、グレブをご紹介しようと思います。
映画版では悪役としてラスプーチンという当時実在した人物を登場させているのですが、ミュージカル版ではボリシェビキの将官であるグレブという青年が代わりに登場します。
しかし、彼は悪役なのか?と言われるとそうとも言い切れないんですね。言ってしまえば、闇の部分もあれば光の部分もある、複雑な人物なので善でも悪でもないんです。
例えば、彼の「悪」の部分は職業柄ロマノフ家の生き残りであるアナスタシアの生存は認められないことであるため彼女の暗殺を試みているというところ。つまり、アナスタシアである可能性のある主人公アーニャとは敵同士の関係にあるという点です。そして「善」の部分は、アーニャを大切な存在として想っており、密かに守ろうとしているところ。
彼の歌う''The Neva Flows''や''Still''にも「彼女を暗殺しなければいけない」という義務と「彼女を守りたい」という感情の間で揺れ動く彼の心情がよく表れているのでぜひ聴いてみてください!
またこの作品にはアナスタシアとディミトリ、アナスタシアとグレブ、アナスタシアとマリア皇太后、ヴラドとリリーといった2人の人物の間の関係性の変化も注目ポイントなのですが、どの関係の間にも誰も入らず、キャラクター一人一人が物語を通して成長し、彼らだけで問題を解決していくというところも個人的に良いところだと思っています。
以上、ストーリー・楽曲・登場人物の観点からミュージカル「アナスタシア」を紹介させていただきました✨
映画版と宝塚版はDVD・Blurayが販売されているのでぜひ観てみてください!
文責 笠原