ライブレポ-WHITE ASH Tour "Lilium"@名古屋CLUB QUATTRO | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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※若干のバレあります

ホワイトアッシュをはじめてちゃんと見たのは2011年秋の話になる。
大阪のとあるイベントの出演者のひとりであった彼ら。当時すでに大きな注目と支持を得ていた彼らを目当てに狭いライブハウスに溢れかえるくらいの人、人、人が集まっていた。若干の黄色い声?に後押しされて登場したメンバー四人の演奏が始まった。音は想像以上に厚く、声もしっかりとした印象を受けた。とは言えまだまだ若手故の危うさみたいなものはいい意味でも悪い意味でも漂っていて、不安が残るアクトになったと思う。

あれから約2年が経過した2014/2/22、僕は初めてやっと彼らのワンマンライブを見ることが出来た。正直、驚いた。むちゃくちゃかっこよかった。踊り疲れても体は反応するし、涙腺は崩壊しそうになるし、大変だった。二年くらいあるとバンドってここまで変わるもんなんだなと。いや、考えてみれば人間だって何年かあれば変わるし、たいした話ではないのかもしれない。年単位どころか一夜にして価値観が変わるような出来事もある。

ホワイトアッシュというバンドの僕の評価は正直申し上げると1stフル・アルバム「Quit or Quiet」を最高点に、少しずつ落ちていった。あのアルバムの完成度の高さとかっこよさは若手の中でも最高峰だと思う。が、あれ以降リリースされたシングルには残念ながら僕は彼らの新しい可能性を見いだせなかったし、簡単にいえばマンネリであった。テレフォンズにハマった時もそうだったがカラーが強いバンドはその分、マンネリに陥る時期が早い傾向がある。加えて、外国人を起用したアーティスト写真や最新アルバムにシングルを一切収録しなかった点は狙いが全く理解できず、よくわからないバンドになっていた。



そんな彼らのステージは以前見た時とは比べ物にならないほどロックンロールに輝くものであり、様々な不安を吹き飛ばすだけの力を持っていた。
まず1曲目のcrowdsで完全に持ってかれた。アルバムに収録されてない分、ありがたみが増す。ステージから放たれる独特の中二病的閉塞空間やその中にそっと差しこむ優しい光に酔いしれる。
ライブとはある意味では現実と相反する非現実的世界体験であると僕は考えているが、今回のライブはまさにそれだった。そう思えるライブはいつもいい。
特に最新作に収められたZodiac Syndromeはピークだった。ふらふらしている体を海の奥深くへ突き落とされるような、ある種の絶望感と快楽が体中に行き渡っていくあの感じは非現実にも程がある光景であった。スローナンバーを聴かせることが出来るバンドはいいバンド!というのは持論のひとつだ。
MCも地方ネタを挟みながら控えめなのがよかった。「のびたー!」と観客から呼ばれるとほぼ確実に「はい^^」と返事をする彼の丁寧な対応には頭がさがる。
そして終盤に披露された例のクリスマスソングは季節外れお構いなしでやはりホロリとくる名曲であった。あの路線はシングルにしてもいいと思う。そうこうしていると楽しい時間はいつも短いもので気がつけばライブは終わっていた。

最新作は2ndにしては少々、狙い過ぎではないか?と思う点もあったがこれだけのライブを見せられたら何も言えない。何よりこの踏み込んだら後戻りできない世界観とのび太のボーカルが作る音楽はやはり唯一無二のものであり、心地いい。
まだまだ大きな可能性を秘めた若い才能、今後も彼らの動向を追って行きたいと思わせる素晴らしいライブだった。