朝、まだ固く閉じていた桜のつぼみも
練習を終え帰る頃には半分くらい咲いていた
今朝はビビった
妻は起きていた
すべて見透かされていた
『ただいまー!!!』
不安を吹っ切るかのように
わざとらしく元気な声で言ってみた
お帰りー❤
キッチンから妻の明るい声が聞こえた
大丈夫だ。
大丈夫。
お母さん❗野球楽しかった〰🎵
僕、野球やりたい❗
よし。
タカシ!
台本通りだ‼
あらそう。タカシ。
まずお風呂行ってきなさい!
『お父さんも一緒に入ってくるかな〰』
すれ違いざまに
「タカシに言わせるなんてちっさい男。」
妻を怖いと思ったのはいつからだったか…
タカシが産まれたとき?
その前だったか?
「今日奥さんにお願いするんですか?」
『はい。でも簡単にはいかないと…』
「簡単ですよ!妻の説得なんてチョロいもんですよ。」
『何か秘策でも?ぜひ教えて下さい❗』
お風呂上がり
ちょっと早めの夕食になった。
タカシは私の指示通り
野球やりたい〰🎵
頑張るから〰🎵
と妻にゆさぶりをかける
その度に妻は私をキッとにらむ
怖い・・・・
恐怖からビールがすすむ。
酔った勢いで覚悟を決めた
『タカシは野球がやりたいんだ!!
俺もコーチとして一緒に野球をしたいと思ってるんだけどダメか?』
「はぁ?絶対嫌❗」
直球勝負は打たれたとき痛い
「私だって働いてるの!土日まで働かせるつもり?お茶当番とかありえない。やりたいなら一人でやってよね!」
『・・・・』
私は秘策を試みた
監督に教えてもらったあの秘策を
妻の肩を抱き
耳元で
あ ・ あいしてるよ♥
「急になに言ってんの!?キモっ!」
か・かんとくぅ〰
チョロいって…
秘策って…
監督のウソつき!
私は説明した。
お茶当番は月に一回程度。
交代も出来る。
お昼ご飯はおにぎりのみ。ボランティアで来てくれているコーチ陣と審判陣(宗岡ヤンガーズには団の審判部がある!)のために1つか2つ余分に持ってくる日もある
母の係や役員もある。
子供達が喜ぶイベントを年に数回やる
かき氷やフランクフルトなど
頑張って説明した。
妻はめずらしくだまって聞いていた。
秘策の効果か?
嵐の前の静けさか?
「野球やってもいいけど
条件がある!
ひとつでも守れなかったら辞めてもらいます‼」
妻から出た条件
●基本的に私がタカシを起こし、準備をして連れていく。
●野球用品は徐々に揃え、それまでは団のを借りる。
●月謝はおこづかいから出す
●お当番の日は外食&マッサージ
●汚れたユニフォームは自分で洗う
●学校の上履きも自分で洗う
●使った水筒は自分で洗う
●朝出勤前にゴミ出しをする
●ビールは1日350ml 一本のみ
●出された食事に文句を言わない
なんだか腑に落ちない条件もあるが・・・
『わかった!それでいい。全部守ってみせる!』
妻の顔が微笑みに変わった
「それと・・・・・」
まだ条件があるのか!?
「私も愛してるわ♥」
秘策は通じたのか?
私とタカシの野球人生が始まった。