劇団わに社 第7営業
『好きも嫌いもいつかは棺桶』観劇。
①「劇評」では無く「感想」なので、
良いも悪いも感じた通りに素直に感想を書く
②偉そうな事や知った風な事は絶対に書かない
③感想文は作品内容についても触れる
上記3点のルールに従って、感想。
初めてのわに社さん観劇。
先ずは独自の展開を魅せる前説(?)から
既に会場内は盛り上がっている。
常連のお客さん(株主様と呼ぶらしい)の
ハートをがっちりと掴んでいる様子は
観ていて心地よくニコニコしてしまう。
そのままほぼシームレスで本編へ突入。
街の小さな葬儀屋を舞台に個性豊かな
キャラクター達が賑やかに魅せる前半戦。
一変してシリアスに振り切る中盤以降。
そんな中、
普遍して散りばめられる笑いの要素などなど。
観ているヒトの感情を見事に掌握していて
素晴らしかった。
恐らくは作家さんの死生観を下敷きに描かれている今作。其々のキャラクターが其々の死生観を振りかざしてゆき、ぶつかり合ったり解り合ったりしながら話しは展開してゆく。
その中心に居て周囲の人々の様々な感情を
見事に受け切っていたケージ君の快演ぶりは
本当に天晴れ!
以下、
んー…と思ったトコロを少しだけ。
此れは大いに主観でしか無いけれど、
放たれる台詞の端々に「男性性」が多分に
感じられてニガテな部類だった。
実際に罵詈雑言を放っている訳では無くても
(放っていたシーンもあったにはあったが)
言葉のチョイスやパワーと云うかエネルギーみたいなモノが作家の男性性の強さを前面に押し出していて「わぁわぁわぁ」とちょっと引いてしまった。※此れは本当に好みの問題。
中盤以降のシリアスなシーンからは
一変して男性性を剥き出していなかったので、
恐らくは「敢えて」そう云う構成にしていた
のだろうけれども。
ただ、このシリアスなシーンに入ってから
頭に浮かんだのが、
2006年9月1日に放送された
「爆笑問題と伊集院光のJUNK交流戦スペシャル」内で太田光が言っていた「泣ける作品が必ずしもイイ作品では無い」と云う言葉。
引き合いに出していたのは、
リリー・フランキーの「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」と向田邦子の「阿修羅のごとく」。
東京タワーはめちゃくちゃ泣いたケド、
だからと言って普及の名作では無い。
逆に「阿修羅のごとく」は名作。
其れは何故か?
姉妹達の何気ない会話のワンシーン、
鏡割りをしたお餅をお煎餅にしている様子を見ながら『お母さんの踵を思い出すわね』と云う台詞が出て来る。この台詞を聞いた瞬間に涙が溢れて来た。
感動させようとしていない「意外な瞬間」に
感動させられたい。と云う話しだった。
「好きも嫌いもいつかは棺桶」は
心にストレートに突き刺さる台詞達と
音響照明の相乗効果で涙を誘って来る。
実際に泣きそうにもなったし感動もした。
けれど、その誘い込みが過多になり過ぎていて
シーンが進むにつれて逆にどんどん心が鎮まっていってしまった自分がいた。
個人的には、
本編前の前説(?)で大いに「足し算」を楽しませてくれて、本編に入ったら個性爆発の魅力的な登場人物達による「ハイパーかけ算(!!)」に魅了されたので、終盤に至る辺りでは「引き算の美学」を魅せて欲しかった。
ただ、「ハイパーかけ算」は
楽しいし面白いしで本当にズルい。
こんな事が出来る(可能な)団体さんは
他に観た事が無いかな。
何はともあれ、
観に行って良かったわに社さん。