マケラinサントリー | 音を見つめる日々…

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 サントリーホールに、クラウス・マケラ&パリ管を聴きに行ってきました。

『1階9列21番ーS席』、指揮台の真後ろ9列目で、指揮者とほぼ同じ音が聴ける席です。(実はこのチケット、私が6月に書いた「クラウス・マケラ」のブログを読んで、ある合唱団の方がプレゼントしてくださったのです!感謝感激幸せ。。。)

プログラムは、ドビュッシーの『海』とラヴェルの『ボレロ』、休憩後にストラヴィンスキーの『春の祭典』。

どれもよく知っている曲ばかり。しかしいや~、異次元の世界を見せつけられました。

 

今日、一番感動したのは『海』

ドビュッシーはパリ管ですと十八番でしょうが、特に管楽器の音が美しかったです。とろけるような弱音から力強いフォルテまで汚くなることが一切なく、これは見事としか言いようがないです。しかし、弦楽器(特にバイオリン)は強奏になると良くある混濁が感じられ、それほど綺麗とは感じなかったです。でも語り口調が何通りもあって、各弦楽器が生き物のようにいろいろな表情を次から次へと見せてくれるので飽きることがありません。ヨーロッパのオケって、どうしてこんなにおしゃべりしてるように聴こえるんでしょうね?とにかく全員が生き生きと演奏していて音が楽しいのです。音楽性ある人たちが集まるとこうも違うんだなぁ。。。

 

 次の『ボレロ』は、またまたすごい弱音で始まり、最初のスネアはどこで叩いているのか全く分からない。(実は指揮者の真ん前でした。)最後のフォルテシモまで音量がしっかりと計算されていて、巨大な15分間のクレッシェンドでありました。それぞれの管楽器のソロが楽しめると思ったら、ちょっとあちこちほころびが。。。これは集中力が切れているのか疲れているのか?

最近演奏しすぎて今日はボレロの気分ではないのか?メンバーをよく見ると結構年配の方々が多く、ハルサイを休憩後に控えてのボレロはちょっとイヤなのかもなと思った次第。

 

 休憩後の『春の祭典』は、オケも本気モードになってパワー全開!最初のファゴットの難しい高音の出だし、マケラは振ってなかった(><)☆でもたしかにそれは正解ですね!

曲が進むに従い管楽器のあちこちにほころびが。やはり疲れ?マケラは若いので、ぐいぐいオケを引っ張りますが、老練なオケはちょっと重く反応している。もっと指揮者はストレートな音を要求しているのではないかなと感じました。でも、それは高次元な不満であり、鳴っている音楽は圧倒的で文句のつけようがありません。あと、ハルサイには控えめな照明の演出が入っていて、けっこう音楽と合っていて楽しめました。

今日聴いたプログラムは、それぞれの楽章に必ずクライマックスがあり、そこに全エネルギーが注がれるのが伝わってきました。その時の音の集中力はすごかったです。

 

 アンコールは、マケラ自身が会場に向かって伝えました。ムソルグスキーのオペラ『ホヴァンシチナ』の前奏曲「モスクワ川の夜明け」でした。やはりマケラは抒情的な指揮者!このようなものを振らせると美しい絵画のようにみずみずしく表現してくれます!うっとりさせられました。

 

 さて、最後に指揮者マケラのことです。

マケラは颯爽と登場し、指揮台に立つとまず精神集中。静けさを獲得すると腕を慎重に振り始め、音が浮かび上がるって感じです。私は見た目より、音を聴こうとする方ですが、マケラは人を惹きつける力を持っていますね。ずっと指揮姿を見つめてしまいます。

全く奏者の邪魔をしない指揮なので、楽員メンバーは常に演奏に集中できるし、音楽的高揚感がどんどん増幅されていくので、曲が進むに従いノってくるんですよね。マケラの微細な動きをひとつも見逃さないように見つめ、全身で演奏する弦楽器奏者。自分の出番でもないのに、指揮しているマケラを、父親のようなあたたかい目で見つめる年配の打楽器奏者。笑顔のマケラに降りそそぐ美しく立体的な音響 。。。(まるですごいオーロラを見てるみたいな)

こんな強者ぞろいのパリ管を、弱冠26歳の指揮者が手中に収めているのって、信じられないけど現実に起こっている。すごいと思いました。

今、パリ管を潤わせているに違いないこの若い指揮者は、今後の長い道のりをいったいどのように歩んでゆくのでしょうか?:

70歳のマケラの演奏が聴いてみたかったなぁ。叶わぬ夢だけど。

 

 結論!です。

マケラにはもっといいオーケストラを!パリ管も充分良いけど、マケラのテンションに全員がついて行ってないもどかしさがある。

私は今のところアムステルダム・コンセルトヘボウとの相性が一番いいのではないかと思っています。こことは2027年から首席指揮者になるのが決まっています。(5年も先なのが気になりますが)来年にベルリン・フィルを振るみたいですが、これも非常に楽しみ。マケラの指揮にあのベルリン・フィルがどう応えるのか、考えただけでもワクワクしますね。

プログラムには速報が挟み込まれていて、来年また手兵オスロ・フィルと10月に来日するとのことです。マケラはついこの間の6月にも都響を指揮しに日本を訪れたばかり。もしかしたら日本びいきなのかな?(笑)