病気の子供はみんな痛みと恐怖にさらされる。
極端かもしれないけれど、私は治療と同じくらいこの二つから子供をできるだけ守ることが大切だと思うのです。
治るためには我慢、というかもしれないけれど、自分がその立場だったらそんなつらい思いを毎日強いられるのはとても耐えられない。痛みや恐怖には耐えるにも限度があるのだ。
この国では"我慢”がやたらともてはやされ、我慢なんてしなくていいじゃないか、などと言おうものなら非難轟々の目に遭う。
人間ってそんなに強いのかなあ?
たかいとさんの息子さんの痛みと恐怖をどうか早く取り去ってほしいです。
子供の癌の緩和ケアの抜粋です。
子どものがん 苦痛とる緩和ケア広がる。治療初期から並行
がんになる子供は毎年5000人とされる。大人と違い、最初から抗がん剤の投与や骨髄移植など厳しい治療が必要なケースが多く、激しい痛みが病気に立ち向かう気力と体力を奪ってしまう。がんの子どもたちが前向きに治療に臨めるよう、苦痛を和らげる「緩和ケア」を治療と並行して進める取り組みが医療の現場に広がり始めた。
「治療は一生懸命やっていただいた。でも、あの痛みは何とか取ってやってほしかった」。北海道の石田淳也さんはそう言って唇をかむ。
娘の有生嘉ちゃんは3年前、10歳で小児がんの一種の肝芽種を発病した。抗がん剤治療に耐え、手術もしたが再発。両足が激烈な痛みに襲われるようになった。
動くと痛むので壁にもたれて座ったまま動かない。眠る時もそのままで、足をさすってやろうとすると悲鳴を上げる。「痛い、痛い。何でこの痛いのが取れないの」。泣き叫ぶ娘にたまりかね、医師に「何とかして」と訴えると、「痛みは取れているはず。痛がっているのは精神的なもの」と言われた。
鎮痛薬投与で笑顔
約1ヵ月後、鎮痛用の医療用麻薬の投与が始まると、少しだけ笑顔を見せるようになった。「それまで笑顔なんて見せたことがありませんでした」。3ヵ月後、有生嘉ちゃんは亡くなった。
子どもがんの約8割は治るとされる。医師や親は救命の努力に集中し、痛みへの対応は後手に回りがちだ。末期になって「もう駄目」と思ってからでも、抗がん剤でがんが縮小し、再び家に帰れるまで回復することもある。このため医療現場には「治療から緩和ケアに移る決断がしにくい」との声もある。
だが、神奈川県立こども医療センター(横浜市)血液・再生医療科の田渕健医師は「治療がなくなってから緩和ケアに移る、という考え方に疑問がある。きつい治療をやり抜くため、緩和ケアを同時に進めることが必要だ」と強調する。
同センターは昨年11月、子どもの緩和ケアチームを発足させた。全国でも例のない試みで、チームの岩崎史記医師は「子どもの場合、最初から治療を担当し、信頼されている主治医が緩和ケアもした方がよい。そのサポートをするのがチームの役割」と話す。主治医の相談に乗り、症状に応じてほかの診療科の医師にも応援を要請する。
子どもの緩和ケアに積極的に取り組む病院はほかにもある。東京大病院(東京・文京)小児科は緩和ケア診療部と連携しながら、早期からがんに伴う痛みをコントロールしている。
2年前、骨肉種で入院していた小学6年生の女児は抗がん剤の副作用で吐き気が強く、つらさのあまり一度は病院から逃げ出してしまった。要請を受けた緩和ケア診療部の岩瀬啓副部長は本人と話し合い、麻酔で眠っているうちに抗がん剤を投与することを提案。女児は同意し、無事に抗がん剤治療を終えた。現在も元気だ。
専門家に相談可能
小児科の康勝好助教授は「自分たちだけではどうしようもない時、専門家に相談できるのは心強い」と話す。
