旅の虫速報 -39ページ目
<< 前のページへ最新 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39

占冠村(2002.8.3)

murabie@占冠村です。

昨日から借りっぱなしの無料貸自転車を、今日もフル活用しました。
午前中は、村内随一の見どころと思われる赤岩青厳峡へ。
字中央の市街地を出れば、太い道はゆったりした流れの鵡川に沿い、深緑の山並みの
中へとわけ入りますが、この太い道道でさえ、しばらく行けばダートコースに
変貌してしまいます。ゆっくりとしか進めない砂利道に入れば、アップダウンを
繰り返しながら道は白樺や蝦夷松の茂る森の中へと入っていき、木立の間から
みえる川原もしだいにごつごつとしたものへと変わっていきます。

やがて道は河原に大きく開け、丸くて赤い赤岩橋から川の流れを眺めれば、
赤紫のチャートが、時には巨大な岩盤として、時には荒々しく砕けた小さな岩と
して、河岸や川の流れの中に、青緑色の変成岩とともに散りばめられ、
緑色の川の流れはその間を、しぶきを上げながら、町中での穏やかな表情を
想像できないくらい激しく流れていきました。
地盤が弱く、法面は崩れて茶色や青緑やさまざまな岩盤を露出して、ダイナミックな
景観をさらに演出していましたが、それゆえ川の流れにより近づいてじっくりと
眺めるというわけにもいかないのがとても惜しい、高みの見物となりました。

本来このダートの道道は、村内ニニウを経て隣の穂別町方面へ抜けられるのですが、
市街地からすでに「道路決壊につき通り抜けできません」の看板が乱立します。
引き続く砂利道を、また木々の間にちらちらと、ごつごつとした流れの川面を
見ながらしばらくいくと、いくつか覆道や橋を越え、わずかに出ていた太陽も
陰ってしまい肌寒さを感じるようになった頃、通行止めの看板にたどりつきました。
この付近から河原に降りる砂利道があり、ようやく川と触れ合うことができる場所を
見つけた喜びとともに降りてみれば、道が進むべき方面の山肌は哀れなまでに
土砂崩れの跡を見せていました。これでは進めないのもうなずけます。そして、
大自然の前には人間なんか無力なものなのかも知れないなあと思いながら川の中の
岩に腰掛けてみれば、深緑の山肌は川沿いに連続して、自分の存在も小さく思える
雄大な風景が出来上がっていたのでした。

この川はラフティングの上級者コースになっているということで、ゴムボートを
牽引するマイクロバスと何度もすれ違ったりしましたが、何度も投げ出されながら
流れと格闘する人たちの姿も見られましたし、赤岩橋の辺りまで戻れば、川の
中だけでなく隣接する山肌にも巨大な赤紫の岩盤が露出して、その岩盤には
すでに金属のチェーンが打ち込まれていて、ロッククライミングを楽しんでいる
人の姿もいくらか見られました。自分よりも自然に密接に触れ合うことのできる
すべをもつ人たちのことが、とてもうらやましく感じられました。

思ったよりスピードが出せずに時間がかかりましたが、一旦市街地まで戻り、
最後に本物の温泉(宿のはトロン温泉なので……)に入っていこうと、
駅前を通過して国道を金山・富良野方面へ進みました。
字占冠のまたもわずかな市街地を過ぎれば、道はまた、時折白樺に囲まれた牧場や
トウキビ、ビート畑が現れたりするけれど基本的には山間の山林の中を行くように
なります。ことに東京ではさがしてもなかなか見つからないクワガタがそこいらに
当たり前のように平然と歩いていたり、時には飛んできて鞄に抱きついたりする
ほどの山深いみちには、アップダウンも繰り返されて似たような風景が展開し、
空も完全に曇ってだんだん不安な気持ちになってきた頃、目的の占冠村農業者
センターと言う施設にたどりつきました。
完全に山の中の建物で、循環式だったりして大したことはないんですが、
それでもこんな秘境を探りあてることができた喜びを充分に感じながら、
冷えた体を温めることができたのでした。

