『1番好きなピアノ曲は何か?』
と聞かれたら、この曲と答えます。
ショパン/バラード第3番
それまで何となく長年続けてきたピアノをこれからは音楽大学という目標に向って進み始める…
私にとって分岐点となった曲です。
この曲を練習していたのは忘れもしない
1995年1月。高校1年の冬。
前年の秋にグランドピアノを買ってもらい、ちょうど年明けの成人の日に神戸で行われた小さなコンクールに向けての練習中でした。
本番当日の演奏は審査員の講評も良く、自分も満足して弾けました。
帰り道、父と2人で三宮のアーケードを歩いたのをなぜか鮮明に覚えています。
その2日後。
阪神淡路大震災がおこりました。
その年の夏、大学の夏季講習を受講した際にも実技でこの曲を弾きました。
大阪まで通う電車から見た真っ黒に焼けた町。まだつぶれたままのビルやマンション。仮設の三宮駅と土埃。
ショパンの美しいバラードに私が思い浮かべるのは、あの悲惨な震災から立ち上がる街並みの光景です。
グランドピアノを入れるために改装したばかりの実家は半壊認定でした。また父は建設関係の仕事だったので、当時大変だったと思います。しかし、私の音楽大学進学に両親が口を挟むことは1度もなく、いつも応援してくれていたと思います。
私も無意識にその気持ちを感じて、受験に向けて練習していたような気がします。
何か落ち込んだとき。
うまくいかないとき。
ショパンのバラード3番は私に前へ進む力を与えてくれる大切な曲です。
私が指導している生徒さんたちにも、ピアノを通じて人生の中で思い出に残る1曲に出会ってほしいなと思います。