聖路加国際病院(東京・中央)の小児科は初診時から、全員に緩和ケアとメンタルヘルスの専門医を紹介している。状態が悪くなってから緩和ケアを始めるのでは痛みも取りにくい。細谷亮太小児科総合医療センター長は「治療と緩和ケアは一体」と話す。
だがこうした取り組みを広げていくには課題が多い。
最大の壁は人手の確保だ。東京大病院や聖路加国際病院は骨髄穿刺(せんし)などの痛みを伴う検査は子どもが眠っているうちにしているが、それには治療医以外に、麻酔をかける医師が必要になる。医師不足にあえぐ地方の病院で、対応するのは難しい。
緩和ケアチームを置く病院は増えているが、子供のがん患者は少ないため、経験に乏しく、介入をためらいがちだ。一方で小児科医は医療用麻薬などの使い方に不慣れなことが多い。聖路加国際病院で子どもの緩和ケアを担当する小澤美和副医長は「転院してきた子どもの中には、どうしてここで(痛みの)治療をやめてしまったのか、と思う例がある」と話す。
患者家族らシンポ
1月、「小児がんの疼痛(とうつう)管理を考える」と題したシンポジウムが横浜市であり、医師や患者家族らが集まった。企画したのは肝芽腫の子を持つ親たちが作る「肝芽腫の会」。代表の神原結花さんは「(有生嘉ちゃんの父の)石田さんから相談を受けたことが、会として緩和ケアの普及に取り組むきっかけになった」と話す。
もう1人の代表の高橋直美さんは3年半前、当時6歳の息子、晃也君を亡くした。再発と手術を繰り返し、6年の人生のほとんどを病院で過ごしたが、緩和ケアのおかげで、亡くなる1ヵ月前まで夏祭りではしゃいでいたという。「状況がどんなに厳しくても、子どもが笑顔を見せてくれると安心しました」と高橋さんは振り返る。
緩和ケアは終末期の医療、との誤解は親の間にも根強い。同会は先ごろ、神奈川県立こども医療センターの緩和ケアチームと共同で、早期からの緩和ケアの重要性を広く伝えるためのパンフレットを作った。タイトルは「いつもの笑顔を見られるように」。今後シリーズ化して「子ども緩和ケアへの理解を進めたい」としている。
緩和ケアとは何か。
がんなどの病気や治療に伴う苦痛を和らげ、できるだけ普通の日常生活を送れるようにするための治療のこと。医療用麻薬で痛みを取り除いたり、吐き気や便秘などの副作用を軽減したりするほか、精神科医による心のケアなどが行われる。
日本では「麻薬を使うと依存症になる」「痛みは我慢した方がよい」などの誤解も根強く、欧米に比べて普及は立ち遅れている。
終末期医療とは違うのか。
かつては積極的な治療ができなくなった終末期に実施されることが多く、「緩和ケア=終末期医療」というイメージがあった。しかし最近は早い時期から治療と並行して実施することが重要、と考えられるようになった。2007年6月に閣議決定した「がん対策推進基本計画」は緩和医療の拡充を柱の1つに掲げている。
子どもに医療用麻薬を使っても大丈夫なのか。
痛みがあるときに使っても依存症にはならないので、問題はない。治療で症状が改善し、痛みが軽くなれば、いつでもやめられる。呼吸抑制や眠気などの副作用が出ることもあるが、薬を変えたり、量を調整したりすることで対処できる。
子どもの緩和ケアが難しいのはなぜ。
子どものがんは短時間で病状が変わりやすい。その変化に応じた痛みのコントロールが必要なためだ。医師には高いスキルが求められるが、大人に比べて絶対数が少なく、緩和ケアの専門医でも経験を蓄積することが難しい。治療に当たる小児科医に任されることが多いのが実情だが、痛みへの対処になれていないケースも多い。治療指針を作成するなどして、レベルを向上する工夫が必要とされている。