クリープハイプ『二十九、三十』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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”いつでもないいつかを待った”
時の刻印には抗えなく、僕たちは進む。人生においても重要な分岐点といえる年齢の境に、彼ら自身も今立っている。タイトルにしてまで、歌う必要があったのだろう。ミディアムテンポで、そこを跨ごうとする思いが綴られる。

『エロ』と同様に、一番重要なのは、今現時点であるという事実だ。ロックの醍醐味である今を投影する行為により、どうしても、この年相応の未熟さが滲みでている。でも岡崎世界観はこの、二十九、三十の線を踏むことをきっかけに、ミュージシャンとしての決意を新たに持つことを示唆している。

”サビなら歌える”歌としてだから伝えられる。ひとりの人間としての自信がいつ持てるか?それを越える瞬間に、恥も外聞も無しに、今まさに確信を持ったんだという言葉。そんな宣言がロック的な価値観の向かい風に押され、なよなよしさを含みながらも、ストレートな応援ソングとして機能した、クリープハイプ節である。