占冠村(2002.8.2)

murabie@勇払郡占冠村です。


猛暑の東京でのお勤め、といっても「学校にいること」が仕事のすべてという
なんだかなーって感じの日直1回目を終え、速攻、今朝早朝の飛行機で東京から
脱出してきました。どうぞ物好きだと仰ってください(笑)
チケットレスサービス使用につき航空券は今朝浜松町駅で受けとったんですが、
「非常口にもっとも近い座席ですので」云々とチェックイン機に突然言われて、
初めての体験にどきどきでした。結局、席の前が広く開いていて充分に足を伸ばせ、
飛行機を好きになれない理由の一つであるシートピッチの狭さをまったく感じずに
済んでしまったのです。よかったよかった。
窓側だったので、曇っていた東北地方以外は下界の様子もよく見え、実家のある
野田の住宅団地が地図の形そのままによくみえたりとか、函館の街や駒ケ岳も
よくみえたりとか、飛行機旅にしては珍しく満足でした(笑)


そして最高なのは、やっぱり、涼しいこと。千歳空港内ではさほど感じなかった
ものの、乗り換えで降りた南千歳駅の吹きさらしのホームに吹く気持ちいい風、
そして今回は東へ向かう列車の車窓で、再び出会うことができた、眺められる広々と
した牧場に大量の牛がのんびりと草を食べていたり、白樺の明るい林の中を
進んだりする風景は、昨日あった全てのいやなことを、きわめて短時間のうちに
忘れさせてくれました。


南千歳から特急列車で東へ1時間弱、牧場やとうきび畑の中を走っていた列車が
突然山並みへわけ入るようになり、トンネルの合間から手付かずの原生林が
深緑や黄緑の入り交じった立体的な風呂敷のように山肌を覆っているのが見られる
ようになってしばらく経ったところにある、占冠駅に降り立ちました。
特急列車しかとまらない不思議な駅、そしてまた、シムカップという何とも
不思議な響きを持つこの地は、私にとってぜひ訪れてみたいところでした。


切符の回収すらしない無人の改札口から外にでれば、車の数に比べてやたら
広いロータリーと、太さだけはやたらとある道をはさんで、すぐに深緑の山並みが
目に入ってくる、およそ特急停車駅という名には似つかわしくない風景です。
無料の貸自転車に乗って緑いっぱいの道を少し行けば、スーパーが複数ある
それなりに活気がある市街地がありますが、さらに日高町方面にすすめば極小さな
市街地はすぐに終わって、またすぐに緑あふれる山間の道に戻っていきます。


双珠別(そうしゅべつ)川という小川に沿う林道に入っていくと、しばらくは
とうきびやビートの畑、そして黒毛牛の親子が物珍しそうにこっちを見る牧場が
山間に静かに広がるのどかな風景が広がりますが、やがて未舗装の領域へ入り、
思うようにスピードを出せなくなった分、時には小川のせせらぎに、時には
岩盤を荒々しく削る急流になる川と、その周りに広がる楓や櫟や白樺や、
ササやノリウツギや、江戸末期のアメリカ人の探検家にstrange plantと言わしめた
という、エゾニュウというらしい、赤紫の太い軸からポンポンのような花をつけ、
背丈の低い草の中にあってはやたらと目立つ植物(道北の草原でもたくさん見られ
たのですが、名前がわかりませんでした)が入り交じり、虻や蝶やとんぼやばったの
大群がここはてめえのくるところじゃねえとでも言いたそうにわがもの顔で
飛びまくり、しかもばったり鹿にも出会ったりしてしまった林の風景を楽しみながら、
さらに奥へ進んでいくと、市街地をでてから2時間くらいした頃、林道の終点の
双珠別ダムにたどりつきました。
湖水は黒紫色の岩も露出する急な崖に囲まれ、山肌の深緑色を移しこんであくまでも
静かに横たわっているだけでしたが、気が早い楓の葉は数枚だけですがすでに
真っ赤に紅葉していました。秋には紅葉の名所となるのだそうですが、今はただ
静かに優しい緑色に包まれています。
距離も長くて多少疲れましたが、道央なだけあって半袖短パンでも決して寒くは
なく、めったに人のこない静かな湖畔での、楽しいサイクリングとなったのでした。

<< 前のページへ最新 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39