
『世界を変えるデザイン展』(05.13~06.13 , @東京ミッドタウン)に行ってきました。
昨日をもって終了されましたが、かいつまんでReviewだけでも。
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このイベントのテーマは
「世界が直面している貧困などの課題解決に、デザインが挑戦する」。
例えば、ナイキの製品だって、有名デザイナーが製作した鮮やかで美しい衣装も、
それを手にし、目にすることができるのは、裕福な人たちだけ。
世界の中の1割もいない、というわけだ。
一方で、今日明日生きられるか、生命の限界と勝負を続けている人たち。
こちらが、世界の9割もいる。
この人達に、デザインは目を向けているのか??
この9割の人達に、1割の人達は目を向けているのか??
という、強烈な問いかけがされている。
※関連書籍:「世界を変えるデザイン(著:シンシア・スミス)」
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もうひとつ興味深かったのは、
こういったデザインによる社会問題解決に奔走しているNGOや企業、デザイン団体、大学が多いこと。
たとえば、
インドのマニパル大学(Manipal University)
アメリカのデザインコンサルティング会社、IDEO
そして、海外サッカーファンなら誰でも(?)知っている、PSVのスポンサーのヘルスケアメーカー、フィリップス(PHILIPS)
などなど。
彼らの行動のもとになっているのは、
(やはりと言っていいのかもしれないが)原体験によるところが大きい。
実際に貧困を目の当たりにする。
あるいは、自らが貧困に喘いでいた。
苦しい。つらい。そして絶望。
そんな体験での、
ある種の「負の感情」が、
熱意となり、モチベーションとなり、
研究・開発、そして長いエンドユーザーによるテストを経て商品化されていく。
その過程の力強さを痛感したし、
翻って、「俺はどうやねん」と自問自答したときの、回答の自信のなさを思い知りました(苦笑)
ただ、ひとつ気にとめないといけないのは、
「かわいそうだから、貧しい人々を解放してあげよう」
なんて考えではないこと。視点ではないこと。
場合によっては(そんな人もいないと思うが)注意しなければならないだろう。
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最後。
やっぱり、課題解決にデザインの力は相当に必要なんだと思う。
デザインと、ビジネスなどさまざまな要素が絡みあって、
いや、絡みあわないと、解決なんてできないんだと思う。
※参考:アンコールワット・トライアスロン(トライアスロンと、水資源の確保、道路整備などを組み合わせたプロジェクト)
そして、こんなこと書くのは大変恐縮なんだが、
この企画展で出されている「デザインのアイディア」では、社会問題の根本解決にはならないかもしれない。
「社会問題」と言われる以上、
社会のシステム、ヒエラルキー、あるいは経済システムのどこかに綻びがあるはずで。
つまり、
雨漏りの水で濡れた床を拭くだけではなくて、
雨漏りの原因になっている穴を塞がなくてはならないんだと思う。
それができるのは、政治、ではないかな。
「社会をデザインする」
「その地域に住まう人の生活をデザインする」
「子どもたちの未来をデザインする」
この観点で、政治の観点で
「デザイン」はもっと活かされるんじゃないかと考える。
この企画の続編があれば、ぜひ参加させていただきたく思った。
今回行けなかった人も、その次は、ぜひ。
/Masaki Muraoka.
