おっちゃんとこからです。 ↓

 米映画:錨を上げて(Anchors Aweigh)(1945年)は日本のポツダム宣言受諾前に既に作られていたという壮大なミュージカル巨編で今から70年前に作られている。 何分「カラー139分」という長い作品なので、少なからず気後れする部分が私にはあって、昨日まで見るのを延期していたのだが、いよいよ手持ちのDVDも少なくなって来たため踏み切った。

 しかしあの時代によくもまあ、ストーリーも厳密で娯楽性も満タンの、もの凄い映画を作ってくれたものである。
 当時国中を焼け野原にされてしまっていた日本は、まだ軍部が「一億玉砕!」だとか「竹槍で本土決戦!」だとかいったたわけた寝言で全国民を半ば強制的に牽引していた時代の話である。勝てる自信など更々ないにも関わらず半分発狂していた軍部は「撃ちてし止まん!」と内外に公言していたのである。当時の米日ではあまりにも国力が違い過ぎるのだが、それでもアメリカ兵たちが無傷だったわけではない。日本軍とは比較にならないが、沖縄上陸作戦時の戦闘では多数の死者を出している。

 それで「国力の違い」云々に関しては、かの吉本隆明はこんなことを言っていた。: ↓

 なぜ負けたかと言えば、それは国力云々じゃないんだ。チューインガムを噛みながら戦地に赴き、自分の身が危ないとなったら直ちに逃げ出す。そういう軍隊にあの旧帝国陸海軍が勝てるわけないじゃないか!・・・言葉は不正確かも知れないが、そういう意味のことを言っていた。

 「政治の幅より生活の幅の方が広い」とも彼は別の機会に言っている。彼が伝えたかったのは、「生活の自由度」「意識の自由度」と「普通の人の普通の感覚」、それが問題なんだということだったのだろうと私は思っている。だから、これから海外に派遣されるかも知れない自衛隊の諸君も、「怖い!」と思ったらどんどん逃げ帰って来て構わないのだ。誰もそれを咎め立てなどしないだろう。安倍のために死ぬ理由など何一つない。

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 2時間以上に亘るこの映画も、アメリカ映画の伝統に違わず最後はハッピーエンドで幕を閉じる。先日取り上げた「サウンド・オブ・ミュージック」にしてもハッピーエンド風の味付けだったし、或いは「マッカーシーの赤狩り」でアメリカを追放されたチャップリンの映画にだって果たして「悲劇的結末」などあっただろうか?
 私はそんなに映画に詳しいわけではないが、この伝統的「ハッピーエンド」映画に異を唱えたのはどれかと探しても、とりあえずは1970年頃の所謂「ニューシネマ」の作品群しか見当たらない。

出演:
ジョー:ジーン・ケリー(Gene Kelly)
クラレンス:フランク・シナトラ(Frank Sinatra)
スーザン:キャスリン・グレイソン(Kathryn Grayson)
ドナルド:ディーン・ストックウェル(Dean Stockwell)
パメラ・ブリットン(Pamela Britton)
☆ホセ・イタルビは本人役の高名なピアニスト。

☆監督:ジョージ・シドニー
 この人を私は何も知らないのだが、ミュージカル監督としては有名な人だということで、確かにあれだけのスケールの映画はそうそう簡単に演出出来るものではないだろう。ただただ敬服し驚嘆するだけである。