ボクシング・ダイアローグ

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5月2日

東京ドーム:東京

 

◇ WBC世界バンタム級タイトルマッチ ◇

 

王者 

井上拓真

(30=大橋:21勝5KO2敗)

vs 

挑戦者4位/元世界4階級制覇王者 

井岡一翔

(36=志成:32勝17KO4敗1分)

 

井上選手は昨年11月、那須川天心(帝拳)選手との決定戦に判定勝ちで王座獲得して以来の初防衛戦、井岡選手は昨年の大晦日、マイケル・オルドスゴイティ(ベネズエラ)との WBA挑戦者決定戦に 4ラウンドKO勝ちして以来となる、日本人初の世界5階級制覇を狙うリング。

 

井上選手の兄〝モンスター〟尚弥(大橋)vs 中谷潤人(M.T)のスーパーファイトをメインイベントとする『 Lemino BOXING “THE DAY”』のセミセミ/第5試合で行われた一戦…

 

結果は 井上選手が 3-0( 120-106、119-107、118-108 )の判定勝ち。

 

ジャブを交換し合う共に慎重な立ち上がりから、井岡選手がジワジワと出て手数の少ない井上選手に右、左右ボディ等で探りを入れるも、2ラウンドに王者が左アッパーを基点に速い追撃打をまとめ、最後に右フックを決めると、大ベテランの挑戦者がキャンバスに腹這うダウン。

 

キャリア3度目のダウンから井岡選手が立ち上がり、再開された直後にラウンド終了ゴングが鳴ってここは救われたものの、続く3ラウンドの半ばに井上選手が今度はタイムリーな右アッパーをヒットさせると、腰から落ちた井岡選手が仰向けに 2度目のダウン。

 

この展開により、序盤戦の時点で大幅にポイントを確保した井上選手は、続くラウンド以降も深追いせずにサイドに動きながら相手を引き寄せてカウンター、の戦術を維持し、4ラウンド終了時の公開採点で 40-34、39-35×2 でリード。

 

失点挽回のため積極的に行くしかない井岡選手は、持ち味の距離感覚やコンパクトな組み立てを活かせず本来のスタイルから逸脱、大きな左右フック狙いが目立つ格好で、試合的には中盤戦からあまり代わり映えしない状況で進行。

 

井岡選手は、スリ足のフットワークによる前進、上下に打ち分けるスムーズなパンチの回転など本来の形にはなっている反面、全体的にキレがなく反応も鈍い感じで、2ラウンドのダウンで主導権を握った井上選手が上回るスピード&パワーで無難なゲームメイク&ポイント収集により、8ラウンド終了時の公開採点では 80-70、79-71×2 とリードを拡大。

 

井上選手が呼び込んで合わせる戦術に徹していることで、前半戦のうちは単純な手数で多少勝っていた井岡選手も、後半戦以降は前には出ても見てしまって手を出さない場面が増え、試合巧者の面目は霧消。

 

終盤戦は、このままのペースで流してポイントアウトしようという思惑が明白な井上選手が、時おり力を込めたパンチを繰り出して優位を保ちつつ安全運転、細かく被弾する中で前進する井岡選手をいなし、同じような攻防で各ラウンドを消化。

 

最終12ラウンド、井上選手がリキんだパンチを放って出るもやはり倒しに行くことはせず、倒さねば勝てない井岡選手も捨て身のスパートをかけることはなく、試合終了間際に王者が力任せの左右フックを振り回して締めくくり、幕引きのゴング。

 

個人的な採点は 118-108 井上選手で、率直に言って意外な大差での判定決着になったな、という感想ですが… 

 

何れにせよ、井上選手がまたひとつ名のある相手から勝ち星を挙げてのV2に成功。

 

世界初戴冠だったWBC暫定王座は、初防衛戦でノルディ・ウーバーリ(仏)に判定負けして陥落&初黒星、2度目のWBA王座は 堤聖也(角海老宝石)選手に判定で敗れV2でストップと、これまでは結果的に短命王者で終わっていましたが、そうする間に地道に力をつけ、円熟味を強めて来た印象。

 

今回のような試合ぶりで勝ちに徹するスタイルを堅持すれば、更に安定感が増して防衛回数をのばして行けるイメージがある一方、ここまでのキャリアで勝利を得た世界的な選手は、元WBAスーパーフライ級王者 リボリオ・ソリス(ベネズエラ)と 元IBFスーパーフライ級 ジェルウィン・アンカハス(比)そして井岡選手と、対戦時は既にピークを過ぎていた&下のクラスから上げて来た相手のみで…

 

登り坂の相手からの勝ち星といったら、まだキャリアの心許ない時分の那須川天心(帝拳)選手だけ、他方で最盛期の堤選手には敗退と、世界レベル基準ではまだ高評価を受けるには足らない立ち位置。

 

本人は王座統一路線を希望しているとのことですが、個人的な考えとしてはその前に、先月の挑戦者決定戦で ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)を 9ラウンドTKOしてWBCの指名挑戦権を手にした那須川選手とのリマッチなどをこなし、そういう試合に生き残ることによって機運を高める方がいい気が。

 

現状のバンタム級は、増田陸(帝拳)選手が今年3月のエリミネーターで老雄 ノニト・ドネア(比)を 8ラウンドTKOして WBAの指名挑戦権を獲得、マニーパッキャオ2世と呼ばれるフィリピンのホープ、ケネス・ラバーは 6月6日:名古屋の IBFフライ級タイトル戦をメインとする 矢吹正道(緑)vs レネ・カリスト(メキシコ)のアンダーカードで マイケル・アンジェレッティ(米)相手の IBF挑戦者決定戦が決まっており…

 

そうした身近な国内&東洋圏の強敵の方向性が、WBC以外の他団体タイトルにバラけてしまっていることも踏まえると、やはり那須川選手との再戦など現実的な注目戦をクリアする路線がいいのでは、となおのこと思います。

 

敗れた井岡選手については、バンタム級に上げた当初から自分が思っていたとおり、このクラスではちょっと重く適正ではないイメージが実際に当たっていた感。

 

そこに36歳の年齢的な衰えも加わり、更に序盤に立て続けにダウンを奪われてリズムを崩した末、トドメに井上選手に勝ちに徹されるという厳しい戦況の果ての完敗劇。

 

セールスバリュー的には複数階級制覇が第一の選手だけに、キャリア最末期に至った今のモチベーションは 5階級制覇のみといって過言でないと思われ、今更ベストのスーパーフライに戻ることはおそらくない筈ですが…

 

その115ポンドでも、突貫戦術の根性ファイト型の フェルナンド・マルティネス(亜)に圧しきられる格好で 2連敗を喫しているなど、全体的な戦力が落ちていることは明白。

 

前戦は陣営の狡猾なマッチメイクにより、オルドスゴイッティなる無名相手の118ポンド初戦をWBA挑戦者決定戦に仕立て上げて難なく勝ったものの、その格下を倒して労せず手に入れたWBA指名挑戦権を捨てて井上選手への挑戦を選択したことがモロに凶と出、現役を続行するとしてももう一線どころの扱いにはならない印象が大。

 

試合後、頭部外傷&左目下付近の負傷のため会見をキャンセルして病院に直行したとのことですが、こっ酷くKOで惨敗するとかしない限り、まだ暫くはやると言うんじゃないか、という気がします。